本書の趣旨は、タイトルに観えるほど「マッドサイエンティスト」又は実験などを検証・解説したものではないように思う。確かに本書に収録された学者(実験主宰者)・実験等には「とっぴな実験」、「奇想天外な実験」、「いぶかしがらずにはいられない実験」 (「まえがき」より)も観られる。「商品の説明」でも引用があるように、原著者は「私はこれから登場する科学研究や研究者たちを、決しておもしろおかしく紹介しようとしているわけではない…これらの話は飽くなき好奇心に突き動かされた人々の物語なのだ…登場する研究者たちは…尊敬すべき要素をひとつ共有している。それは…疑問を投げかけた点だ…時には一見くだらない疑問を持った人が世紀の発見をすることもある」(同前より)とも言う。
但し特に「 時には一見くだらない疑問を持った人が世紀の発見をする」か否か、即ち本書において全てのトピックに右評価が相当するかと言えば、私はこれにつき全面的には首肯できない。 蓋し、本書収録の一部の (臨床的又は一般人への)実験において、時として道義的・倫理的問題が垣間見られるものもあるからである。例えば第1章「ギロチン後の頭部」(※注)、第6章「探知機」、第9章「ネズミの首」、同前「なぜドイツ人は…」、第10章「保険の申込書」、同前「死刑囚の心拍数」などについては、私は前記引用趣旨に見える有意義性以前の問題があると個人的には思料する。ただ概ね8割以上の首肯できるトピックは、“実験”と言うよりいわゆる“イグノーベル賞”的な要素があるもの、又はその実証への熱意を感じさせるものも否定できない。
【※注】
フランスの著名な化学者ラヴォアジエが、(徴税請負人又は政府の財政改革者であった等の理由から)フランス革命での断頭台の露と消えたことは有名だが、断頭後の意識の継続につきラグランジュらに“まばたき”の実験を依頼した云々の話は都市伝説とされている(確証は何もない)。
個人的に興味を惹いたのがまず、「ワインの専門家」及び「☆カ・コーラ好き」の実験である(75~82頁)。ここで実験者の言葉「被験者が実際に知覚するのは、それ以前に感じ取った感覚であり、それを撤回するのは容易ではない」と引用している。つまり味覚以前に視覚が重要な要素であると言うことだろう。余談だが、私が北米出張をしていた頃のホテルのミニバーは、ほぼ「◇プ◇・コーラ」だったような記憶がある(米国内で「◇プ◇・コーラ」のシェアが強かったか否かは定かでない)。次が「記憶は口から摂取できるか」(127~136頁)である。これは記憶自体の原理と物(DNA等)の摂取後の消化・分解を考えれば(当該実験時期は1950年代に注意)、都市伝説化しやすいトピックだと思う。
実験(結果)に疑問を持ったのが、「恐怖と性的興奮」(234~7頁)である。ここで実験者は「男性20人中13人」(235頁)と「23人中7人」(236頁)等の統計例を挙げているが、右統計値の有為性の有無が問題だろう。私は統計学の専門家ではないが、(サンプルとなる)母数が小さすぎるように思える。次が個人的には“イグノーベル賞”に推薦したい実験で、「集団で用を足すアリ」及び「自分の子供と他人の子供の…」(334~340頁)がある。前者は厳密には「用を足す」(=不要物の排泄代謝)とは言えないが、係る思い付きが素朴で実態探求の意欲に感心する。これは後者実験にも言えることだろう。最後が訳者も「訳者あとがき」で言及しているが、「『魂』の重量を計測する」(411~417頁)。1910年前後の時代性を考慮すると、最早言うことはないだろう。読者に依っては評価も種々あるだろうが、私は全体としては面白く読めた一冊である。なお本書巻末には「この作品は2009年8月にエクスナレッジより刊行された」とあるもタイトルがないが、右年月及び出版社から恐らく『
歴史を変えた!?奇想天外な科学実験ファイル
』か?と推測する。
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狂気の科学者たち (新潮文庫) 文庫 – 2019/9/28
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●墜落中のプロペラ機で保険の申込書を書かせる
●ネズミの首を切らせて被験者の表情を観察する
●セックス中に体毛がどれだけ移動するか調べる……
ここまでやるか!?
これも科学なのか?
驚異の科学実験史!!
科学発展の歴史の裏には奇想天外としか言いようのない実験の数々があった。死亡前後の人間の体重を測って「魂」の重さを計測する。妊娠率を高めるためピエロに扮して胚移植前の女性を笑わせる。黄熱病が伝染病でないことを証明するために患者の吐瀉物を飲む。赤ん坊をチンパンジーと一緒に保育する……。信念に基づいて真実を追究する科学者たちを描いた戦慄(と笑い)のノンフィクション!
まえがきより
LSDを打たれたゾウも登場するだけに、この本は奇抜な出し物を集めたサーカスのパレードのような印象を与えるかもしれないが、私はこれから登場する科学研究や研究者たちを、決しておもしろおかしく紹介しようとしているわけではない。むしろその逆で、私に言わせれば、これらの話は飽くなき好奇心に突き動かされた人々の物語なのだ。これから登場する研究者たちは、どんなに恐ろしく、また常軌を逸した人物でも、尊敬すべき要素をひとつ共有している。それは、彼らが世界を観察し、目に映るものを当然視せず、疑問を投げかけた点だ。彼らの疑問は常識外れだったかもしれないし、愚かですらあったかもしれないが、時には一見くだらない疑問を持った人が世紀の発見をすることもある。
●ネズミの首を切らせて被験者の表情を観察する
●セックス中に体毛がどれだけ移動するか調べる……
ここまでやるか!?
