みな誰もが自身の堕落さに辟易した経験が一度くらいあるだろうが、彼の人生を綴ったこの一冊を読めば、なんだ俺の堕落なんてちっともなってねえ。赤子よりなお幼い。そんな感想すら口をついて出そうな内容になっている。
そして小池の堕落加減を考えれば世の殆どの人間の怠惰や失敗などいくらでもやり直せるのではないかと勇気を貰える。
彼は将棋に関して無双の腕を誇っていたが、しかしプロではない。天才ではあるのだが、やはりプロではなく、であるから天才だから全てが赦されるような世界に身を置いていたわけではない。だからこそ、彼の堕落は一般市民にもよく染み入る。小池がもしプロの将棋指しであったならいくら私生活が酷かろうと「でもプロなんだよな彼は」と思ってしまうかもわからないが、彼はただ将棋の強い自堕落な中年だった。しかし劇的に生き、死んでいった。
プロではない以上社会的な立場は我々と同じで、だからこそ共感に幅が出やすい。
まあそれでも小池は無類の天才で比類する存在がいないような鬼であったのだから関係はないかもしれないが、このような男が現実にいてくれたことはある意味で幸せである。
小説や漫画本に出てくる一種異様な人物に焦がれても憧れても現実にはいないわけだが、あらゆる創作より強烈な性格を持った男が確かにこの日本にいたという事実はそれだけで嬉しく思う。
……長いこと書いて言いたいことが解りにくくて申し訳ないが、最後に言いたいことは「文句なく面白い作品」だと言うこと。人の人生は誰でも映画に出来るなどと言うが、小池の人生を見てしまってからは己の人生など今のところ三文小説にもなりやしないだろうと。おそらく現代を生きた人間の中では最も記憶に残るような映画を作れる人生のひとつであったろうと私は思う。
また著者の鬼六先生の文章と人柄も大変良いものでありました。
真剣師 小池重明 (日本語) 単行本 – 2011/5/28
団 鬼六
(著)
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本の長さ318ページ
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言語日本語
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出版社イースト・プレス
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発売日2011/5/28
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ISBN-104781606377
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ISBN-13978-4781606378
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商品の説明
内容(「BOOK」データベースより)
羽生善治をして「不思議な魅力を感じた」「どう評価していいのかわからない」と言わしめた、不世出の天才棋士・小池重明の波乱に満ちた生涯―。「小池重明の遺書」、「小池重明名勝負棋譜」収録。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
団/鬼六
1931年4月、滋賀県彦根市に生まれる。関西学院大学法学部卒業。在学中より劇作を始めていたが、26歳のとき文藝春秋オール新人杯に入選し、作家活動に入る。30歳のころから特異な官能小説も手がけ、『伊藤晴雨物語』『花と蛇』などを発表。硬派軟派両道をいきながらSM作家として第一人者となる。1989年に断筆宣言。その後、将棋ジャーナル社主となって将棋界とかかわる。2011年5月逝去。享年79(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
1931年4月、滋賀県彦根市に生まれる。関西学院大学法学部卒業。在学中より劇作を始めていたが、26歳のとき文藝春秋オール新人杯に入選し、作家活動に入る。30歳のころから特異な官能小説も手がけ、『伊藤晴雨物語』『花と蛇』などを発表。硬派軟派両道をいきながらSM作家として第一人者となる。1989年に断筆宣言。その後、将棋ジャーナル社主となって将棋界とかかわる。2011年5月逝去。享年79(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
登録情報
- 出版社 : イースト・プレス (2011/5/28)
- 発売日 : 2011/5/28
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 318ページ
- ISBN-10 : 4781606377
- ISBN-13 : 978-4781606378
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Amazon 売れ筋ランキング:
- 1,035,238位本 (の売れ筋ランキングを見る本)
- - 2,447位将棋 (本)
- カスタマーレビュー:
カスタマーレビュー
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トップレビュー
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2018年3月19日に日本でレビュー済み
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17人のお客様がこれが役に立ったと考えています
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2019年3月23日に日本でレビュー済み
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「何か面白い本ないかなぁ。」とネットサーフィンしている時に小池重明と言う人のことを知りました。その時は読みたいリストに入れただけでしたが、「聖の青春」で氏が登場する場面があったことや、藤井4段の活躍で再びフィチャーされたこともあり、リストの順位を繰り上げて拝読。
面白かったです!!
