ハリルが解任されたときは、巷のサッカーファンと同じく、「なぜ」という思いが拭えませんでした。そこでこの本を手に取ったのですが、何試合かYouTubeで確認しながら本を読み返してみたところ、この本に書かれている通りである事をいくつか確認できました。これからもう一度すべてYouTubeで見ながら再確認したいと思います。戦術面でハリルが「何か持っていた」ようなのはわかりました。しかし「人」は戦術だけでは動きません。この本が戦術にのみ焦点をあてた著作であるのはわかった上で述べたいと思います。
ザッケローニ元監督の元、2試合連続でハーフタイムで交代させられた清武はロッカールームでひと目を憚らず泣いたそうです。それだけ日本代表にかける選手の思いは重く、当時求心力があり、今でも多くの日本人に愛されているだろうザック元監督でもこういうことが起きるのがサッカーだと思います。ハリル元監督は、合宿だったか何かで「この中の何人かはワールドカップには連れて行かないから」と言ったそうです。現在の日本代表監督、森保監督と対象的な「恐怖」によるマネジメント手法であると言えるでしょう。
自分も熱血タイプの部下が何人かいましたが、人の事を聞こうとするタイプと聞かないタイプといました。ハリル元監督も情熱家で毎日監督の仕事をしにきていたそうですから、思いを持って取り組んでくれていたのは確かだと思います。しかし「一方的にまくしたてて人の言うことを聞かない」という声は結構漏れ伝わってきました。想いがあるのは素晴らしいことですが、手法がとても重要なのです。
槙野選手だったと思いますが、ハリル元監督は、対戦相手の試合をビデオでフルバージョンで見せるのですが、編集されておらず、固定カメラからのビデオなので一人ひとりの選手も非常に小さく写っていて90数分間眠気を我慢するのが大変だったそうです。ラグビーの清宮監督だったかは、選手に見せるビデオの編集を「なるべく短くわかりやすくするのに腐心し」、そこにかなり時間をかけたそうです。頭の良い選手だったら、編集なしのビデオを何回も見せられて、「ハリル監督についていこう」と思うでしょうか?新卒採用でそのレベルのビデオを見せて入社したい大学生がいますか?それを日本代表の選手に見せているのが驚きです!
リバプールのオフィシャルのビデオをYouTubeで見ていると、クロップがフェルミーニョたちと卓球やってたり、練習当日に出会う選手・スタッフ全員とハグしている様子が映っていて、コメントの多くが「最高の上司だ!」というものです。リバプールはとても風通しが良さそうです。ハリルに卓球をやって欲しいと思っているわけではなくて、”非常に見づらい試合の映像を我慢して見なければならず、それを改善できないほど”風通しが悪かったのではないかと思うのです。練習では怒鳴り散らしていたトルシエも屋外での選手とのプールサイドでのパーティーでは、日本代表の選手にプールに突き落とされて、喜んでましたから...。信頼関係があったのを感じさせます。
モイーズのことがイギリスメディアで取り上げられていて、移動の飛行機の中で「Visionary Companies(ビジョナリー・カンパニー)Built to last」を読んでいたのをマンUの誰かに見られてその選手が「サッカーの監督なんてそんな本読まなくていいんだよ!」と陰口を叩いたのがリークされていました。全く求心力がない典型的な例です。選手のレベルも低いですが。これも風通しが悪いが故の症状だと思います。
ハリルが体脂肪率の制限を設けたのも非常にアマチュアっぽいなと思ったのですが、当時メディアにも一部選手の匿名の意見として載っていましたが、体脂肪率は機器メーカーによって大きく変わります。タニタとオムロンで1.5倍くらい違います。またどちらが正しいという問題ではなく、測り方が違うのです。
まあ、「コミュニケーションの質が悪ければ解任する」という項目は契約になかったからサッカー協会の方に不備があったのかもしれませんが、コミュニケーションの質が低かったようだという感想しか持ちえません。
本田選手のドキュメンタリーで、CSKAの時に本田選手が練習が終わった後か何かに落ち込んでいる他の選手一人づつに歩み寄って行って何か話しかけていました。こういうコミュニケーション・スキルを持っている人はハリルに何か想うところはあったんじゃないんですかね。長谷部ですら、ハリルの末期には「雰囲気は最悪です」って言ってたみたいですから。
現代で最高の監督ではないかと言われるグアディオラは戦術家でありモチベーターですが、マンCのドキュメンタリーを改めて見てみて、グアディオラが選手を鼓舞していくシーンを見ながら、心底かっこいい!と思いました。別の見方をすると、いくら戦術家として優れていても、モチベートする能力がなければ魅力がないと感じました。
砕かれたハリルホジッチ・プラン 日本サッカーにビジョンはあるか? (星海社新書) (日本語) 新書 – 2018/5/27
五百蔵 容
(著)
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本の長さ240ページ
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言語日本語
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出版社星海社
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発売日2018/5/27
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寸法10.9 x 1.3 x 17.4 cm
