私は2005年に発売された「Life is (not) so easy」の頃からずっと服部曉典さんのファンです。M3という同人音楽即売会で服部さんを知り、以来音源を買うだけでなく自主制作のWEBラジオなどで大変お世話になりました。
服部さんの魅力は何といっても鍵盤ハーモニカの演奏!サックスのフュージョンが好きな方なら誰でもハマる、その圧倒的な演奏技術と味のあるアドリブ。しかも、作曲からアレンジ、録音ミックス、マスタリングまで全て1人でこなすマルチスキルにも驚かされます。とにかく一度試聴して欲しいですが、文字で伝えられることをここに書きたいと思います。
今回のアルバムは、写実的曲作りから音楽的興味へと作曲の動機を変えたと言います。旧作に比べて、楽曲の自己主張が抑えめになってBGM感が増した印象を受けました。元々、服部さんの曲はとてもインパクトがあり、メロディからアレンジまでやりたい放題という感じでそれがまた魅力だったのですが、本作では大人な雰囲気が増したと感じました。BGMっぽくなったと言っても、以前と比べてですから、本作でも十分インスト作品として濃い楽曲達ですよ!念のため!
録音やミックスのクオリティは、アルバムを出すごとにレベルアップしています。本作も音質は大きく向上していて、特筆すべきは音の太さとエネルギー感。生楽器だけでなく、打ち込みも含めて音の存在感が強いです。音場の奥行きも深く、旧作を大きく上回る透明感も魅力です。Platinum Dropsは、かなり深いところまで低域が入っていて、ぜひピュアオーディオで聴いてほしい仕上がりでした。音圧はもう少し抑えめしてダイナミクスを大きくして欲しいところですが、CD作品としては生音の質感もしっかり残っているし、いい音の作品であることは間違いありません。鍵盤ハーモニカの録り音は肉厚で輪郭もクッキリと分かり、CDの限界に迫る仕上がりです。
今回は、全ての演奏を自分でやるというコンセプトでしたが、次回作はミュージシャンを招いてやる従来のスタイルも期待したいです。琥珀や夕日の記憶は、ドラムが生演奏でないのが残念でした。ドラマチックな楽曲になればなるほど、ドラムパートが楽曲のスイッチになっていてムードを盛り上げるためには打ち込みだと惜しい感じは否めません。
渋くてかっこいい大人のフュージョンを求めている方は特にオススメ。他にも服部さんの十八番ともいえるVent et Soleilのようなダンサブルな楽曲も収録されており、心にじんわり染みる切ないナンバーもありで実にバラエティ豊か。
個人的には琥珀と夕日の記憶が大好きです。本人とはまだ2回しか会ったことがないのですが、いつかライブで聴くのが夢です。