企業規模を問わず、低生産性克服は日本企業の経営課題となっているが、製造工程、会計(原価計算)、人事労務・給与制度など、多岐に渡る角度から生産性向上のためのヒントを紹介した本。個人的に参考になった点は以下。
1. 非生産部門の人事評価制度は部門ごとに完結しがちになり、非生産部門の社員が頑張った結果、仕事のための仕事を増やして製造部門の邪魔をする傾向にある。このため、非生産部門も全社(もしくは店舗、工場ごと)の目標利益に連動した人事評価制度を導入することで、このようなムダを無くすことができる。この場合、利益最大化のための全社統一行動基準の導入も重要。
2. 職能給(もしくは職位級)からバンド制職務給・役割給に変更することで、役職定年制度による中高年社員のモチベーションダウンと生ゴミ化、多様な働き方の導入における給与設計という難題への解決策が得られる。この方法は、恐らく、今後進む外国人労働者導入時の給与設計にも応用が利くはずだし、最も生産性の高い年代への給与分配増も図れるはずだ。
3. 非製造部門のコストを全部原価計算で製造物原価に按分すると、結果的に手元キャッシュ以上の利益を計上できるが、生産数と在庫数が多いほど利益が計上できるため、生産性向上を妨げる。直接原価計算に切り替えた方が良い。
4. 利益感度分析によると、粗利益率が50%未満の場合、売価⇒変動単価⇒数量⇒固定費、50%超の場合、売価⇒数量⇒変動単価⇒固定費、の順で利益感度(=利益増への寄与率)が高い。真っ先に人件費(固定費)を削る経営は危険。最も重要な指標は粗利益総額。(詳しくは西純一郎氏の企業方程式を勉強したい。)
生産管理と労務管理を並列に扱う本というのも珍しいが、トピックが多岐に渡る反面、個々の分野の掘り込みは浅い。だが、中小企業経営者は忙しいので、まずはザっとエッセンスを掴めることの方が大事だと思うので、減点はしなかった。
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