先に断っておくと、副題の「食人の痕跡と~」は、いくらなんでも誇張が過ぎやしないかと。
これではまるで、「眠れない一族」がかつて食人をしていたのでは、と勘違いしてしまう人がいますよ、絶対に。
そう、自分のように。 (^Д^)
本書の内容については、本のカバーに上手くまとめてあったので、一部抜粋すると、以下のようなものです。
「ヴェネツィアのある高貴な貴族出身の一族は、謎の不眠症に苦しんでいた。この病気は中年期に発病し、(中略)
やがて患者は不眠状態に陥って死んでしまう。この一族の数世紀に及ぶ物語を軸に話は展開。やがてこの病が
クールー病、狂牛病と同じプリオン病だとわかる。プリオン病の起源を探るうちに、80万年前の食人習慣へとたどり着く。」
種を越え、場所を越え、果ては時までもを越えて、この「恐怖」の病の歴史を辿ってゆく構成は大変面白かったのですが、
本書のもうひとつの楽しみ方として、「恐怖」の病気の謎を解明するために奮闘する医師・学者たちの、「栄冠は我のみに!!」
と言わんばかりのドス黒く醜い暗闘がムチャクチャ面白かったです。読んでいて「こいつらクズだなぁ」と何度も首を傾げたものです。
以下に目次を列記しつつ、各章の感想を少し。購入の参考になれば。
「眠れない一族」家系図
血縁関係の流れがよくわかるので、何度も読み返した。こういうのは、地味ながらも良い。
序章
第一部 闇の中の孤独
医師たちの苦悩・1765年、ヴェネツィア メリノ熱・1772年、ヴェネツィア ピエトロ・1943年、ヴェネト州
1765年11月、ヴェネツィアの医師が死亡したところから全てが始まります。「眠れない一族」の「恐怖」が
始まるとともに、時を同じくして、イギリスの羊たちの様子がおかしくなっていきます。そして時は1943年に飛び、
「ヴェネツィアの医師」の子孫であるピエトロにまで、謎の病気は受け継がれていました。
第二部 闇を跳ね返す
強力な呪術・1947年、パプアニューギニア 「ドクタ・アメリカ」・1957年、パプアニューギニア
動物実験・1965年、メリーランド州ベセスダ 「ボウ(お手上げだ)!」・1973年、ヴェネト州
化学者にうってつけの問題・1970年代後半~80年代前半、サンフランシスコ 収束・1983年、ヴェネト州
1947年、パプアニューギニアの未開部族のフォレ族は、「クールー病」という謎の病気に苦しんでいました。
多くの医師・学者が解明に挑むも「皆目わからない」ありさまでしたが、そこに現れたのが、若き青年医師(そして
ド変態の)カールトン・ガイジュシェックでした。
天賦の才に恵まれたガイジュシェックは、必死に(そして愉しく)クールー病の解明に奮闘しますが、彼をしても
全く解明できず、いつの間にか話は彼とフォレ族との下半身のエロネタに(しかも男同士の)。その後、クールー病の
背後に「食人」の影がちらつき始めたところで、ガイジュシェックは新たな職を得てアメリカへ。そして1976年には、
ノーベル賞を受賞します。果たして「食人」と一連の病気の因果関係は・・・?
一方その頃、「眠れない一族」の血は70年代に入ってもしっかりと受け継がれていて、彼ら彼女らを殺してゆきます。
アメリカでは、ガイジュシェックの生涯のライバルとなる、スタンリー・プルジナー(お金大好き人間)が台頭。ガイジュシェックを
はじめとする多くの医師・学者と丁々発止と斬り結びながらも、遂にプルジナーは、既にガイジュシェックが名付けていた
「スローウィルス」を「プリオン」と大々的に発表。その後、ノーベル賞を獲得。かたやガイジュシェックはと言うと、「小児性愛」で
臭い飯を喰うハメに。ノーベル賞受賞者なのに!
第三部 自然の反撃
地獄の默牛録・1986年、イギリス おいしい食品製品「オインキー」・1996年、イギリス
プリオンで説明できる世界・70年代から今日まで、アメリカとイギリス ヒトはヒトを食べていたか・紀元前80万年前、全世界
ついにアメリカにも?・現在、アメリカ
80年代後半、ついに「プリオン病(狂牛病)」がイギリスを襲います。プルジナーが大嫌いなイギリスは、「プルジナーに
主役の座を譲るつもりは」まったくなく、「アメリカ人に頼らないというイギリスの方針は高くついた」と、著者は時の宰相
サッチャーを強く非難します。サッチャー云々は置いておくとしても、たしかに当時のイギリスの官僚機構はやることなすこと
どこかの国にそっくりで、デジャヴ感出まくり。ついでに被害はどんどん拡大します。
一方、ガイジュシェックは98年に釈放。この時74歳。自らの「性的関心について、今はあけすけ」になった彼は、毎日
淫らなことを考えながら「核生成アミロイド(「プリオン」は怨敵プルジナーが名付けたので、死んでも使いたくない)」の
研究に没頭中。
ここで話は唐突に80万年前へ。古代の遺跡で発見された「食人」の痕跡を解説しながら、なぜ食べたのか、どうして
食べなくなったのか、そして一連の「プリオン病」との関係性をを著者が推測。面白かったのですが、「かもしれない」
「かもしれない」ばかりでは事の真偽が判然としないのですが。そして唐突に始まった「食人」の話は唐突に終わり、
時代は一気に「プリオン病(狂牛病)」の嵐が吹き荒れる現代のアメリカへ。ガイジュシェックの教え子たちが必死に戦うも、
治療法は未だに見つからず。
第四部 目覚めの時は来るのか?
致死性家族性不眠症の犠牲者たちのために・現在、ヴェネト州
90年代以降も、「眠れない一族」はバタバタと犠牲者を輩出してゆきます。そして21世紀になってもその「恐怖」は
変わらず、またも一族から発病者が出てしまいます・・・。
・・・以上です。本書は専門的な用語が頻繁に出ますが、易しい文体なので読みやすいです。
と言うか、そんなものは消し飛んでしまうほどに、怖くて面白かったです。「眠れない一族」については
同情しきりですが、それを研究している医師・学者先生たちの腐臭が漂うほどのドス黒さも知ることができて、
二重に怖くて面白かったです。絶対にオススメ!
このレビューが参考になれば幸いです。 (*^ω^*)
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