著者による満州からの引き上げ体験ということで、歴史的な視点で最初は読んでいた。女一人で乳飲み子を含む小さな子供3人を連れての避難であり、「壮絶」としか言いようがない。
なくなってはいけないと隠しておいたお金の場所を他の避難民は皆知っていたという驚愕の事実に背筋が寒くなったり、飢えのため乳の出の悪い著者に幼い長男が自分の食料を喜んで差し出すといった健気さに涙が出そうな場面もある。
その他の事実の詳細は著書を読んでもらいたいが、この著書の内容は一貫して著者の周囲半径30m位で起きた事件がつづられている。それだけにリアルであるが、ソ連軍兵士による避難民に対する虐殺・略奪行為や、日本人女性に対する強姦行為といった、満州からの引き上げならば周囲でなかったとは考えられない記述はない。
その点は不思議であったが、「あとがき」によれば、著者は引き上げ後に体調を損ない「死と隣り合わせ」のような日々があり、満州からの引き上げ体験は子供たちへの「遺書」(お前たちのお母さんは、そのような苦難の中を、歯をくいしばって生き抜いたのだということを教えてやりたかった)のつもりで祈るような気持ちで書かれたものだとわかり、合点がいった。
つまり、著書は一般的な戦争体験や事実を網羅的に把握するためのものではなく、母から子供たちへの「愛のメッセージ」だったのだ。
そして、この著書の感想を一言で言えば、「母は強し」である。
歴史を知るためというよりは(歴史的には、ソ連軍兵士の悪逆非道な行為についての記述は必須である)、道徳や情操教育の教材に使ってもらいたいような内容(親の乳幼児虐待のような痛ましい事件がなくなることを願う)だが、いずれにしろ多くの人に読んでもらいたい作品である。
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