とても読みやすく、こころに刺さる文章が多くありました。
読みながらこれは☆5だと思っていたのですが、最終ちかくで解せない展開になってしまいました。
以下、盛大なネタバレ感想になりますので未読の方はお気をつけください。
夫婦で互いに輪郭がまざりあっていく。山へ猫を捨てにいく。読み進めていくと、どんどん不穏な空気にからめとられていきます。夫の揚げる天ぷらを疎ましく思いつつ、いざ口にすると夢中になって食べるくだりも、その夫と自分との関係性が逆転しつつ同化していくエピソードもぞくぞくしました。
これは凄い作品に出会えた! そう思っていたのですが、最後のさいご。夫が妻の叫びで「花」になるのは解せませんでした。
登場人物が、芋虫になろうが虎になろうが構いません。古今東西の作品で散々書かれています。
しかし花になるは肩すかしでした。喰らいたい、混ざり合いたいと思う程の強い葛藤を、植物になった夫からは感じられなかったからです。
散々「蛇」のくだりがでてきたのですから、せめてミミズだったら。いや、長ものでなくとも、地を這う生き物であったならば納得はできたのですが……
人生に疲れた中年が、望んだら綺麗な花になれるのならば。それはあまりにも、たやすい生き方です。人としての葛藤や苦悩はすべて置いてしまえる、随分楽な選択だなと思いました。
文章はおそろしく好みです。解せないのは最終エピソードのみなので、多分何度でも読み返してしまいそうです。そのなかで「花」となる部分がいつか自分なりに理解できれば。そう願ってしまいます。
Kindle 端末は必要ありません。無料 Kindle アプリのいずれかをダウンロードすると、スマートフォン、タブレットPCで Kindle 本をお読みいただけます。
無料アプリを入手するには、Eメールアドレスを入力してください。
