一読、共感を覚える優れたエッセイである。ベストセラー「国家の品格」と重なる記述もあるが、同書の中でやや獏とした印象を与えた"武士道"については本書の方が詳しく論じられている。特に、武士道をイギリスの騎士道、紳士道と比して論じている辺り興趣がある。全編、イギリス的合理精神とユーモア精神と個性重視に加え、伝統的日本人的心性が見事に調和している。加えて、著者の亡父の新田次郎氏の話題や若き日の留学時代を語っている部分では郷愁を感じさせる自在の筆使いである。
著者のユーモア談の二本柱として、自身の自慢話の過度の誇張及び悔しさが滲む夫人への揶揄がある。特に後者は何時読んでも面白い。著者の愛妻家振りが窺える。ただし、本書ではこの部分が少なく個人的には少し残念だった。子供の学校の話や大学での課題の出し方においても、単なる頑固話に見えて、啓発的な教育論になっている。若年期の国語・読書重視と上述した個性重視である。また、恩師のお見舞いの話の最後の一行に琴線に触れる風景描写を入れるなど、エッセイエストとしての円熟味を感じた。これからも啓発的で笑えるエッセイを書き続けて欲しいと思う。
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父の威厳 数学者の意地 (新潮文庫) 文庫 – 1997/6/30
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武士の血をひく数学者が、妻、育ち盛りの三人息子との侃々諤々の日常を、冷静かつホットに描ききる。著者本領全開の傑作エッセイ集。
- 本の長さ315ページ
- 言語日本語
- 出版社新潮社
- 発売日1997/6/30
- 寸法14.8 x 10.5 x 2 cm
- ISBN-104101248052
- ISBN-13978-4101248059
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出版社より
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大いなる暗愚 | 始末に困る人 | 卑怯を映す鏡 | グローバル化の憂鬱 | とんでもない奴 | できすぎた話 | |
【新潮文庫】「管見妄語」シリーズ | アメリカの策略に警鐘を鳴らし、国民に迎合する安 直な政治を𠮟りつけ、ギョウザを熱く語る。「週刊新潮」の大人気コラムの文庫化。 | 東日本大震災で世界から賞賛された日本人の底力を誇り、復興に向けた真のリーダー像を説く。そして時折賢妻に怯える大人気コラム。 | 卑怯を忌む日本人の美徳は、どこに行ってしまったのか。現代の病んだ精神を鋭い慧眼と独自のユーモアで明るみにするコラム集。 | またもや英語とITか!日本人らしさを失わせる、米英の英語帝国主義に真っ向から反対。戯れ言にうつつを抜かす世の中に喝! | 平等が日本の国柄を破壊し、知識偏重批判が学力を下げる──。縦横無尽に題材を捉えながら、ユーモアと慧眼で本質を突くコラム集。 | 小学校からの英語教育は罪が深い。日本の国力を必ず減衰させる。英語より日本語、高い道徳はわが国の国是!週刊新潮人気コラム。 |
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若き数学者のアメリカ | 数学者の言葉では | 数学者の休憩時間 | 遥かなるケンブリッジ―一数学者のイギリス― | 父の威厳 数学者の意地 | 心は孤独な数学者 | |
【新潮文庫】藤原正彦 作品 | 一九七二年の夏、ミシガン大学に研究員として招かれた青年数学者が、自分のすべてをアメリカにぶつけた、躍動感あふれる体験記。 | 苦しいからこそ大きい学問の喜び、父・新田次郎に励まされた文章修業、若き数学者が真摯な情熱とさりげないユーモアで綴る随筆集。 | 「正しい論理より、正しい情緒が大切」。数学者の気取らない視点で見た世界は、プラスもマイナスも味わい深い。選りすぐりの随筆集。 | 「一応ノーベル賞はもらっている」。こんな学者が闊歩する伝統のケンブリッジで味わった波瀾の日々。感動のドラマティック・エッセイ。 | 武士の血をひく数学者が、妻、育ち盛りの三人息子との侃々諤々の日常を、冷静かつホットに描ききる。著者本領全開の傑作エッセイ集。 | ニュートン、ハミルトン、ラマヌジャン。三人の天才数学者の人間としての足跡を、同じ数学者ならではの視点で熱く追った評伝紀行。 |
商品の説明
内容(「BOOK」データベースより)
冷厳なはずの数学者が、涙もろくて自他共に認める猪突猛進?!妻、育ち盛りの息子三人と暮す著者。健全な価値観を家庭内に醸成するためには、父親の大局的認識と母親の現実的発想との激論はぜひ必要と考えるのに、正直、三人の部下を従えた女房の権勢は強まるばかり。…渾身の傑作「苦い勝利」、文庫初収録の15編など、父、夫、そして数学者としての奮戦模様を描いて、本領全開の随筆66編。
登録情報
- 出版社 : 新潮社 (1997/6/30)
- 発売日 : 1997/6/30
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 315ページ
- ISBN-10 : 4101248052
- ISBN-13 : 978-4101248059
- 寸法 : 14.8 x 10.5 x 2 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 43,033位本 (の売れ筋ランキングを見る本)
- - 742位近現代日本のエッセー・随筆
- - 1,057位新潮文庫
- - 2,112位評論・文学研究 (本)
- カスタマーレビュー:
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ベスト500レビュアー
