本題のアップルvsサムスンの訴訟を詳細に解説した第5章は非常に読み応えがある。これだけでも、1900円払う価値はあると言える。
しかし、この第5章も含め、著者の主張が各所に散りばめられているのだが、これがかなりバイアスが掛かっているように感じ、知財畑の私には非常に鼻につく。
スティーブ・ジョブスが個人的恨みに基づき無用な争いを展開したような記述がされている。まあ、そうかもしれないし、そんな気もする。しかし、そうだと断定できる証拠も存在しないし、本書でも提示されていない。なぜ泥沼の訴訟合戦になったのかは、当事者でないと判らないはず。そういう意味では本書の主張は根拠なき中傷のように思える。
その他の章はオマケで、新聞や雑誌、他書のスクラップを並べたような内容であり、正直言って目新しい内容は殆どない。
ここでも、著者のバイアスが掛かった個人的見解が散見される。間違った記載や、説得力の無い記載も多い。
例えば、第3章の末尾には、特許係争が頻発するのは米国が特殊な特許制度を採用しているから、のような主張がなされているが、噴飯ものとしか言いようがない。米国が先願主義に移行したからと言って、なぜ係争が減るのだろうか?減るはずがない。
著者は広告代理店出身の方で、経歴だけ見ると門外漢。その割にはよく勉強されており、綺麗に一冊に纏めたという感じ。
相当に頭の良い方なのだろう、とは推察される。しかし、門外漢は門外漢、新聞で勉強した程度のことで、強硬な主張をすることには、知財畑の人間としては憤りを覚える。
初心者が、知財紛争とは何かを俯瞰するには非常に良い本と言える。
しかし、著者の様々な主張は、あくまで個人的見解であるとして、話半分で聞いておくべきであろう。
第5章は☆4つくらいだが、他の章はページ稼ぎな点、主張バイアスが掛かっている点で1点マイナス。
結果☆3とした。
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