読み始めてすぐに物語の世界に入り込めました。それからは一気読み。いつまでもこの世界にとどまっていたと思いつつ、翌日には読了してしまいました。『書』がテーマの一つとなっていますが、難解な内容ではなく、乙女チックなところもあって、どんな年齢層の方でも楽しく読めると思います。読みやすい文体もこの作者の魅力でしょう。
中国は明代末期、日本なら江戸前期でしょうか。どの登場人物も時代にそった物腰や考え方を持っていて、生き生きとしたリアリティを感じさせます。読み進むうち、すっかり本の世界に入り込んでしまい、タイムスリップしたような気分になりました。
犬に化けることのできる仙力を持った娘・斑娘を中心に、書の収集家であって書家でもある権力者・陳遷、その末娘・陳婉(お嬢様にしては賢明な少女)、清貧の学生・呉鴻史とその母(気高い天然キャラ)、嬢信(少女たちが書く手紙)フェチの劉保恩、などなど、どの人物も物語の核心に絡んで無駄がありません。
そして、この物語には、もう一つの物語が内蔵されています。箱の中に箱が入っているような物語を『箱物語』と呼んでいますが、ここでのもう一つの箱は『書』の世界。それも難解な話ではないのですが、時を経て念がこもると、禍を引き寄せる魔力をおびて、現実(物語世界の現実)を脅かしてきます。思いがけなく、悲劇へと転がっていく世界を、斑娘はくい止めることができるのでしょうか……。すべての箱が一度に開く、箱物語のカタルシスを沢山の人に味わって頂きたく思います。
狂書伝 (日本語) 単行本 – 2014/5/22
勝山 海百合
(著)
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本の長さ281ページ
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言語日本語
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出版社新潮社
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発売日2014/5/22
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ISBN-104103314427
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ISBN-13978-4103314424
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商品の説明
内容(「BOOK」データベースより)
時は明代の中国。揚子江流れる豊かなまちに稀代の名筆家と謳われる男がいた。この男陳遷は、しかしながら権勢家にして行いは残虐非道。人々を恐怖と憤怒に陥れていた。彼を懲らして、同時に世を正すべく暗躍する、仙術を使う異能の女・斑娘。その運命を握るのは、一通の手紙…筆の魔力に取り憑かれた人々の狂奔を描く傑作中華伝奇小説!
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
勝山/海百合
岩手県生まれ。2006年、「軍馬の帰還」で第四回ビーケーワン怪談大賞受賞。2007年、「竜岩石」で第二回『幽』怪談文学賞短編部門優秀賞受賞。2011年、「さざなみの国」で第23回日本ファンタジーノベル大賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
岩手県生まれ。2006年、「軍馬の帰還」で第四回ビーケーワン怪談大賞受賞。2007年、「竜岩石」で第二回『幽』怪談文学賞短編部門優秀賞受賞。2011年、「さざなみの国」で第23回日本ファンタジーノベル大賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
登録情報
- 出版社 : 新潮社 (2014/5/22)
- 発売日 : 2014/5/22
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 281ページ
- ISBN-10 : 4103314427
- ISBN-13 : 978-4103314424
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