流石、エンタメの巨匠、団鬼六!(と言っても団先生の作品は実は読んだことはないです。中学生とか、高校生の時に読めば、もっと豊かな人生になったかもしれないのですが~❤)
「聖の青春」は棋譜が多く、将棋を指さない自分には理解が若干難しかったものの、この作品はそこらへんは殆ど記載することなく、稀代の天才、またそうであったゆえに、現代社会にとうとう最後まで適応できなかった「真剣師、小池重明」を描き切っています。
かっこいい男の生き方、というよりは、周りの人が思わず興味をもってしまう、そんな不思議な魅力を持った小池重明氏、生きている間に見たかったです。
彼も生まれてくる時代がほんの少し早すぎたのかもしれませんね・・・。
面白かったです!!
流石、エンタメの巨匠、団鬼六!(と言っても団先生の作品は実は読んだことはないです。中学生とか、高校生の時に読めば、もっと豊かな人生になったかもしれないのですが~❤)
「聖の青春」は棋譜が多く、将棋を指さない自分には理解が若干難しかったものの、この作品はそこらへんは殆ど記載することなく、稀代の天才、またそうであったゆえに、現代社会にとうとう最後まで適応できなかった「真剣師、小池重明」を描き切っています。
かっこいい男の生き方、というよりは、周りの人が思わず興味をもってしまう、そんな不思議な魅力を持った小池重明氏、生きている間に見たかったです。
彼も生まれてくる時代がほんの少し早すぎたのかもしれませんね・・・。
2020年11月1日に日本でレビュー済み
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奥泉光『死神の棋譜』、夢枕獏『風果つる街』と将棋関係の小説が続いたので、ならばやはりこれは読まずばなるまいと手に取った。
これは凄い! 本当に凄い!
『風果つる街』にも小池をモデルにしたと思わせる真剣師が登場するが、夢枕獏の創作よりも、圧倒的に実在したこの男の方が凄いのである。
真剣師とは、将棋連盟に属するプロ棋士と異なり、在野で金をかけて将棋をする裏のプロたちのことである。
もうすでに絶滅して久しい。
最後にして最強の真剣師と言われたのが、小池重明である。
どれくらい凄いか。
プロと指してもほとんど負けないのでる。
アマ名人を2期連続して獲得しているが、とにかく対局の前夜も徹夜で飲み明かし、対局の持ち時間にも居眠りさえする有様。
だから、一時は特例でプロ棋士として認めようかという動きも出てくる。
が、あまりの素行の悪さに、結局は多くの棋士が反対に回り、プロ棋士の道は絶たれてしまう。
その素行の悪さが、また凄い。
篤志家の将棋倶楽部経営者が雇ってくれると、最初はまじめに働くが、しばらくすると売上金を持って逃亡してしまう。
その金庫の中に借用書を残してきたから泥棒ではない、というのが小池の認識なのである。
しかも、そうした金の持ち逃げを何度も繰り返すのだが、それがすべて女との駆け落ちのためである。
しかし、小池はどこか憎めないキャラクターであったらしく、支援してくれる人も大勢現れる。
そんな人たちに対しても、「子供将棋教室を設立する」と言って、借金をしまくってドロンしてしまうのである。
しかも、そうした金のほとんどを酒と博打に費やす。
団鬼六も、そうした支援者の一人で、当時、横浜にあった鬼六屋敷で賞金を付けて、アマやプロと対局させている。
団は、小池に「子どもに親らしいことをしてやれ」と言って、賞金10万円以外に5万円を渡すのだが、バーで飲んでチンチロリンをして一晩でオケラになってしまう。
そんなことを繰り返す小池に、団は「可愛い娘のことを思って、もうチンチロリンだけはやめろよ」と諭したところ、「先生、あれから改心してチンチロリンは一度もやっていません。ドボンだけにしています」という。
ドボンって何だ、問い返す団に、チンチロリンに似たおもしろい博打です、と答えるのである。
こんなエピソードが、1冊丸ごと続く。
途中で、東京から逃げ出して、名古屋で土方をし、2年間もまったく将棋を指さない日が続く。
そして東京に舞い戻り、団に泣きついて将棋を指させてもらうのだが、2年のブランクがありながらも、アマ最強やプロの6段をことごとく破ってしまう。
とにかく滅茶苦茶な人生で、そして将棋だけは滅茶苦茶に強い。
小池の出生は名古屋で、父親はニセ傷痍軍人の物乞い、母親は娼婦。
そこで将棋を覚え、独学で成り上がっていく。
といっても、棋譜を研究するというのとは無縁だったらしい。
すべて実践で学び、序盤は隙だらけだが、中盤から終盤にかけては手の付けられない強さを発揮したという。
羽生や藤井といった現代の棋士と対局したら、どんなことになったのだろうと、つい想像してしまった。
小池は41歳にして病死するのだが、小池を見守る団鬼六の視線が(だけでなく実際の関わりも)常人を逸するほどに優しい。
団鬼六に関しては、評伝『赦す人』という名著があるが、彼自身もハチャメチャで破天荒な人生である。
この破天荒な作者が、破天荒な小池と出会い、関わることで、本書が生まれた。
その相乗効果はすさまじく、ただ圧倒されるのみであった。
これは凄い! 本当に凄い!