これも科学なのか?
驚異の科学実験史!!
科学発展の歴史の裏には奇想天外としか言いようのない実験の数々があった。死亡前後の人間の体重を測って「魂」の重さを計測する。妊娠率を高めるためピエロに扮して胚移植前の女性を笑わせる。黄熱病が伝染病でないことを証明するために患者の吐瀉物を飲む。赤ん坊をチンパンジーと一緒に保育する……。信念に基づいて真実を追究する科学者たちを描いた戦慄(と笑い)のノンフィクション!
まえがきより
LSDを打たれたゾウも登場するだけに、この本は奇抜な出し物を集めたサーカスのパレードのような印象を与えるかもしれないが、私はこれから登場する科学研究や研究者たちを、決しておもしろおかしく紹介しようとしているわけではない。むしろその逆で、私に言わせれば、これらの話は飽くなき好奇心に突き動かされた人々の物語なのだ。これから登場する研究者たちは、どんなに恐ろしく、また常軌を逸した人物でも、尊敬すべき要素をひとつ共有している。それは、彼らが世界を観察し、目に映るものを当然視せず、疑問を投げかけた点だ。彼らの疑問は常識外れだったかもしれないし、愚かですらあったかもしれないが、時には一見くだらない疑問を持った人が世紀の発見をすることもある。
- 本の長さ464ページ
- 言語日本語
- 出版社新潮社
- 発売日2019/9/28
- 寸法10.6 x 1.6 x 15.1 cm
- ISBN-104102200169
- ISBN-13978-4102200162
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商品の説明
内容(「BOOK」データベースより)
科学発展の裏には奇想天外としか言いようのない実験の数々があった。死亡前後の人間の体重を量って「魂」の重さを計測する。妊娠率を高めるためピエロに扮して胚移植前の女性を笑わせる。黄熱病が伝染病でないと証明するために患者の吐瀉物を飲む。赤ん坊をチンパンジーと一緒に保育する…。信念に基づいて真実を追究する科学者たちを描いた戦慄(と笑い)のノンフィクション!
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
バーザ,アレックス
アメリカ・ペンシルヴェニア州生れ。カリフォルニア大学サンディエゴ校にて科学史修士号を取得。1997年、研究の一助としてウソに関するウェブサイト「The Museum of Hoaxes」を立ち上げると、毎月100万PVを記録する人気を博す(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
アメリカ・ペンシルヴェニア州生れ。カリフォルニア大学サンディエゴ校にて科学史修士号を取得。1997年、研究の一助としてウソに関するウェブサイト「The Museum of Hoaxes」を立ち上げると、毎月100万PVを記録する人気を博す(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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登録情報
- 出版社 : 新潮社 (2019/9/28)
- 発売日 : 2019/9/28
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 464ページ
- ISBN-10 : 4102200169
- ISBN-13 : 978-4102200162
- 寸法 : 10.6 x 1.6 x 15.1 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 289,738位本 (の売れ筋ランキングを見る本)
- カスタマーレビュー:
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2020年5月24日に日本でレビュー済み
医師の多くは何らかの研究に携わる時期を持つ。今は普通の糖尿病専門医であるが、若い時は科学者として糖尿病合併症の研究を行った。たとえば、腎臓の培養細胞を用いて糖尿病腎症の原因解明や新治療法開発にも取り組んだ。大発見はできなかったが、10以上の新知見を世界に先駆けて論文発表できた。以来、糖尿病合併症の予防と治療は私のライフワークとなった。
世の中には昔から「まさかそんな」と思ってしまう奇想天外な実験を行う科学者たちがいた。そんなとんでもない研究を集めたのがこの本だ。第1章「フランケンシュタインの実験室」では、猟奇的な実験に度肝を抜かれる。電気刺激で死者を生き返らせる試みや、イヌやサルの首を移植する実験などだ。果たして成功したのか?第2章以降は実験のテーマが感覚、睡眠、動物、恋愛と続く。「モーツアルトを聴くと知能が上がる?」「記憶は口から摂取できるか?」「忠犬は本当に飼い主を助けるか?」このような変わった研究ばかりだが、すべて学術論文として科学誌に掲載された正式な研究なのである。筆者自身この本を「史上最もとっぴな実験の収集本で、狂人も天才も英雄もバカも仲良く肩を寄せ合っている」と評している。
私自身も一種狂気の研究者だったのだろうか。糖尿病合併症をこの世から無くすという、まるで魔法のような薬を真剣に追い求めていたのだから。
世の中には昔から「まさかそんな」と思ってしまう奇想天外な実験を行う科学者たちがいた。そんなとんでもない研究を集めたのがこの本だ。第1章「フランケンシュタインの実験室」では、猟奇的な実験に度肝を抜かれる。電気刺激で死者を生き返らせる試みや、イヌやサルの首を移植する実験などだ。果たして成功したのか?第2章以降は実験のテーマが感覚、睡眠、動物、恋愛と続く。「モーツアルトを聴くと知能が上がる?」「記憶は口から摂取できるか?」「忠犬は本当に飼い主を助けるか?」このような変わった研究ばかりだが、すべて学術論文として科学誌に掲載された正式な研究なのである。筆者自身この本を「史上最もとっぴな実験の収集本で、狂人も天才も英雄もバカも仲良く肩を寄せ合っている」と評している。
私自身も一種狂気の研究者だったのだろうか。糖尿病合併症をこの世から無くすという、まるで魔法のような薬を真剣に追い求めていたのだから。






