相互に関係がない被害者が相次いで狙撃されて殺される動機不明の連続殺人事件が起こり、刑事たちを混迷させるが、読み進むうちにその背後に脳死と臓器移植をめぐるスキャンダルが浮かび上がってくる。
日本でも脳死を人の死と認めるかどうかで大きな議論があったが、この問題は人間の本質は思考であるとか、思考の座である脳に神性が宿るといった哲学的な問題ではなく、臓器移植を成功させるためには心臓が停止する前の生きた状態の臓器が必要という医療技術サイドの実益に基づく要求が大きい。
この著作中でも、脳死状態とされた患者から心臓や肝臓をはじめ目の網膜に至るあらゆる臓器が移植用に摘出され、遺族にはその変わり果てた無残な遺体が引き渡されて、大きなショックを受けるという場面が重要なモチーフとして描かれる。
古典的な人の死は心臓死であり、その基準は「呼吸停止、心停止、瞳孔拡大」という客観的に明白なものだった。これに対し、脳死は一見して明白ではなく、脳死状態の患者は外見上生きた人間と区別できない。そのため、脳死判定は厳格かつ公正に行われることが求められるが、脳死判定する医療者と臓器移植を受ける側に何らかの利害関係があればそこに重大なスキャンダルが生じうるわけであり、それがこの著作のテーマとなっている。実は、日本でもドイツでも、脳死が法的に認められたにもかかわらず臓器提供者はそれほど増えていない。移植医療への不信とまでいうかどうかは別として、いわば人の死を待つ医療に対する躊躇があるのだろう。
この本のドイツ語の原題は Die Lebenden und die Toten 、すなわち「生者と死者」であり、生者と死者の境界を危うくする脳死判定の問題性を意図したものと思われる。
こうした大きなテーマを扱いつつ、著者はストーリーテラーとして実に巧みに物語を構成しており、犯人らしき人物が複数浮かび上がるものの最後まで絞り込ませずにハラハラドキドキした展開を楽しませてくれる。
ただし、犯人の連続殺人の標的が何の罪もない家族であるという点は読んでいて気分のいいものではない。確かに、「目には目」という同害報復の論理からは家族を殺されればその家族を殺すということになるのかもしれないが、そこには復讐劇のカタルシスは全くない。その点で星1つ減らした。
なお、今回はオリヴァーの捜査チームにFBIで学んだと称するプロファイラーが登場するが、的外れのプロファイリングを繰り返して顰蹙を買う。かなり極端な戯画化といってよく、アメリカのミステリーではやりのプロファイリングに対する批判意識が読み取れて興味深い。
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生者と死者に告ぐ (創元推理文庫) 文庫 – 2019/10/30
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ドイツ中がパニックに陥る連続狙撃殺人が発生!
世界累計1000万部突破の大人気警察小説シリーズ!
〈刑事オリヴァー&ピア〉シリーズ7
犬の散歩中の女が突如射殺された。ライフルで80メートルの距離から正確に頭部を狙撃されたのだ。翌日、森に建つ邸宅で、女が頭部を撃たれて死亡。数日後、若い男が心臓を撃ち抜かれる。全員が他人に恨まれるタイプではなく、共通点がわからない。そして警察署に“仕置き人”と名乗る謎の人物から、死亡告知が届く。犯人の目的は?被害者たちの“見えない繋がり”とは?刑事オリヴァーとピアが未曾有の連続殺人事件に挑む!
世界累計1000万部突破の大人気警察小説シリーズ!
〈刑事オリヴァー&ピア〉シリーズ7
犬の散歩中の女が突如射殺された。ライフルで80メートルの距離から正確に頭部を狙撃されたのだ。翌日、森に建つ邸宅で、女が頭部を撃たれて死亡。数日後、若い男が心臓を撃ち抜かれる。全員が他人に恨まれるタイプではなく、共通点がわからない。そして警察署に“仕置き人”と名乗る謎の人物から、死亡告知が届く。犯人の目的は?被害者たちの“見えない繋がり”とは?刑事オリヴァーとピアが未曾有の連続殺人事件に挑む!
- 本の長さ624ページ
- 言語日本語
- 出版社東京創元社
- 発売日2019/10/30
- ISBN-104488276113
- ISBN-13978-4488276119
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商品の説明
内容(「BOOK」データベースより)
ホーフハイム刑事警察署の管轄内で、犬の散歩中の女性が射殺された。80メートルの距離から正確に頭部を狙撃されたのだ。翌日、森に建つ邸宅で、女性が窓の外から頭を撃たれて死亡。数日後には若い男性が心臓を撃ち抜かれた。そして警察署に“仕置き人”からの死亡告知が届く。被害者たちの見えない繋がりと犯人の目的とは。刑事オリヴァーとピアが未曾有の連続狙撃殺人に挑む!