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ISBN-104065122406
-
ISBN-13978-4065122402
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商品の説明
内容(「BOOK」データベースより)
2018年4月9日、ヴァイッド・ハリルホジッチ日本代表監督解任。たえず強い批判と誤解に晒されながら、見事ロシアW杯への切符を獲得してみせた世界屈指の戦術家の挑戦は、志半ばで砕かれることになりました。だからこそ本書では、世界の潮流に立ち遅れた日本サッカーを変革しようとしたこの名将の戦略・戦術を徹底的に分析し、招聘の立役者・霜田正浩氏(元日本サッカー協会技術委員長)の貴重な証言とともに、次代へと引き継ぐことを目指します。同時に、本大会目前に下されたこの決断に正当性はあったのか、日本サッカーが失ってしまったものは何か、日本サッカーの向かう先はどこか、を強く問いたいと思います。
著者について
五百蔵 容
サッカー分析家、シナリオライター、プランナー
1969年横浜市生まれ。早稲田大学第一文学部を卒業後、株式会社セガ・エンタープライゼス(現株式会社セガゲームス)に入社。プランナー、シナリオライター、ディレクターとして様々なタイトルの開発に携わる。2006年に独立・起業し、有限会社スタジオモナドを設立。ゲームを中心とした企画・シナリオ制作を行うかたわら、『VICTORY SPORTS』『footballista』などにサッカー分析記事を寄稿する。そのサッカーだけにとどまらない該博な知識とユニークな視点に裏打ちされた論考は、サッカーという競技の本質をつくものとして高い評価を集めている。本書が初の単著となる。Twitter ID:@500zoo
サッカー分析家、シナリオライター、プランナー
1969年横浜市生まれ。早稲田大学第一文学部を卒業後、株式会社セガ・エンタープライゼス(現株式会社セガゲームス)に入社。プランナー、シナリオライター、ディレクターとして様々なタイトルの開発に携わる。2006年に独立・起業し、有限会社スタジオモナドを設立。ゲームを中心とした企画・シナリオ制作を行うかたわら、『VICTORY SPORTS』『footballista』などにサッカー分析記事を寄稿する。そのサッカーだけにとどまらない該博な知識とユニークな視点に裏打ちされた論考は、サッカーという競技の本質をつくものとして高い評価を集めている。本書が初の単著となる。Twitter ID:@500zoo
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
五百蔵/容
サッカー分析家、シナリオライター、プランナー。1969年横浜市生まれ。早稲田大学第一文学部を卒業後、株式会社セガ・エンタープライゼス(現株式会社セガゲームス)に入社。プランナー、シナリオライター、ディレクターとして様々なタイトルの開発に携わる。2006年に独立・起業し、有限会社スタジオモナドを設立。ゲームを中心とした企画・シナリオ制作を行うかたわら、『VICTORY SPORTS』『footballista』などにサッカー分析記事を寄稿する(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
サッカー分析家、シナリオライター、プランナー。1969年横浜市生まれ。早稲田大学第一文学部を卒業後、株式会社セガ・エンタープライゼス(現株式会社セガゲームス)に入社。プランナー、シナリオライター、ディレクターとして様々なタイトルの開発に携わる。2006年に独立・起業し、有限会社スタジオモナドを設立。ゲームを中心とした企画・シナリオ制作を行うかたわら、『VICTORY SPORTS』『footballista』などにサッカー分析記事を寄稿する(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
登録情報
- 出版社 : 星海社 (2018/5/27)
- 発売日 : 2018/5/27
- 言語 : 日本語
- 新書 : 240ページ
- ISBN-10 : 4065122406
- ISBN-13 : 978-4065122402
- 寸法 : 10.9 x 1.3 x 17.4 cm
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カスタマーレビュー
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トップレビュー
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2019年4月21日に日本でレビュー済み
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18人のお客様がこれが役に立ったと考えています
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2019年2月27日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
何の気なしに買ったのだが、寝る間も惜しんで読了。
驚きとともに衝撃が体を駆け巡った。
いかに自分がハリルホジッチのサッカーの上っ面しか観てこなかったかを痛感。
仮定の話はしてもしょうがないのだが、W杯に出ていたら、ある程度の結果は出したのではないか?
