助動詞に込められた英米人の「心」を理解できる素晴らしい本です。著者の英語に関する造詣の深さにリスペクトの念を抱きます。ではなぜ星5つでないかというと・・・理由は二つ。
この本はいわば、机の上に助動詞の例文を書いた付箋紙を何百枚と並べて、「この英文のwillは~の用法、その英文のmustは~の用法」と細かく分類してくれている本です。これだけでも、中学高校で習った英文法がいかに日本人に都合よくねじ曲げたものであったか、ということなどもよく分かります。例えば「mustは現在形しかないから、未来にはwill have toを使え」などとよくもまぁ教えてくれたもんだ、という気にさせてくれます。でも、この本はこの分類作業で終わってしまっているのがもどかしいと感じます。たくさんの例文の中の助動詞を分類して、風呂屋の下駄箱に整理したところで終わってしまっている。今の多くの日本人が真に欲しているのは、「英文法の知識はもうたくさん。それをどのように会話で使いこなすか!」だと思います。したがって、この本も「助動詞の分類」に関しては素晴らしいのですが、「では次に、これら微妙な助動詞のニュアンスを会話で使いこなすときのコツはこれこれこうです」と持っていって欲しかった。おそらく、それは魔法の力でも借りないとと無理なんでしょうけれど、それが書かれていたら、痒いところに手が届き、かきまくることができたと思う。
2点目の不満は、「will be going to do」についての解説が無いという点。この本では、willやwould、will be doing、will have doneなどについては充実した解説が書かれています。ですが、will be going to doが無い。未来を表す「will」と「be going to do」がダブルで使われている「will be going to do」という表現法について、以前調べたことがありましたが、英文法サイトなどには平然と「ダブルの未来だから間違い」と言い切っているサイトもあります。知り合いの日本人英会話講師に直接聞いても、「ダブルの未来表現なんて聞いたことない」との答えでした。しかし、ニュージーランドに住むネイティブに確認してみると、「毎日何十回も使ってるよ」と笑われました。「ハイスクールやカレッジでちゃんとした作文を書かされたことのあるネイティブは普通に使ってると思う」とのこと。しかしそこに込められた「ネイティブの心」までは把握できませんでした。そこで、この本も、どうせならここまでカバーしてくれてたら、どんなにかハッピーな気分になれただろうに、などと思わず仮定法を呟いています。
しかし、個人的にこれら2点に「贅沢な不満」を感じるものの、十分に素晴らしい内容です。
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