内容紹介
『浦沢直樹が描きあげた音だけの漫画、壮大な絵が広がる音楽! 』
1950代後半~60年代の小学生は誰でもノートに漫画──コマ割りをしたストーリーものや、ページをめくると動き出すパラパラ漫画を描いていた。冒険譚や宇宙 人が出てくるSFなんかが流行っていて、へんてこりんな名前の怪獣に大笑いした記憶がある。その中に、もの凄く絵が上手い子供がいて、みんなは彼が漫画家になる と信じて疑わなかった。でもそんなことは簡単にかなうことではない。中学~高校生になると今度はギターが憧れとなった。ギターの上手い奴は人気者で、自作自演の 歌は彼がプロとしてデビューするだろうということを予感させたが、これも同じくかなうことではない。浦沢直樹氏は子供のころ、そんな子だったに違いない。そして今、現 代の日本を代表する漫画家の一人であることも誰も疑うことはない。もうひとつ、彼は中学~大学の間、もしかするとプロのミュージシャンになるということを予感させた 一人だったかもしれない。この作品『漫音(MANNON)』にはその名残りがある。漫画家が片手間にやる音楽の域を完全に超えているからだ。 上質なフォーク・ロック、ディランやニール・ヤングといった海外組から、日本のアンダーグラウンドなフォークまでを聴いてきた浦沢直樹氏ならではのサウンドと詩の世 界観は、そのまま彼の漫画の吹き出しの中に登場し、BGMとして聴こえてきそうな錯覚さえ覚える。彼は漫画を描いている時、同時に音楽も一緒に作っているのだろ う。Gペンの動きに合わせて、彼の頭の中ではメロディも流れ出しているはずだ。つまりこの作品は、彼が描きあげた音だけの漫画なのかもしれない。だとしたらもう聴く しかないだろう。浦沢直樹氏が描き上げた『漫音(MANNON)』は、『MONSTER』『20世紀少年』『PLUTO』『BILLY BAT』に次ぐ彼の最も新しい作品なのだから。
2015年11月吉日 岩本晃市郎(ストレンジ・デイズ)
■浦沢直樹(うらさわ なおき)
1960年、東京生まれ。1982年、小学館新人コミック大賞入選。1983年、デビュー。代表作は、「YAWARA!」、「Happy!」、「パイナップルARMY」(脚本・工藤 かずや)、「MASTERキートン」(脚本勝鹿北星、長崎尚志)、「MONSTER」「20世紀少年」」「PLUTO」(原作・手塚 治虫、監修・手塚 眞、プロデュース・長崎 尚志)など。数々の作品で漫画賞を受賞し、海外での評価も高い。現在、モーニング(講談社)で「BILLY BAT」(ストーリー共同制作・長崎尚志)を連載中。また、音楽の活動も活発で2008年にはアルバム「半世紀の男」を発表。ライブも頻繁に行っている。
メディア掲載レビューほか
浦沢直樹が描きあげた音だけの漫画、壮大な絵が広がる音楽! (C)RS