正直読後感はあまり良くありませんでした。暴力の描写も他の作品に比べ陰惨で、何度も読み返したいという感じではありませんでした。しかし、しばらくたってから本の内容について考えてみると、印象が変わりました。
自分が良しと思ったことを実行することの難しさと、それをどこまでやるべきかということについての、作中人物の苦悩や限界、善良でも極悪でもない人間がふと犯してしまう過ち、それを悪いとは言い切れない居心地の悪さがしっかりと描かれており、それでも腐らずに、生まれたからにはできるだけ善き人でありたい、という非常に頼りないながらも大切にしたいメッセージがのせられていると思います。
伊坂作品の登場人物は、本当の奥底の心根が善良なキャラクターが多く、ほっとすると同時に自分はそこまでいい人ではないと時折自己嫌悪に陥る時もありますが、この本の登場人物は、良くも悪くも等身大です。
その辺が、自分を見ているような苛立ち、読後感の悪さにつながっているのではないかと思いますが、まさに、火星に住むわけにいかない我々が、それでも善き人として生きていこうとするうえで、考えさせられる内容でした。
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