池波正太郎が好んだ料理を、池波正太郎がひいきにしていた料理人が作るという企画であるから、必ずしも筆者が食べて感想を述べなくともいいと思う。したがって、他人のふんどしで相撲を取っているという批判は当たらないのではないか。この本の中では、筆者が池波氏の未亡人を誘って食事をするという記述がある。双方に信頼関係がなければこのようなことはできないはずだから、人格攻撃のような批判は行き過ぎではないかと思う。良作とは言い難いが、平均的な出来だろう。ただ、各料理のレシピは必要だったかどうか。特に洋食篇で感じたことだが、デミグラスソースなど洋食店でなければちゃんとしたものを用意できない料理の場合、家庭での再現はほぼ不可能なのだからレシピを掲載する意味があったのか疑問に思った。
ということで酷評するような内容ではないと思うが、実を言うと私もこの筆者の文章をあまり好きになれない。この本はまだマシな方だと思うが、この筆者の文章には、一見卑下しているようで実際は相手を小馬鹿にしているような表現をしているものいくつもある。池波正太郎自身はこのあたりの表現には相当気を遣っていたと思う。例えば、気に入らない飲食店の場合は名を伏せているし、自分にとっては○○が最も好ましいとは書いても、○○は嫌いだと書いた文章は読んだ記憶がない。ところが、この本の筆者はこうした点について無頓着で、○○は嫌いだと平気で書く。嫌いなだけならまだいいが、嫌いなものをけなす、嫌いな理由について延々と言い訳をする。こういう文章を読まされる方にしてみれば、「嫌いだったら無理して書かなくてもいいよ」という気分になるのは無理からぬ事だろう。それに、こうした書き方は池波正太郎が最も嫌ったものではないかと想像する。本人には悪気はないのかもしれないが、読む人間の気持ちを逆なでする表現が多いのは確かだと思う。この本で言えばハンバーグのくだりなどがそうだ。
ということで星の数だが、内容そのものは平均点。文章についてはまだ嫌みは感じるものの、この筆者の本の中ではましな方に入ると思うので、色々考え合わせて星3つ。
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