ブラッドベリ最後の作品集だ。発行は04年だが、新作と40-50年代の作品が混じっている。
ブラッドベリはかなり成功した作家だが、若いころは創作意欲が需要を上回っており、執筆当時に売れなかった短編がかなりある。
庫出し作品を読めるのはありがたい。
表題作(03)は至高の猫ロマンス。抒情的な作風のわりには、ストレートな恋愛はあまり扱わない作家だ。本作は例外にして最高傑作である。
『さなぎ』(46-47)白人が日焼けして黒くなるなら、黒人が暗闇にいれば白くなるのか。
当人にとっては笑い話ではない。作者のリベラルな姿勢に感心した。
『ふだんどおりにすればいいのよ』(48-49)アプローチはまるで違うが、本編もアメリカにおける黒人の立場が主題だ。
見事な切れ味である。
『酋長万歳』(03-04)上院議員がインデアンの酋長と賭けをして、アメリカを取られてしまった。
笑いながらも苦い風刺の冴えるコントだ。
『変身』(48-49)共和党員の南部男が、口を滑らしたばかりに死より恐ろしいリンチを受ける。
理不尽な暴力というだけでなく、私刑の内容と背景が身の毛がよだつほど怖い。
『趣味の問題』(52)本書では珍しく宇宙船と異星人が登場する。SFではあるが、ある種の恐怖小説だ。
ブラッドベリの文学者としての才能が味わえる短編集だった。
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