...レイ・ブラッドベリ「火星年代記」は、ぎょっとしたり、心臓が止まりそうになるような展開がある。
本人が記しているとおり、未知のテクノロジーが頻繁に出てくるようないわゆるSFとは違う。むしろ人間的なストーリーのほうに重点がある。
火星に到着した隊員が、そこで地球となんら変わらぬ風景と出会い、隊員の死んだ家族に扮した火星人が彼らをおびき寄せて地球人を抹殺する「第三探検隊」などは、レムの「ソラリス」にもどこか通じる、未知に対する恐怖や他者の異質性という要素が見いだせる。
ときたま、これは著者自身の思想をそのまま表していると思えるような箇所もある。
私が気に入いった箇所としては、「月は今でも明るいが」の、火星の文化に感銘を受け、火星で死ぬことを志した隊員が、典型的な地球人の思考を持った隊長に語る以下のシーンだ。
「わたしたちは、ダーウィンや、ハクスレーや、フロイトを歓迎しました。それから、ダーウィンとわたしたちの宗教がまじりあわないことに気がついた。(略)で、わたしたちは馬鹿者だから、宗教を打ち壊そうとしたのです。その試みは大成功でした。わたしたちは信仰を失い、人生とはなんだろうという疑問を抱き始めました。芸術が単なる挫折した欲望の装飾に過ぎず、宗教が自己欺瞞にすぎないとするならば、人生になんの価値があるのでしょう。(略)わたしたちは迷える民であったし、今でもそうなのです。」
「それで火星人たちは迷わぬ民なのかね。」
「そうです、彼らは科学と宗教をむすびつけるすべを知っていましたので、両者は平行して発展していきました」
むろん、哲学的で角ばった内容ばかりでなく、吹き出してしまいそうなシーンもあるし、むしろ文体はユーモアに溢れている。
ぜひ、一読を。
Kindle 端末は必要ありません。無料 Kindle アプリのいずれかをダウンロードすると、スマートフォン、タブレットPCで Kindle 本をお読みいただけます。
-
Apple
-
Android
-
Android
無料アプリを入手するには、Eメールアドレスを入力してください。





