頻出英文に良質な設問ということに尽きると思います。タイトルの通りですが、
各大学で繰り返し出題されている長文が30題収録されています。そのうえ、
各大学で問われた設問の中から、学習効果の高いものを編者が選んで設問が構
成されています。普通の長文問題集だと大学の過去問から良問を選んでそのま
ま掲載しますが、本書は設問まで精選されているというのが特長かと。
また、本文の解説が非常に詳しい。イメージとしては『ビジュアル英文解釈』
(駿台文庫)のような感じかな。ほとんどすべての英文に解説がついているよ
うな感じ。ここまで本文の解説が詳しい長文問題集は珍しい。1999年に編
まれたとは思えないですね。ベストセラーとなって生き残っているのも頷ける。
しかも価格は税抜き850円!!クソみたいな本を出している予備校講師及び
出版社は、この本を読んで少し反省したほうが良い。
ただ、説明の詳しさがミクロ的、一方向的である点はわかりづらく感じる読者
もいるのでしょう。6課のWay of Thinkingの第3パラグラフのつながりがわか
らないといったレビューがありますが、確かに、各パラグラフの構造などを明
らかにするマクロ的な説明は省かれています。現代文の力がないと本書を十分
に使いこなすことは難しいのかもしれない。また、他のレビュアーの方も書か
れていますが設問の説明があっさりです。まあ、読めていれば解けるんですが、
ここも納得できない読者がいるかもしれない。
良書でも使用する段階を間違えると悪書に見えてしまいます。本書のレベルは
明らかに私大、2次レベルで、この本の後には志望校の過去問しかありません。
志望校が超長文を出さない限り、本書を終えた段階で最難関を除いて、長文読
解に関しては合格圏内にいると考えてよい。書店で『やっておきたい英語長文
700』(河合出版)という本を立ち読みしたが、本書の方が内容の抽象度が
高く、設問の難度も高いと感じた。なので、長文学習初期段階の人や難関大学
の英語が難しい学部を受けない人には、オーバーワークとなるでしょう。個人
的には、マーチレベルは超えている問題集だと思ってます。
話が右往左往して申し訳ないが、使い方に関しては1周目で全てを理解しよう
としないこと。ペンキ塗りのように何周もしましょう。1周目は英文を読むだ
け、2周目は一応問題も解いて答え合わせ、わからない英文があったら解説を
読んで理解する。3周目は入試本番のつもりでしっかりと解答を作って解説も
しっかりと読む、その際に理解していた解説には〇を付け、知らなかった解説
には別の印を付ける。4周目以降は英文と注意点を中心にして読むなど、テン
ションに差をつけて短期間に回転させることで本の内容を吸収していきましょ
う。1周目に何でもかんでも理解して2周目、3周目というのは時間がかかる
し精神的に疲れるのでお勧めしません。軽~く繰り返す中で長文読解能力を高
めていくのが良いかと。
長くなりましたが、難関大学を受験する学生の過去問前の演習にお勧め。そこ
そこ出来る学生には得るものが多い問題集だと思う。『基礎英語長文問題精講』
(旺文社)の本文解説が多くなって、設問も精選された問題集だと思ってくだ
さい。文句は表紙がダサすぎるのとすぐに色焼けしてしまうことかな。装丁を
凝らせば絶対にもっと売れてるよねこれ。まあ、その分高くなるのは良くない
という、日栄社の誠実な判断なのでしょう。素晴らしいと思います。変えてほ
しいけど(笑)。
なお最後に6課のWay of Thinkingに関して。
この英文はアメリカ人とその他の人々との思考方法の違いを説明しているもの。
アメリカ人は小から大へ、対してその他の人々は大から小へ。
その例として挙げられてるのが、
Let us take as simple an example as the addressing of envelopes.
という英文が含まれるパラグラフ。
ここは、「封筒の宛名書きのような簡単な例を取り上げてみよう」ととるのが
自然でそのあとに封筒の宛名書きの説明が続く。海外通販をすればわかるが、
アメリカでは番地から書く(小から)のに対し、日本などは都道府県から書く
(大から)。パラグラフの構成や文章全体の流れがわかっていれば迷うことは
ないが、文脈を捉える力がないと確かに理解しづらいのかもしれない。そうい
う人は現代文から先に勉強した方が良い。国語力が英語を理解する土台になる
ので。
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