白井のエッセイ集「無窓」とともに入手しやすい、白井の肉声に触れられる一冊。
同エッセイ集では、白井の思弁的でときに難解な言い回しがしばしば見られるに対し、本冊はより身近に白井に触れられる。
評者は白井の民族意識について関心があるのだが、どうもウナギのようで、掴みきれなかった。
しかし、本冊の各対談で散りばめられている言説を手がかりにして、やっとその輪郭が見えてくるようになった。
天皇制主義者とはいえず、縄文主義者ではありながらその紋様は評価せずアニマを評価し、「ピープル」の消費主義には距離を置きつつそれを見下そうとはせず、日本の「粋」「血」「民族」を基にした自己を肯定しながらもその矮小さをも諦観をもって眺める白井。
う〜ん、こう書いても、分かったような、分からないような(笑)。
けれど、ひとくちにナショナリスト、民族主義者といっても一筋縄ではいかない人物だというのが、本冊を読み進めればよくわかる。
なお、評者としては、忙しすぎる丹下健三への辛口コメントや、ガウディへの熱すぎる思い、ろくな争いも葛藤もみられなかった日本文化の来歴への口惜しさなどが白井の口から語られる点にすこぶる興味を覚えた。
造本もまた秀逸。版元のデザイン室が手がけたようだが、カバー、表紙、文字組、紙質とも、静謐の奥に気品がみられる。
この版元ときわめて縁の深かった白井のスタイルをよく尊重していると思われた。
座右の一冊。
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