大量のハイ・ティーンの少年・少女を殺したシリアル・キラーで死刑が決まっている大和から「罪状の1つ(この被害者だけが20歳以上)は冤罪なので、それについて調査して欲しい」との一方的依頼を受けた主人公の孤独で失意の大学生の雅也の調査過程を描いた作品。尚、大和は雅也が幼い頃に通っていたパン屋の店主という設定で2人は顔見知り。また、雅也は中学生までは神童と呼ばれたが、高校入学以来ノイローゼをキッカケに不遇の環境に陥り、それで孤独で失意を感じ続けているという設定で、大和の苛酷過ぎる家庭環境と重畳させている感がある。また、この冤罪(?)が仮に晴れたとしても死刑である事に変わりはないので大和の底意は不明(大和は"正義"を口にするが信じ難い)。大和が雅也に何らかの陥穽を用意している、というのが最初の印象(ミステリ好きなので)。大和が雅也の実の父親という事を暴露して、雅也を苛むという可能性さえある。社会福祉制度の充実や不遇・逆境の人間に対する社会正義を訴えようとしている、あるいは、雅也の成長物語を描こうとしているのなら期待外れ。
本作にはもう1つの趣向があり、大和に教唆された人物が殺人を犯したらしい記述がプロローグを含めて何箇所かに挿入されるが、この人物の正体は読み進めれば自然と分かる。終盤、作者としては捻った積りだろうが、読者は元々、大和の"正義"など信用していないし、私の上述した予想が(作者が用意した真相とは若干異なるが)ほぼ当たっているので、予定調和という印象。
作者がシリアル・キラー(の心理・歴史的事例)や法制度について充分に事前取材した事は良く伝わって来たが、雅也が大和の荒唐無稽な依頼を承諾した事を筆頭に全体構成が作者のご都合主義の塊になっており(ラストは作者の都合でどうとでもなる)、後味の悪い凡作だと思った。
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死刑にいたる病 (ハヤカワ文庫JA) 文庫 – 2017/10/19
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鬱屈した日々を送る大学生、筧井雅也(かけいまさや)に届いた一通の手紙。それは稀代の連続殺人鬼・榛村大和(はいむらやまと)からのものだった。「罪は認めるが、最後の一件だけは冤罪だ。それを証明してくれないか?」地域で人気のあるパン屋の元店主にして、自分のよき理解者であった大和に頼まれ、事件の再調査を始めた雅也。その人生に潜む負の連鎖を知るうち、雅也はなぜか大和に魅せられていき……一つ一つの選択が明らかにしていく残酷な真実とは。
『チェインドッグ』を改題・文庫化。
解説:千街晶之
『チェインドッグ』を改題・文庫化。
解説:千街晶之
- 本の長さ363ページ
- 言語日本語
- 出版社早川書房
- 発売日2017/10/19
- 寸法10.6 x 1.6 x 15.7 cm
- ISBN-104150313008
- ISBN-13978-4150313005
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出版社より

商品の説明
内容(「BOOK」データベースより)
鬱屈した日々を送る大学生、筧井雅也に届いた一通の手紙。それは稀代の連続殺人鬼・榛村大和からのものだった。「罪は認めるが、最後の一件だけは冤罪だ。それを証明してくれないか?」パン屋の元店主にして自分のよき理解者だった大和に頼まれ、事件を再調査する雅也。その人生に潜む負の連鎖を知るうち、雅也はなぜか大和に魅せられていく。一つ一つの選択が明らかにする残酷な真実とは。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
櫛木/理宇
1972年新潟県生まれ。2012年『ホーンテッド・キャンパス』で第19回日本ホラー小説大賞・読者賞を受賞。同年、『赤と白』で第25回小説すばる新人賞を受賞する(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
1972年新潟県生まれ。2012年『ホーンテッド・キャンパス』で第19回日本ホラー小説大賞・読者賞を受賞。同年、『赤と白』で第25回小説すばる新人賞を受賞する(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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登録情報
- 出版社 : 早川書房 (2017/10/19)
- 発売日 : 2017/10/19
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 363ページ