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
ノイハウス,ネレ
1967年、ドイツ、ミュンスター生まれ。夫が経営するソーセージ工場で働きながら、2005年に初の長篇ミステリUnter Haienを自費出版した。“刑事オリヴァー&ピア”シリーズ第一作『悪女は自殺しない』と次作『死体は笑みを招く』も自費出版し、地元の書店で絶大な人気を博す。その後、評判を聞きつけた老舗出版社ウルシュタイン社からの出版が決定し、2009年正式にデビューした
酒寄/進一
ドイツ文学翻訳家。訳書多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
1967年、ドイツ、ミュンスター生まれ。夫が経営するソーセージ工場で働きながら、2005年に初の長篇ミステリUnter Haienを自費出版した。“刑事オリヴァー&ピア”シリーズ第一作『悪女は自殺しない』と次作『死体は笑みを招く』も自費出版し、地元の書店で絶大な人気を博す。その後、評判を聞きつけた老舗出版社ウルシュタイン社からの出版が決定し、2009年正式にデビューした
酒寄/進一
ドイツ文学翻訳家。訳書多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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カスタマーレビュー
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ベスト1000レビュアー
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殿堂入りNo1レビュアーベスト500レビュアー
2012年12月、70代の老婦人が犬の散歩中、遠距離から放たれた銃弾によって殺される。その翌日、別の女性が自宅で窓を貫いた弾丸の犠牲になる。数日後には青年が心臓を撃ち抜かれた。手口はいずれも同じでありながら、被害者には共通点が見当たらない。ホーフイハイム刑事警察署の面々は、<仕置人>と名乗るスナイパーを追うが、さらに第4の犠牲者が……。
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ドイツのホーフハイム刑事警察署のオリヴァー・フォン・ボーデンシュタイン主席警部とピア・キルヒホフ主席警部たちの活躍を描くミステリ・シリーズ第7弾です。ドイツ本国の出版順でいうと、『 悪女は自殺しない 』、『 死体は笑みを招く 』、『 深い疵 』、『 白雪姫には死んでもらう 』、『 穢れた風 』、『 悪しき狼 』そして今回の『 生者と死者に告ぐ 』となります。
精緻なトリックを超人的な推理力で解き明かす本格ミステリではありません。超人的な登場人物はひとりもいません。皆が人間くさい欠点をかかえ、私生活では家族や友人との関係に翻弄されながら、仕事では地味に聞き込みを重ねて足で稼ぐ刑事たちの物語です。
作者ネレ・ノイハウスはこのシリーズの中で、謎めいた殺人事件の捜査の果てに、戦争の悪夢、環境問題の闇、児童を対象にした惨劇など、現代のドイツがかかえる一筋縄ではいかない問題が立ち現われて来るさまを描いてきました。今回も前段ではスナイパー犯が狙う犠牲者たちには一切の共通点がなさそうに見えますが、後段、大勢の人間がかかわってエゴと慢心の末に引き起こした過去の事件が姿をみせていきます。この展開が実に見事です。
またドイツ贔屓の私には、物語の端々にあらわれる<ドイツ>の記述にうれしくなります。
◇ピアがクリストフからもらった指輪を左手の指にはめるので役所の職員が面食らう。ドイツでは結婚指輪は右手の指にするのが普通だから。ピアは前夫ヘニングとの結婚が破綻したので、かつてのように右手に指輪をしたくないと考えている。また、右手にすると握手するときに痛いのも理由のひとつ。
◇人を撃ち殺して遊ぶ最近のコンピュータゲームに比べると、ドイツで古くから親しまれているすごろくゲーム<イライラしない>で相手のコマをはじきとばすのはかわいいものだと署長が言う。
◇ピアの同僚カイの親は典型的な「68年世代」。つまり日本の全共闘世代にあたる学生運動世代。
◇ある被害者の娘が料理するのは、ドイツ料理で使われる卵麺の一種「シュペッツレ」。
ある被害者の妻が料理するのは、オーストリアの牛肉の煮込み「ターフェルシュピッツ」。
