『民族の創出』という書名に、初めドキッとした。「民族」という言葉には、その根底に西洋中心史観、優性思想等、排他的な要素があると感じてしまうからである。特に、かつてあった(?:今もあるかも・・・)「日本人単一民族論」には、非常に疑問を感じていた。
著者は、このご著書の中で、その「民族」という言葉の語源を詳細な資料から明確にしており、「日本人単一民族論」が戦後に拡がったとする。そして、“日本のマジョリティは何民族か?”と問われた時、明確に答えられないという現象があるという。確かに、私も答えられない。国家間では、「日本人」と答えざるを得ないと思うが、“自分が何民族か?”と問われた場合は、生まれ育った所の行政単位名、例えば「関東人」とか、「都道府県名人」と答えると思う。なかなか、「出雲民族」や「池間民族」のように、「〇〇民族」とまでは言い切れない。それは、どれだけ自分のアイデンティティーにつながるのかを問われていることになるのだと思う。「民族国家」という言葉もあるが、必ずしも民族=国家ではない。民族の多様性を認めることは、とりもなおさず、個々のアイデンティティーの確立につながるのではないか・・・。『国家の創出』に対抗するには『民族の創出』が必要であるということを改めて感じた次第である。
さらには、 日本列島の歴史において、出雲、エミシ、クマソと命名された人々は「まつろわぬ人々」とされ、律令国家の外に置かれていた。この「まつろわぬ人々」の歴史にも触れ、それが現代の「民族」意識とどのようにつながるか、各地を取材し浮き彫りにしている。
かなりの大著の故、じっくりかみしめながら何度も読み返したい本である。
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