『風果つる街』にも小池をモデルにしたと思わせる真剣師が登場するが、夢枕獏の創作よりも、圧倒的に実在したこの男の方が凄いのである。
真剣師とは、将棋連盟に属するプロ棋士と異なり、在野で金をかけて将棋をする裏のプロたちのことである。
もうすでに絶滅して久しい。
最後にして最強の真剣師と言われたのが、小池重明である。
どれくらい凄いか。
プロと指してもほとんど負けないのでる。
アマ名人を2期連続して獲得しているが、とにかく対局の前夜も徹夜で飲み明かし、対局の持ち時間にも居眠りさえする有様。
だから、一時は特例でプロ棋士として認めようかという動きも出てくる。
が、あまりの素行の悪さに、結局は多くの棋士が反対に回り、プロ棋士の道は絶たれてしまう。
その素行の悪さが、また凄い。
篤志家の将棋倶楽部経営者が雇ってくれると、最初はまじめに働くが、しばらくすると売上金を持って逃亡してしまう。
その金庫の中に借用書を残してきたから泥棒ではない、というのが小池の認識なのである。
しかも、そうした金の持ち逃げを何度も繰り返すのだが、それがすべて女との駆け落ちのためである。
しかし、小池はどこか憎めないキャラクターであったらしく、支援してくれる人も大勢現れる。
そんな人たちに対しても、「子供将棋教室を設立する」と言って、借金をしまくってドロンしてしまうのである。
しかも、そうした金のほとんどを酒と博打に費やす。
団鬼六も、そうした支援者の一人で、当時、横浜にあった鬼六屋敷で賞金を付けて、アマやプロと対局させている。
団は、小池に「子どもに親らしいことをしてやれ」と言って、賞金10万円以外に5万円を渡すのだが、バーで飲んでチンチロリンをして一晩でオケラになってしまう。
そんなことを繰り返す小池に、団は「可愛い娘のことを思って、もうチンチロリンだけはやめろよ」と諭したところ、「先生、あれから改心してチンチロリンは一度もやっていません。ドボンだけにしています」という。
ドボンって何だ、問い返す団に、チンチロリンに似たおもしろい博打です、と答えるのである。
こんなエピソードが、1冊丸ごと続く。
途中で、東京から逃げ出して、名古屋で土方をし、2年間もまったく将棋を指さない日が続く。
そして東京に舞い戻り、団に泣きついて将棋を指させてもらうのだが、2年のブランクがありながらも、アマ最強やプロの6段をことごとく破ってしまう。
とにかく滅茶苦茶な人生で、そして将棋だけは滅茶苦茶に強い。
小池の出生は名古屋で、父親はニセ傷痍軍人の物乞い、母親は娼婦。
そこで将棋を覚え、独学で成り上がっていく。
といっても、棋譜を研究するというのとは無縁だったらしい。
すべて実践で学び、序盤は隙だらけだが、中盤から終盤にかけては手の付けられない強さを発揮したという。
羽生や藤井といった現代の棋士と対局したら、どんなことになったのだろうと、つい想像してしまった。
小池は41歳にして病死するのだが、小池を見守る団鬼六の視線が(だけでなく実際の関わりも)常人を逸するほどに優しい。
団鬼六に関しては、評伝『赦す人』という名著があるが、彼自身もハチャメチャで破天荒な人生である。
この破天荒な作者が、破天荒な小池と出会い、関わることで、本書が生まれた。
その相乗効果はすさまじく、ただ圧倒されるのみであった。
2018年12月23日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
観る専の上司にめちゃくちゃ面白いと勧められて購入。その言葉通り、めちゃくちゃ面白く、一瞬で読み切ってしまった。当初は、真剣師という職業に関して多く書いているのだろうと思っていたが、そうではなく小池重明その人の破滅的人生、その記録であった。生い立ち、出てくるエピソードすべてがぶっとんでおり、ありえんやろと大笑いながら読むしかなかった。後半の物語に関しては、著者の団氏の小池への思い、そして「果たし合い」を通した援助がなければ、この天才のストーリーはここまで面白くはならなかっただろう。プロ棋士として見てみたかったという意見もあると思うが、私はそうは思わない。彼もどこかで、自分は生来裏の人間であると自覚していたのではないか。もう二度とこんな人物が現れることはないだろう。あっぱれ。
