事実は小説よりも奇なりなんて言いますが、多少の誇張はあるにせよ、激動の時代をここまで全力で駆け抜けた人物はそうはいないのではないのではないか。相場師と銘打たれていますが、是川が長者番付1位となる200億円を株取引で稼ぎ出したのは、実に84歳の時。青年期から単身、満州に渡り、事業を起こし、失敗、成功を繰り返す。何度も一文無しになりながらも、徹底的な調査、勉強と持ち前の度胸で事業を立ち上げていく。
金儲けが好きと放言し、時代もあるのだろうが、結構際どいこともしながら、実業家として名を上げていく。しかし本人はどうも豊かな生活や金を使った道楽には興味がない。戦時中は日本の戦局のために尽力し、孤児のための財団などの社会福祉事業にも力をいれる。
戦争が終結し、市場経済が安定し出した頃、是川は株式相場で生きていくことを決心する。その時はほとんど無一文である。数々の仕手戦を繰り広げるが、大きく利益を上げているのは、世界金融の情勢の分析、政局、過去の膨大な数字のデータを独自に研究し、成 長性のある企業の株を長期で持ち続けるという正統派の投資である。これと決めたら、周りがなんと言おうと、徹底的に買い占めていく。
住友金属鉱山の売却で200億円の利益をあげるが、ほとんど税金で持って行かれ、死去した時には20億借金がある有様。それでも、自分のような幸福な人間は二人といまいと回想している。
生馬の目を抜く相場、商売の世界で生き抜いてきただけあって、したたかな俗物らしいところも垣間見え、そこまでやるか?という場面もあるが、それでも本人が是とする愛と誠に生きた人間であることも確かだろう。
貧困ゆえ小学校しか出られなかった是川であるが、徹底的に勉強をし、また何度失敗しても這い上がる。幾度となく訪れる苦難と逆境を跳ね返す凄まじい精神力と行動力は、どん底にあっても意思さえあれば、道を開拓することができるのだと教えてくれる。
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