ウィグナーの有名なエッセイ「自然科学における数学の不合理な有効性」に代表されるように,物理学などの精密科学において,純粋な思考の産物という建前になっている数学がなぜこれほど有効なのかという疑問は,多くの人によって論じられてきた.本書は数学が物理学に役立った例を12にテーマごとに歴史的に振り返り,その驚異を読者に紹介しようとする野心作である.そのような例はあまりにも多く,そのため本書は消化不良を起こしそうなほどにいろんな話題が提供されている.とはいっても,著者が固体物理学の専門家であるためか,取り上げられた話題は物性物理学にかなり偏っており,素粒子物理学に関する話題はかなりおざなりな感じがする.各話題は非常に初歩的なところから始められるが,すぐにたくさんの数式が現れる.そして終りの方になると高度な概念が説明を端折って出てくる.これではすでに内容をよく知っている人にしか理解できないのではないかと思われる.
本書の原著は1994年,邦訳は1998年の出版で,それを文庫版にしたものである.そのため最近の情報(たとえばケプラー予想の完全解決など)は含まれていない.文庫版という制約のためなのか,これだけ多くの数式が出てくるのに縦書きにしたのはいただけない.出版社は文庫本の体裁より,読者の便宜を優先すべきだ.
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