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2008年1月10日に日本でレビュー済み
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「国家の品格」で大きな注目を集めた著者が15年程前に書いたエッセイ集です。驚くのは15年前から言っている事にぶれが全く無いこと。本書でも「小学生に英語を教えるくらいなら国語の時間を増やすべし」「真の国際人とは自国の歴史・文化をきちんとしている人間」等々。私も海外に10年ほど住んでいましたので、著者の言うことは良くわかります。いずれにせよ、10年前と比べて言ってることが変わってしまう人が多い中、ずっと同じ事を主張し続ける著者の姿勢には脱帽です。
2006年2月17日に日本でレビュー済み
数学者の視点から眺めた清新なアメリカ留学記『若き数学者のアメリカ』で日本エッセイスト・クラブ賞を受賞、独自の随筆スタイルを確立し、今も多くの愛読者がある。
本書掲載の66編の随筆から「父の負けず嫌い」を取り上げてみたい。父親のペンネーム新田次郎は、諏訪市新田で生まれた次男であるからと言う。
父親が小説を書き始めた動機については、母親藤原ていの『流れる星は生きている』が脚光を浴びたのに刺激されてらしい。妻を訪れる編集者たちにお茶を出す屈辱に耐えかねて、とも言われている。彼は藤原家のお家芸とも言える俳句や和歌をたしなんでいて、文章にも自信があった。妻の書いたものがベストセラーになったことから、負けず嫌いが頭をもたげ、あれくらいなら自分にだって書ける、と思ったのではなかろうか。
運よくサンデー毎日の懸賞小説の一等に選ばれ、作家として幸先よいスタートを切ってからも、気象庁の仕事はいささかも手を抜かなかった。どんなに締め切り原稿がたまっていても、勤務中はただの一行も書かなかった。
かつて母親は五歳、二歳、零歳の幼児を連れて北朝鮮の野山を彷徨し、脱出する時、父親は部下を残して帰国するのを拒否した。公を私に優先したのだった。作家としも直木賞等をもらったが、家庭においてだけは負けず嫌いを貫徹できなかった。妻に頭が上がらないという不満が創作意欲を高めたかもしれないと正彦は思う(雅)
本書掲載の66編の随筆から「父の負けず嫌い」を取り上げてみたい。父親のペンネーム新田次郎は、諏訪市新田で生まれた次男であるからと言う。
父親が小説を書き始めた動機については、母親藤原ていの『流れる星は生きている』が脚光を浴びたのに刺激されてらしい。妻を訪れる編集者たちにお茶を出す屈辱に耐えかねて、とも言われている。彼は藤原家のお家芸とも言える俳句や和歌をたしなんでいて、文章にも自信があった。妻の書いたものがベストセラーになったことから、負けず嫌いが頭をもたげ、あれくらいなら自分にだって書ける、と思ったのではなかろうか。
運よくサンデー毎日の懸賞小説の一等に選ばれ、作家として幸先よいスタートを切ってからも、気象庁の仕事はいささかも手を抜かなかった。どんなに締め切り原稿がたまっていても、勤務中はただの一行も書かなかった。
かつて母親は五歳、二歳、零歳の幼児を連れて北朝鮮の野山を彷徨し、脱出する時、父親は部下を残して帰国するのを拒否した。公を私に優先したのだった。作家としも直木賞等をもらったが、家庭においてだけは負けず嫌いを貫徹できなかった。妻に頭が上がらないという不満が創作意欲を高めたかもしれないと正彦は思う(雅)
ベスト500レビュアーVINEメンバー
1994年に講談社から出た『父の威厳』に新たに15編を加え、改題・文庫化したもの。
全部で66編のエッセイが収められている。短いものばかりで、さすがに寄せ集めの印象は免れない。代表作『遙かなるケンブリッジ』などと比べると、かなり落ちてしまうのは仕方ない。
しかし、著者の気っぷのよさというか、心地良い頑固さのようなものは充分に伝わってくる。不正に出会ったときに意志を曲げない強さ。まあ、現実世界を生き抜いて行くには困りものかも知れないが、ちょっと憧れてしまうところがある。
自分を飾らないところが魅力。
全部で66編のエッセイが収められている。短いものばかりで、さすがに寄せ集めの印象は免れない。代表作『遙かなるケンブリッジ』などと比べると、かなり落ちてしまうのは仕方ない。
しかし、著者の気っぷのよさというか、心地良い頑固さのようなものは充分に伝わってくる。不正に出会ったときに意志を曲げない強さ。まあ、現実世界を生き抜いて行くには困りものかも知れないが、ちょっと憧れてしまうところがある。
自分を飾らないところが魅力。
2003年6月16日に日本でレビュー済み
ご存知、藤原正彦氏のエッセイ集。タイトルにある「父の威厳」は、ご本人であるとともに父、新田次郎氏をも指していると考えられる。御尊父との銀座のバーめぐりの話しなど、面白い。謹厳実直を絵に描いたようなご尊父の横顔が思い出されて、実に苦笑を禁じえない。内容的にもっとも力が入っているのが、最後に配置されたご令息の検便の話だろう。公教育と戦う著者の姿勢が明らかになっている。現場の教員の対処に問題が含まれていることは著者の指摘のとおりだが、一々反応してしまう父兄の側も問題なしとしない。父兄の過剰反応、学校への責任の転嫁、それを見越しての学校側の対応、という悪循環が生じてしまっていることこそが問題ではないか。
2014年6月9日に日本でレビュー済み
スポーツに熱中していた青春時代、都立西高でサッカーに情熱を傾けていたこと、人間の記憶力は、若いうちが高いから、ということで、中3までに英単語を1万語くらいまで覚えてしまったということなどは面白く感じました。ただ、一つ、一億総中流となったこの日本からは、アッパーミドルが出なければならない、という一言が、幻滅させる要因となってしまいました。一億総中流でよかったのに、アッパーミドルという成果主義を取り入れたところから、日本は狂って行ったのです。その点は、非常に残念。長男の検便の話は、あまり面白くはありませんでした。