千住真理子は全身全霊でヴァイオリンを弾いている人であることがよく分かる一冊。ヴァイオリンの響きを通した心の交流を追求する真摯(しんし)な姿勢に、気持ちがしんとなった。
私は趣味で歌を習っているが、この本の中の「音」という言葉を「声」に置き換えれば、声楽にも当てはまると思う箇所がいくつもあった。例えば、「空気を伝わっていく『振動』そのものが、人の肌に触れて(聴き手は)『音を体感する』に至る」という見方には、目からウロコが落ちたような気がした。聴き手に声を届けようとすると、体に力が入ってつぶれた声になってしまいがちだが、声を発することによって作り出した空気の振動を伝えるのだと思えば、響きを多く含んだ柔らかい声が出る。この他、「演奏テクニックに、右脳と左脳を使い分けることによって感情表現とテクニカル表現を変えていく、という方法がある」という記述も興味深い。歌唱も感情の流れのままに気持ちよく歌える部分は右脳を使い、難しいテクニックが必要な部分は左脳に切り替えることを意識すればいいのかもしれない。
プロの音楽家だけでなく、趣味で楽器や歌を習っている人にとっても大いに参考になる本だと思う。
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