これがこの本に出てきたもっとも印象的な言葉だ。そう研究は自発的な知的冒険であり、義務ではない。もっとラクに日銭を稼ぐ手段はいくらでもある。
私事で恐縮だが、自分は業界で「若手」と呼ばれる年代の理系研究者である。幸運にも、ある研究機関の常勤ポスト(いわゆるアカポス)をゲットできたのだが、義務として与えられている研究テーマと自分のやりたいことと乖離があって、色々と悩む日々が続いている。そうしていると、やりたいことが本当にやりたいことなのか分からなくなってきた。完全に方向性を見失っているのである。(以前は、いい歳して定職に就けないことを悩んでいたのに、贅沢な悩みである。)
そんな悶々とした日々の中で出逢ったのが本書である。本書の言葉には本当にハッとさせられるものが多かった。以下に引用する。
・研究とは知的冒険だ!
・これからの人生を生きていくにあたっては、何が自分の価値観なのかをきっちりとしておく必要がある。もし、なかなかその答えが出なかったら、とりあえず与えられたテーマで研究しながら、その研究生活を通して、本当に自分のやりたい研究テーマ、得意なフィールドを作っていけば良い。
・研究は義務ではない。僕もキミも研究のために生きているのではない。生きるために、それも楽しく生きるために研究しているのだ。主体はあくまで自分の価値観である。
・研究テーマはまったくあなたの自由に選べることを認識しよう。
・研究者は「緊急ではないけれど重要」なことこそやるべきだと思う。
方向性を見失って仕事の時間が短くて散漫になっていた自分の心に喝を入れられた思いだ。
そして、本書ではゴキゲンにコラボできる仲間と仕事をすることの重要性、日々の勉強の重要性、アウトプットを出す(英語で原著論文を出版する)、そして時間管理の重要性を強調する。そのような実務的な面で、以下の章
・研究者になるための8つのチェックポイント
・研究テーマを決める14の原則
・研究者のための知的時間管理法
は役に立ちそうで、すぐに自分の研究スタイルに取り入れたいと感じた。実はどれも当たり前じゃないかと思う内容なのだが、いうは易し。坪田先生ご自身のご経験を基に書かれているので、文章のニュアンスに説得力が出ているのである。
そして、案外忘れられそうなのが、「ゴキゲンにやる」という点だ。1年ほど、何が何でも否定から入る困った上司と仕事をしたことがあり、本当に精神的に磨り減り、精神科のお世話にもなった。自分が悪いのかとその時思っていたが、やはりゴキゲンにやるには、そんな人とはなるべく関わらないほうがいいのである。
このように、心掛けの面と研究生活の実務の面から、本書はどの理系研究者に何らかの気づきを与えるものだと思う。また、これから研究者を目指す大学生、高校生には、研究者とはこういうものなのだ、と読書で擬似仕事体験ができる良書であると思う。
全ての理系研究者、研究者を目指す若い皆さんに本書をお勧めします。
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