ベスト1000レビュアー
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将棋は天才それ以外はどうしようもないダメ人間、その天使と悪魔が共存したような小池重明と、彼に痛い目にあわせられながらもついつい救いの手を差し出してしまう団鬼六やその他の人々がとても興味深く読めます。もしあの時小池がプロ棋士に慣れていたら彼は真人間にはたして成れたのか、人生を救うたった一つのチャンスを掴めなかったのが残念でなりません。しかしこういう人は真人間になったら将棋の方もダメになるタイプという気もします。
2017年11月13日に日本でレビュー済み
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「小説より奇なり」などという言葉もあるが、実際に存在し、生きた小池重明なる真剣師
にあっぱれと拍手を送りたい。なぜなら、そのだらしない人間性と不敵なまでの将棋士と
しての圧倒的な強さ、両反する局面に人間の面白さが爆発し、故か魅了されるからだ。
多くの支援者かつ犠牲者が、彼を許してしまうのも、その点であろう。
勝って勝って勝ちまくり、でも、一番大事な大一番は、逃げるか、戦意喪失で消え去る。
そこも、実に人間的だ。
大崎善生氏の「赦す人:団鬼六伝」を読み、小池重明を知り、この本と出合った。
将棋を知らぬものでも十分に楽しめる、将棋版-宮本武蔵-と言いたい。!!!
にあっぱれと拍手を送りたい。なぜなら、そのだらしない人間性と不敵なまでの将棋士と
しての圧倒的な強さ、両反する局面に人間の面白さが爆発し、故か魅了されるからだ。
多くの支援者かつ犠牲者が、彼を許してしまうのも、その点であろう。
勝って勝って勝ちまくり、でも、一番大事な大一番は、逃げるか、戦意喪失で消え去る。
そこも、実に人間的だ。
大崎善生氏の「赦す人:団鬼六伝」を読み、小池重明を知り、この本と出合った。
将棋を知らぬものでも十分に楽しめる、将棋版-宮本武蔵-と言いたい。!!!
2011年8月21日に日本でレビュー済み
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ある日、Wikipediaを徘徊していたら、ひとりの男の項にたどり着いた。小池重明だった。その生い立ちの面白さと言ったら、ない。ニセ傷痍軍人の父とヤミ娼婦の母のもとに生まれ、高校中退と同時に風俗店の従業員として働きながら、将棋の腕を上げていく一人の真剣師。
やがて新宿の殺し屋と呼ばれ、アマ最強の称号を縦にし、幾多のプロを打ち負かすようになる小池重明。一見、痛快なサクセスストーリーのようでもあるのだが、その裏には常に女と金が絡んだ彼の、人生に対しての堕落さがつきまとっていた。
将棋以外は全くダメ。暴力事件、寸借詐欺を繰り返し、棋界から追放された彼は、もう二度と将棋は打たないと決意する。やがて競馬に手をだすものの無一文となり、土工の日雇い人足へと人生を追いやったかと思えば、二年後に決意を反故して突然のカムバック。もう、全くでたらめな生き方。でたらめなのに、将棋だけは滅法強い。
著者の団鬼六さんは先日亡くなられたが、団さんはそんな小池重明を人間として愛していたのだろう。この本を読んでいると、団さんの優しさが溢れてくる。団さんの優しさに包まれて、破滅型の天才が魅せる哀愁が堪らない。
やがて新宿の殺し屋と呼ばれ、アマ最強の称号を縦にし、幾多のプロを打ち負かすようになる小池重明。一見、痛快なサクセスストーリーのようでもあるのだが、その裏には常に女と金が絡んだ彼の、人生に対しての堕落さがつきまとっていた。
将棋以外は全くダメ。暴力事件、寸借詐欺を繰り返し、棋界から追放された彼は、もう二度と将棋は打たないと決意する。やがて競馬に手をだすものの無一文となり、土工の日雇い人足へと人生を追いやったかと思えば、二年後に決意を反故して突然のカムバック。もう、全くでたらめな生き方。でたらめなのに、将棋だけは滅法強い。
著者の団鬼六さんは先日亡くなられたが、団さんはそんな小池重明を人間として愛していたのだろう。この本を読んでいると、団さんの優しさが溢れてくる。団さんの優しさに包まれて、破滅型の天才が魅せる哀愁が堪らない。