現代思想5月号は「東日本大震災 危機を生きる思想」を特集として組んでいる。
経済的発展のためには電力の安定的供給が不可欠という理由から、オイル・ショックを境にして、日本国民の原子力アレルギーを抑え込みながら原発推進に付き進んだ。最近では二酸化炭素による温暖化防止の切り札のように見なされ、「原発ルネッサンス」などと誇大に美化された。特集冒頭の柄谷行人氏は、今回の原発事故から、これら原発のキャンペーンは犯罪的な欺瞞であったと喝破している。そして今回の震災を日本の「破滅」ではなく「新生」と捉えるべきだと結ぶ。
酒井直樹氏は、知識人の直面している課題として、「このような惨事を生み出した制度的な条件を洗い出し、誰がどの段階でどのような発言をし、どのような決定を行ったか、その発言はどのような論拠があり、その論拠は妥当であったか、を一歩一歩調べ上げることであろう」としている。敗戦後の丸山眞男の「無責任の体系」の解析を今こそ進めなければならないだろう。
飯田哲也氏は「原発」が日本社会に食い込んできた過程を示し、現在の日本社会が抱える3つの空洞を描き出している。「本質の空洞」「思考の空洞」「知の空洞」である。
小松美彦氏の十項目の提言にも大きく首肯した。
原発の存在は歴史的、社会的な視座を無視しては語れないだろう。本誌ではそれぞれの論客がそれぞれの専門性を活かして、読者に多くの視点とヒントを与えてくれる。今後の原発問題、日本の未来を考える上で、示唆に富んだ書であった。
- ムック: 246ページ
- 出版社: 青土社 (2011/4/27)
- 言語: 日本語
- ISBN-10: 4791712277
- ISBN-13: 978-4791712274
- 発売日: 2011/4/27
- 梱包サイズ: 22 x 14.4 x 0.8 cm
- おすすめ度: 5件のカスタマーレビュー
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