日本の吹奏楽界では佐渡=シエナの躍進が目覚ましいが、そんななか、「老舗」東京吹奏楽団が長年コンビを組んできた汐澤安彦(現・名誉指揮者)と『温故知新』と題したアルバムをリリースした。
曲目は以下の通り。
1.フローレンス行進曲(J.フチーク)
2.吹奏楽のための第一組曲(G.ホルスト)
3.ウェールズの歌(A.O.ディヴィス)
4.序曲「祝典」(F.エリクソン)
5.序曲「バラの謝肉祭」(J.オリヴァドゥティ)
6.バンドのための民話(J.A.コーディル)
7.アルメニアン・ダンス・パート'T(A.リード)
8.ショートカット・ホーム(D.ウィルソン)
9.百年祭(福島弘和)
10.ゲルダの鏡(樽屋雅徳)
11.陽はまた昇る(P.スパーク)
アルバムタイトル(『温故知新』)どおり、吹奏楽界の古典と称すべき作品が多く並んでいる。
いわゆる教育的作品が多いのも特徴である。
すれっからしの吹奏楽ファンの中にはこのラインナップを見て「何故今ごろになってこれを」とか「手垢にまみれた作品群」などと考えて敬遠する向きもあるかもしれない。
ところがこのCD、そうやって「聞かず嫌い」をするのがもったいないほどの出来なのだ。
特筆すべきはその演奏の質の高さで、汐澤氏らしく細部まで神経が行き届いており、どの曲のどの瞬間を切り取っても音楽的でない部分はないと断言できる。
聴き進むうちに、われわれは自分が知り尽くしていると思っていた作品に隠されていた真の美しさに気づかされることになるだろう。
クラシックと吹奏楽の双方に精通した名匠・汐澤による正統的な名盤の登場といってよい。
続編を期待したい。