アニメ版で知った作品であるが原作は未読だったので読んでみた。アニメ版は同じく京アニのけいおんと違ってブーム期に興味がわかずに結構あとになって観た。一言でいうと自分の趣味には余りあわず、不評を買った2期のエンドレスエイトがある意味で面白いなあ、くらいで、傑作と言われる”消失”の劇場アニメも何故これが傑作と言われるのかよくわからん…くらいの感想しか抱かなかったのであった。話題になった0話の演出も、ダンスも、パッケージ版では確認不能の時系列シャッフルも、特にどうとも思わず。自分の見る目が無いだけだとは承知の上で。
アニメがどんな感じだったかも余り覚えておらず、今更のように読んだ原作は新鮮な気分で読むことが出来た。みんな知ってるであろうストーリーにネタばれを避ける必要も無い気がするが、一応避けておこう。
物語の語り部であるキョンが、最近のラノベや漫画で飽きるほど観る、自分が大嫌いなヤレヤレ巻き込まれ系男子でテンプレだなあというか、恐らくは本作が後発作に多大なる影響を与えたのだろうが、テンプレのハシリというのは現在から見るとシリアス、コメディに関わらず、ギャグにしかみえないという問題がある。ヒッチコックの映画で、真相を知っている人物と話してる最中に急に相手がうっとなって倒れたら背中にナイフが刺さってた、みたいな演出で失笑する感じ。
そして物語に登場する女子陣は先達のテンプレの流用でハルヒはアスカ、長門は綾波、というエヴァまんまなキャラ付けで、「今の時代はやっぱ萌えよね!」という今では随分恥ずかしい台詞とともに、様々なコスプレを強いられ、お色気サービスてんこ盛りの萌えアニメのテンプレ的巨乳美少女・みくると、思慮深げなイケメンが追加され、変な部活を結成するという、世間による「オタクが好きなのってこんな感じなんでしょ?」という偏見を煮詰めたような舞台設定が整う。
…が、このテンプレを土台に本作はこの後、SFへと発展していく、というのは最早周知の事実なのだが、これをひとことで言ってしまうとセカイ系なのである。エヴァがヒットしたお陰で山のように溢れたジャンル。という訳で今読むとさほどの目新しさはないのだが、この物語の構造が非常に良く出来ているので、テンプレを煮詰めたような設定やキャラ達がきちんと意味を持ってくることで今読んでも、前述のようなギャグにしか見えない感というのが無いのが大したものである。非常にシナリオが良く練られている。
この小説でハルヒが抱えているのは学生のモラトリアム的苦悩であって、当時の世代的な認識を上手く取り入れられていると思うが、オッサンになると流石に共感は難しい。非日常なんて無いほうがいいとしか思えないし、特別な何者かになりたい、などという願望も全く湧かない。
世界という大きな問題と個人の苦悩をつなげるという題材は日本のエンタメでは手塚治虫が火の鳥で試み、エヴァというブームがあり、本作へとつながる…とかなり雑に説明してみたが、テレビの最終回でやった学園エヴァを参照にセカイ系の流れを引き継いだのが本作で、此処から大きな問題も個の苦悩も取っ払ったのがあずまんが大王から始まる日常もの、という雑な見立てを行ってみたが、前述のセカイ系作品の全てが収拾つかなくなり、後者には読者を投影する人物さえ存在しなくなってるのを踏まえると、真面目に考えようが逃避しようがどちらも大差ないなあという感じもする。
セカイ系に於ける苦悩はモラトリアムから卒業して完結するのだろうが、そこに世界規模のはなしをくっつけてでかい風呂敷を広げたところで実際に神様になっちゃうならメサイアコンプレックスを抱えた人の誇大妄想のようになり、パーソナルな恋愛に収束するというのもなんかしょうもなく、押井のビューティフル・ドリーマーも結局は夢オチで逃げたが、グルグル悩んだところで答えがないなら長年付き合うのも面倒で、ほのぼの日常楽しんでたほうが自分には有益なようにも思える。このシリーズも結局、未だに完結していないし、エヴァも同様である。手塚は亡くなったがあんだけ長年描き続けても終わらせられなかった、とも言える。
長門が何時に待つ、と言って数日間同じ時間に待っていたらしいという描写が後の”消失”の伏線になっていたり、ラノベのシリーズものとしてもよく出来ているなあ、とは思うが、終わりのみえない話に付き合うというのもなかなか難儀である。シリーズが完結したらそのときに続きを纏めて読んでみたい。
涼宮ハルヒの憂鬱 (角川スニーカー文庫) (日本語) 文庫 – 2003/6/7
谷川 流
(著)
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本の長さ328ページ
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言語日本語
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出版社KADOKAWA
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発売日2003/6/7
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ISBN-104044292019
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ISBN-13978-4044292010
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商品の説明
内容(「BOOK」データベースより)
「ただの人間には興味ありません。この中に宇宙人、未来人、超能力者がいたら、あたしのところに来なさい。以上」。入学早々、ぶっ飛んだ挨拶をかましてくれた涼宮ハルヒ。そんなSF小説じゃあるまいし…と誰でも思うよな。俺も思ったよ。だけどハルヒは心の底から真剣だったんだ。それに気づいたときには俺の日常は、もうすでに超常になっていた―。第8回スニーカー大賞大賞受賞作。
著者について
●谷川 流:第8回スニーカー大賞〈大賞〉受賞者
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
谷川/流
兵庫県在住。2003年、第8回スニーカー大賞大賞を『涼宮ハルヒの憂鬱』で受賞し、デビューを果たす(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
兵庫県在住。2003年、第8回スニーカー大賞大賞を『涼宮ハルヒの憂鬱』で受賞し、デビューを果たす(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
出版社より
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涼宮ハルヒの陰謀 (角川スニーカー文庫) | 涼宮ハルヒの憤慨 (角川スニーカー文庫) | 涼宮ハルヒの分裂 (角川スニーカー文庫) | 涼宮ハルヒの驚愕(前) (角川スニーカー文庫) | 涼宮ハルヒの驚愕(後) (角川スニーカー文庫) | 涼宮ハルヒの直観 (角川スニーカー文庫) | |
内容紹介 | 残り少ない高一生活をのんびりと過ごすはずだった俺の前に現れたのは、8日後の未来から来た朝比奈さん!? しかもこの時間へ行くように指示したのは俺だというのだ。8日後の俺よ、いったい何を企んでるんだ!? | 三学期も押し迫ったこの時期に、俺たちへ生徒会長からの呼び出しが。会長曰く、生徒会はSOS団の存在自体を認めない方針を決めたらしい。ちょっと待て。そんな挑発にハルヒが黙っている理由はありゃしないぞ――。 | 春の訪れと共にSOS団全員が無事進級できたことは、何事もありすぎた一年間を振り返ってみると感慨深いとしか言いようがないのだが、俺は思ってもみなかったよ。春休みの些細な出会いがあんな事件になろうとはね。 | 長門が寝込んでいるだと? 原因は宇宙人別バージョンの女らしいが、どうやらSOS団もどきのあの連中は俺に敵認定されたいらしい。やれやれ、勘違いされているようだが、俺もいい加減頭に来ているんだぜ? | ハルヒによるSOS団入団試験を突破する一年生がいたとは驚きだが、雑用係を押しつける相手ができたのは喜ばしいことこの上ないね。なのに、あの出会い以来、佐々木が現れないことが妙にひっかるのはなぜなんだ? | 不思議も異変もない日常を、ハルヒとSOS団の「直観」が読み解く!250ページを超える完全書き下ろし「鶴屋さんの挑戦」に、画集・雑誌に収録された2編の短編を加えた待望の「涼宮ハルヒ」シリーズ最新刊! |
登録情報
- 出版社 : KADOKAWA (2003/6/7)
- 発売日 : 2003/6/7
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 328ページ
- ISBN-10 : 4044292019
- ISBN-13 : 978-4044292010
- Amazon 売れ筋ランキング: - 67,248位本 (の売れ筋ランキングを見る本)
- カスタマーレビュー:
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カスタマーレビュー
5つ星のうち4.6
星5つ中の4.6
362 件のグローバル評価
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他の国からのトップレビュー