◇事件の鍵をにぎるある女性が飼っていた犬はドイツ原産の「ホファヴァルト」種。
ある重要人物が飼っているのは「ロットワイラー」。こちらもドイツ原産の犬。
◇ある人物がカフェで注文するのはケーキの「フランクフルタークランツ」。
◇ある人物が飲む酒は「コルン」。穀物を原料としたアルコール度数が32度以上の蒸留酒。
そして最後に翻訳についてひとこと触れておきます。
ドイツ語圏のミステリ翻訳者として酒寄進一氏の訳業は天下一品。600頁を超える長編で、しかも数十人の被害者や遺族、重要参考人、そして刑事たちが登場するのですが、流れるような日本語に助けられてこの複雑な物語を読み通すことができました。私にとってネレ・ノイハウスのシリーズは、オリヴァーとピア、そして酒寄氏に会いたいがために手にする書となっています。
第8弾の『 Im Wald 』の翻訳が楽しみです。『森の中』というタイトルからもドイツらしい物語が展開することが期待できそうです。
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*179頁:「クッキーを持った皿がのっている」とありますが、正しくは「クッキーを盛った皿がのっている」でしょう。「もった」の漢字変換ミスだと思います。
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ドイツのホーフハイム刑事警察署のオリヴァー・フォン・ボーデンシュタイン主席警部とピア・キルヒホフ主席警部たちの活躍を描くミステリ・シリーズ第7弾です。ドイツ本国の出版順でいうと、『 悪女は自殺しない 』、『 死体は笑みを招く 』、『 深い疵 』、『 白雪姫には死んでもらう 』、『 穢れた風 』、『 悪しき狼 』そして今回の『 生者と死者に告ぐ 』となります。
精緻なトリックを超人的な推理力で解き明かす本格ミステリではありません。超人的な登場人物はひとりもいません。皆が人間くさい欠点をかかえ、私生活では家族や友人との関係に翻弄されながら、仕事では地味に聞き込みを重ねて足で稼ぐ刑事たちの物語です。
作者ネレ・ノイハウスはこのシリーズの中で、謎めいた殺人事件の捜査の果てに、戦争の悪夢、環境問題の闇、児童を対象にした惨劇など、現代のドイツがかかえる一筋縄ではいかない問題が立ち現われて来るさまを描いてきました。今回も前段ではスナイパー犯が狙う犠牲者たちには一切の共通点がなさそうに見えますが、後段、大勢の人間がかかわってエゴと慢心の末に引き起こした過去の事件が姿をみせていきます。この展開が実に見事です。
またドイツ贔屓の私には、物語の端々にあらわれる<ドイツ>の記述にうれしくなります。
◇ピアがクリストフからもらった指輪を左手の指にはめるので役所の職員が面食らう。ドイツでは結婚指輪は右手の指にするのが普通だから。ピアは前夫ヘニングとの結婚が破綻したので、かつてのように右手に指輪をしたくないと考えている。また、右手にすると握手するときに痛いのも理由のひとつ。
◇人を撃ち殺して遊ぶ最近のコンピュータゲームに比べると、ドイツで古くから親しまれているすごろくゲーム<イライラしない>で相手のコマをはじきとばすのはかわいいものだと署長が言う。
◇ピアの同僚カイの親は典型的な「68年世代」。つまり日本の全共闘世代にあたる学生運動世代。
◇ある被害者の娘が料理するのは、ドイツ料理で使われる卵麺の一種「シュペッツレ」。
ある被害者の妻が料理するのは、オーストリアの牛肉の煮込み「ターフェルシュピッツ」。
◇事件の鍵をにぎるある女性が飼っていた犬はドイツ原産の「ホファヴァルト」種。
ある重要人物が飼っているのは「ロットワイラー」。こちらもドイツ原産の犬。
◇ある人物がカフェで注文するのはケーキの「フランクフルタークランツ」。
◇ある人物が飲む酒は「コルン」。穀物を原料としたアルコール度数が32度以上の蒸留酒。
そして最後に翻訳についてひとこと触れておきます。
ドイツ語圏のミステリ翻訳者として酒寄進一氏の訳業は天下一品。600頁を超える長編で、しかも数十人の被害者や遺族、重要参考人、そして刑事たちが登場するのですが、流れるような日本語に助けられてこの複雑な物語を読み通すことができました。私にとってネレ・ノイハウスのシリーズは、オリヴァーとピア、そして酒寄氏に会いたいがために手にする書となっています。