それにしても、この著者の分析力はとんでもない。
緻密かつ奥が深く、サッカーの知識、情報ともにすごい深度だ。
まぁ難しいことは言わないが、トルシェの「フラット3」、ハリルホジッチの「デュエル」については少し語れるようになるのではないだろうか。
驚きとともに衝撃が体を駆け巡った。
いかに自分がハリルホジッチのサッカーの上っ面しか観てこなかったかを痛感。
仮定の話はしてもしょうがないのだが、W杯に出ていたら、ある程度の結果は出したのではないか?
それにしても、この著者の分析力はとんでもない。
緻密かつ奥が深く、サッカーの知識、情報ともにすごい深度だ。
まぁ難しいことは言わないが、トルシェの「フラット3」、ハリルホジッチの「デュエル」については少し語れるようになるのではないだろうか。
2018年9月30日に日本でレビュー済み
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ハリルホさんをぶった切りやがってこのクサ○協会がぁぁ、と
義憤冷めやらぬ状況で購入しましたが、まぁわかり易く現代
サッカーを解説している名著である、と確信を持って言えます。
観戦しながら思い返し、また繰り返し読んでいるとほら、これで
にわかサッカークラスタの出来上がりじゃぁああぁ!
義憤冷めやらぬ状況で購入しましたが、まぁわかり易く現代
サッカーを解説している名著である、と確信を持って言えます。
観戦しながら思い返し、また繰り返し読んでいるとほら、これで
にわかサッカークラスタの出来上がりじゃぁああぁ!
ベスト1000レビュアーVINEメンバー
いや、難しい作品ですわ。著者のサッカーというボールゲームの本質の抽出や日本のDF論は真実をついています。しかしここまで精緻に分析した上でサッカーはプレーヤーによってプレーされているんですか?サッカーとは限りなく結果論でのゲームですわ。そこに、ある因果関係のルールや法則を持ち込み「結果」を論理的に解説する。都合の悪いデータは無視され、都合の良いデータのみが、理論なるものの補強に援用される。そういう印象が抜け切れません。そして一番の疑問はハリル最後の2試合の分析がなぜ本書では取り上げられていないのか?
でも、監督業というのはそういうものなんです。わずか3(4?)試合の本大会です。はたしてハリルの戦略と戦術がワールドカップの本番で機能したのか、どうか?途中で解任されたハリルの戦略はオシム( オシムの戦術 )と同じようにこれには解答はなく永遠の見果てぬ夢です。しっかりとしたvisionと精緻な戦略が本大会での代表チームでのより良い成績につながるのか?限りなく疑問が残ります。またduellなるもののキーワードもその重要性は何度も指摘されますが、最後までよく理解できませんでした。
でも、監督業というのはそういうものなんです。わずか3(4?)試合の本大会です。はたしてハリルの戦略と戦術がワールドカップの本番で機能したのか、どうか?途中で解任されたハリルの戦略はオシム( オシムの戦術 )と同じようにこれには解答はなく永遠の見果てぬ夢です。しっかりとしたvisionと精緻な戦略が本大会での代表チームでのより良い成績につながるのか?限りなく疑問が残ります。またduellなるもののキーワードもその重要性は何度も指摘されますが、最後までよく理解できませんでした。