- ISBN-10 : 4150313008
- ISBN-13 : 978-4150313005
- 寸法 : 10.6 x 1.6 x 15.7 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 228位本 (の売れ筋ランキングを見る本)
- - 1位ミステリー・サスペンス・ハードボイルド (本)
- - 3位ハヤカワ文庫 JA
- カスタマーレビュー:
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カスタマーレビュー
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届いたものを開封して、アレ?中古 買ったっけ?っと思いました。確認しましたが新品の購入をしています。っが、画像の通りです。傷が入った、とかではなく、中古としか思えませんでした。映画鑑賞の前にどうしても読みたくて注文したので、急ぐ今回、特に返品はしませんが、こういう事ってどうして起こるのか考えたけどわかりません。残念でした。
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ベスト500レビュアー
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54人のお客様がこれが役に立ったと考えています
役に立った
2022年3月21日に日本でレビュー済み
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映画化されるらしいけど
話の起伏がない平坦な小説という印象
何か特別、衝撃的なことがあるわけでもなくラストのオチにしてもとってつけたような印象
読者からすれば最初から榛村がサイコパスの異常者だと分かっているわけで
主人公の筧井が榛村のルーツを調べても異常者になる要因が次々と明かされるだけなので
真相を明かされたところで、あぁやっぱりとしかならない
24件の殺人容疑で逮捕された連続殺人鬼なんだからそりゃそうだと
内容自体、虐待、いじめ、性犯罪、嫁いびり等、暗くてドロドロとした話ばかり続くし
主人公にしても卑屈で劣等感の塊な性格が前面に出されていて読んでいて気持ちのいい小説ではない
話の起伏がない平坦な小説という印象
何か特別、衝撃的なことがあるわけでもなくラストのオチにしてもとってつけたような印象
読者からすれば最初から榛村がサイコパスの異常者だと分かっているわけで
主人公の筧井が榛村のルーツを調べても異常者になる要因が次々と明かされるだけなので
真相を明かされたところで、あぁやっぱりとしかならない
24件の殺人容疑で逮捕された連続殺人鬼なんだからそりゃそうだと
内容自体、虐待、いじめ、性犯罪、嫁いびり等、暗くてドロドロとした話ばかり続くし
主人公にしても卑屈で劣等感の塊な性格が前面に出されていて読んでいて気持ちのいい小説ではない
2022年4月20日に日本でレビュー済み
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映画の宣伝動画で興味が湧いたので買いました
なにより文章の読みやすさ。抜群です。
あとは二転三転する展開、緊張感、引き込まれる描写。色んな意味で魅力的なキャラクター。
ドキドキしながら読めました。とても満足してます。
タイトルで興味が湧いた方ならいわゆる「ハズレ」では無いと思いますよ。
しいて言えば黒歴史をお持ちだった方はちょっと恥ずかしい気持ちになるかもしれません(笑)
で、読み終わってみて死刑囚の大和役に阿部サダヲを抜擢したことに改めて驚いた。
伊勢谷友介や生田斗真ぐらいのイケメンを想像したけど、阿部サダヲはそれはそれで納得できる配役だと思う。
内容が羊たちの沈黙にドラマ要素を足して、多少のファンタジーを振りかけて仕上げた感じになってるので阿部サダヲが演じることで多少リアリティーが増すのだろうと思います。
なにより文章の読みやすさ。抜群です。
あとは二転三転する展開、緊張感、引き込まれる描写。色んな意味で魅力的なキャラクター。
ドキドキしながら読めました。とても満足してます。
タイトルで興味が湧いた方ならいわゆる「ハズレ」では無いと思いますよ。
しいて言えば黒歴史をお持ちだった方はちょっと恥ずかしい気持ちになるかもしれません(笑)
で、読み終わってみて死刑囚の大和役に阿部サダヲを抜擢したことに改めて驚いた。
伊勢谷友介や生田斗真ぐらいのイケメンを想像したけど、阿部サダヲはそれはそれで納得できる配役だと思う。
内容が羊たちの沈黙にドラマ要素を足して、多少のファンタジーを振りかけて仕上げた感じになってるので阿部サダヲが演じることで多少リアリティーが増すのだろうと思います。