第8弾の『 Im Wald 』の翻訳が楽しみです。『森の中』というタイトルからもドイツらしい物語が展開することが期待できそうです。
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*179頁:「クッキーを持った皿がのっている」とありますが、正しくは「クッキーを盛った皿がのっている」でしょう。「もった」の漢字変換ミスだと思います。
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2019年11月18日に日本でレビュー済み
敵のまったく見当たらないような無害な人物を狙った狙撃事件が続き、
恐慌をきたすホーフハイム警察署管轄内。恋人クリストフとのバカンスを諦めた主席警部ピアと
やはり主席警部のオリヴァーがこの連続殺人に挑みます。
「仕置き人」と名乗る犯行声明から徐々に明らかになる犯人の動機。
捜査本部をあざ笑うように残虐な犯行が続きますが、
犯人の狙いが判明するに従い、多くの医師や関係者を巻き込んだ
臓器移植をめぐる犯罪が次第にその全貌をあらわにします。
臓器提供を巡って権威ある者たちのおぞましい犯罪が描かれる本書は
緊迫感と心理描写、社会的視野といった点でかなりの秀作と感じられました。
一時のダメ人間ぶりから立ち直ったオリヴァーにも
人生の転機となるやもしれぬ申し出が提示されます。
ピアの前夫ヘニング(法医学者)や妹キム(司法精神医)の活躍も嬉しい要素。
全体の陰惨さを救うかのようなラストのピアとクリストフのシーンが印象的でした。
恐慌をきたすホーフハイム警察署管轄内。恋人クリストフとのバカンスを諦めた主席警部ピアと
やはり主席警部のオリヴァーがこの連続殺人に挑みます。
「仕置き人」と名乗る犯行声明から徐々に明らかになる犯人の動機。
捜査本部をあざ笑うように残虐な犯行が続きますが、
犯人の狙いが判明するに従い、多くの医師や関係者を巻き込んだ
臓器移植をめぐる犯罪が次第にその全貌をあらわにします。
臓器提供を巡って権威ある者たちのおぞましい犯罪が描かれる本書は
緊迫感と心理描写、社会的視野といった点でかなりの秀作と感じられました。
一時のダメ人間ぶりから立ち直ったオリヴァーにも
人生の転機となるやもしれぬ申し出が提示されます。
ピアの前夫ヘニング(法医学者)や妹キム(司法精神医)の活躍も嬉しい要素。
全体の陰惨さを救うかのようなラストのピアとクリストフのシーンが印象的でした。
2020年1月30日に日本でレビュー済み
杉江松恋氏が「WEB本の雑誌」で取り上げていた推薦本である。文庫本600ページを越す大作。巻措く能わず。しかも登場人物が多く、人物名がドイツ語であるため、その人が誰だったかページを戻ることも多々あり。途中から相関図を自分で書いて読み進んだ。ヘトヘトに疲れたが、面白かった。よく出来ていた。誰が犯人か、動機は?と謎が謎をよぶ展開。刑事達が犯人に翻弄され、五里霧中状態に陥る。そして、読み進むうちにその背後にとんでもないスキャンダルが浮かび上がってくる。目には目を。復讐の極致。悪に手を染めた奴らの家族の誰か、妻・娘・息子が殺害されるとは!入り組んだ人間関係、闇に葬られていた忌まわしい過去の出来事、エゴのかたまり、嘘を重ねて非を逃れようとするずる賢い奴、そして最愛の人を亡くし悲痛な人生を送る人、など精緻に描かれ、読み応えがあった。個性豊かな刑事たちの焦り、葛藤、怒り、生活、人間関係なども過不足無く書かれている。自意識過剰のプロファイラーが出てきてとんちんかんな推理をして皆から顰蹙を買われる所もおもしろい。シリーズの他の作品も読んでみようかという気になる。
「特殊な事件から人間の持つ残酷な一面、他人を利用して顧みないようなエゴのありようが浮かび上がってきて慄然とさせられる。その普遍性があるからこそ、国境を越えて読まれるような物語になっているのだ」と松江氏は書いている。この数年のドイツや北欧のミステリーの充実ぶりには目を見張るものがある。はやりの言葉を使うならば、当分この「沼」から這い出せない。
「特殊な事件から人間の持つ残酷な一面、他人を利用して顧みないようなエゴのありようが浮かび上がってきて慄然とさせられる。その普遍性があるからこそ、国境を越えて読まれるような物語になっているのだ」と松江氏は書いている。この数年のドイツや北欧のミステリーの充実ぶりには目を見張るものがある。はやりの言葉を使うならば、当分この「沼」から這い出せない。