この本を手に取るべき人間はどんな人か。
もちろん本のタイトルを見て興味を惹かれた人である。「性」にまつわるエトセトラに関心のある初学者が最初に手に取る一冊としてとてもいい内容である。この本を頼りに自分の興味関心や漠然とした問題意識を整理したり、新たな問題にウイングを広げたりするのにうってつけだ。
しかしそれ以上にこの本を読んで欲しい人がいる。それは私のように、この本のタイトルやこの手のジャンルに眉を顰める人、明け透けにいえば嫌悪感を感じる人だ。フェミニズムときいて「うざい」「よくわからないけど嫌い」と思う人は是非読むべきだ。この本には(私も含めた)「フェミ嫌い」が、しかし厳然と存在する「性」にまつわる問題とつきあうためのヒントが散りばめられている。
私たちはかなり困難な立場にある。世の中には性差別をはじめとして「性」にまつわる問題が存在する。これはこうした問題に取り組むアクティビストに嫌悪感を抱いたとしても認めざるを得ない。しかし問題解決に取り組むことはできない。嫌いなアクティビストたちと轡を並べることは我慢ならないからだ。とはいえ誰だって積極的には差別主義者にはなりたくない。それが「いけないこと」という規範は共有しているはずだ。つまりまとめれば、私たちは問題があるのを認めるが、それを解決することはしたくなく、でも差別主義者にはなりたくないわけだ。そんなよく言えば中立派、悪く言えば偽善者な私たちは、なにが問題かを知り、それを再生産しないことで消極的反差別主義のポジションを取るべきだろう。そうすれば、差別主義者にならず、問題を積極的には解決しないことができる。
中立の立場をとるためには知識が必要だ。紛争地帯を知らなければ、うっかり地雷を踏み抜いて差別主義者の仲間入りをしてしまう。この本には「性」にまつわる紛争地帯と地雷の配置が(おおよそ)網羅されていると言っていいだろう。
この本のいいところは我々中立派にとっても(比較的)読みやすいことだ。敵たるアクティビストの本を買えば敵の懐に収入が転がり込んでしまう。その点この本を買っても一人の苦学生の財布を僅かばかり満たすことになるだけで利敵行為にはならない。それでも著者の問題意識に私たちがついていくのは苦痛だが、問題意識についていけなくても地雷原の地図としては役に立つ。エモーショナルな部分を無視して(あるいは共感性羞恥に悶えながら)本を読み進めれば、地雷を踏むことなく社会生活を送れるはずだ。
たかがセクハラでせっかく築いた社会的地位を失わないためにも、この本は読まれるべきだろう。
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