Liam Ó Súilleabháin
5つ星のうち5.0
Great delivery.
2015年2月13日にカナダでレビュー済みAmazonで購入
Lovely book. Arrived over a month before the expected delivery date, too!
Regarding the other review saying furigana only accompany some kanji, the only non-furigana'd one's I've found are 一、二、etc.
If you don't already know how to read those you will have a bad time trying to read a book anyway.
Perhaps the edition has been updated since the previous review.
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T. Nelson
5つ星のうち5.0
(The Melancholy of Haruhi Suzumiya JP)
2010年3月23日にアメリカ合衆国でレビュー済みAmazonで購入
Upon recieving the book, I immediately delved in and started reading. Reading was rather difficult due furigana accompanying only some of the kanji. Otherwise, it was easy to understand, jiving a minor grasp on the Japanese language. When in doubt, I would refer to an English copy of the book to determine a sentence. An excellent book, I would recommend this book only if you have at least an intermediate knowledge of Japanese.

Amazon Customer
5つ星のうち5.0
Five Stars
2017年9月22日にアメリカ合衆国でレビュー済みAmazonで購入
Great book in perfect condition!

Tyler Trolli
5つ星のうち5.0
Five Stars
2016年4月26日にアメリカ合衆国でレビュー済みAmazonで購入
Good book.