「歴史の大局を見渡す」は、尊敬している投資家レイ・ダリオが推奨している。先ず「歴史の大局を見渡す」という邦題が素晴らしい。
歴史の大局について1冊の本にまとめるなんて、普通は考えないし、できるとも思えない。
しかし著者らはたった13の章で、それを行った。
最初は、読みながら随分と端折って記述しているなと思ったが、読み進むうちに、そうか、スピーチを聴いていると思えば良いのかと得心すると、スラスラと腑に落ちた。
現代は第1次世界大戦後以来約80年ぶりに資本労働分配率が歴史的に資本側に偏っている、格差が拡がっている時代だ。
特に先進国ではミドルクラスが減少して、上流と下流に分断が起きている。
その要因として、ある知者は「グローバル化」「リベラル化」「知識社会化」の3つを挙げている。
本書は、ピュリッツァー賞を受賞した歴史と哲学の思想家である著者らがその問いに答を出している。
鍵となるのは「生物学と歴史」である。
>生物学同様、歴史は基本的には適者が生き残る自然淘汰であり、善良だからといって有利に扱われるわけではなく、多数の不運に見舞われ、最後には生存能力が試される。
>国は私たちの性質をしっかり受け継ぎ、私たちがやるのとおなじ善行、悪行を大々的なスケールでやってみせる。私たちが物に執着し、強欲で、好戦的なのは、長い年月の間、人は生き残るために獲物を追い、戦い、殺さなければならなかったこと、今度はいつ食事にありつけるのか不安で、食べられるだけ食べておかなければならなかったことを私たちの血が記憶しているからである。
もうひとつの鍵は「経済学と歴史」である。
>経済力が平均以下の者だけが平等を求め、自分の優れた能力に気づいた者は自由を求める。
>富の集中はごく自然な避けようのないことで、暴力的、あるいは平和的再配分によってときどき緩和される。この視点からとらえると、経済史とは、富の集中と強制的再配分という収縮・弛緩を繰り返す社会的有機体のゆっくりとした心臓の鼓動であるといえよう。(ここでも生物学的考察がなされている)
再配分の内容については「社会主義と歴史」が答えている。
>重税は、上層階級にとって負担が大きいが、その税収を財源として、政府は人口の増加を自ら抑制している国民に対して、教育、医療、厚生面でかつてなかったようなサービスを提供することができる。(現代貨幣理論の由来にも通ずる)
しかし資産家も黙っている訳ではない。
>多数のローマ人が税から逃れるために国境を超えて異民族の中に紛れ込んだ。
もしも再分配がうまくいかなかった場合、その結果、何が予想されるかというと、「政治と歴史」「歴史と戦争」が暗示している。
>経済が生み出した富をうまく配分できなければ、言葉巧みに国民に安心を約束する人物に独裁への道が開かれるだろう。そして魅力的なスローガンを掲げた好戦的な政府が、民主的な世界を飲み込んでしまうのである。
>人の場合、誰かと争うときは自尊心が後押しをしてくれる。国の場合、外交や戦争の後押しをするのはナショナリズムである。
That's history!
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歴史の大局を見渡す ──人類の遺産の創造とその記録 Kindle版
ピューリッツァー賞受賞の思想家2人が贈る、
5000年の歴史をおさめた珠玉のエッセイ集
著者たちの名声を確固たるものにした超大作“The Story of Civilization”(文明の話)のあと、その既刊10巻のエッセンスを抽出して分析し、歴史から学べるレッスンという形でまとめたものが本書である。
結果として、文化や文明の発展、人間性の洞察、モラルと宗教、国家の行動、人類の進歩の方向性などを概説する書となった。彼らはライフワークを完成させるため、歴史についての思索を重ね、戦争や征服や創造を通して人類が歩んできた長い道のりの意味を探し求めた。
そして、読者にも自分たちの時代を理解することができるよう、壮大なテーマを与えてくれているのである。筆者たちの探求の旅の一端を本書で共有することは、大いに心おどる知的な冒険となるだろう。
13のエッセイを通して、人類の過去の体験を概観し、今を生きるヒントを得られる、秀逸な歴史書である。
未来は決して偶然起こるのではない。それは常につくられてきたのである。 By ウィル・デュラント
人間の性質、国家の行動について考えるうえで有用と思われる出来事や論評を13のエッセイにまとめた。
新事実を知るのではなく、人類の過去の体験を概観して欲しい。
5000年の歴史をおさめた珠玉のエッセイ集
著者たちの名声を確固たるものにした超大作“The Story of Civilization”(文明の話)のあと、その既刊10巻のエッセンスを抽出して分析し、歴史から学べるレッスンという形でまとめたものが本書である。
結果として、文化や文明の発展、人間性の洞察、モラルと宗教、国家の行動、人類の進歩の方向性などを概説する書となった。彼らはライフワークを完成させるため、歴史についての思索を重ね、戦争や征服や創造を通して人類が歩んできた長い道のりの意味を探し求めた。
そして、読者にも自分たちの時代を理解することができるよう、壮大なテーマを与えてくれているのである。筆者たちの探求の旅の一端を本書で共有することは、大いに心おどる知的な冒険となるだろう。
13のエッセイを通して、人類の過去の体験を概観し、今を生きるヒントを得られる、秀逸な歴史書である。
未来は決して偶然起こるのではない。それは常につくられてきたのである。 By ウィル・デュラント
人間の性質、国家の行動について考えるうえで有用と思われる出来事や論評を13のエッセイにまとめた。
新事実を知るのではなく、人類の過去の体験を概観して欲しい。
- 言語日本語
- 出版社パンローリング株式会社
- 発売日2017/1/21
- ファイルサイズ1928 KB
商品の説明
内容(「BOOK」データベースより)
人間の性質、国家の行動について考えるうえで有用と思われる出来事や論評を13のエッセイにまとめた。新事実を知るのではなく、人類の過去の体験を概観して欲しい。 --このテキストは、tankobon_softcover版に関連付けられています。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
デュラント,ウィル
ウィリアム・ジェームズ・デュラント(1885‐1981)。米国人歴史学者・哲学者。1935年から1975年にかけて刊行された11巻にわたる超大作“The Story of Civilization”(文明の物語)によって哲学・歴史の著述家として世界的な評価を得た。1968年、同シリーズの10巻がピューリッツァー賞の一般ノンフィクション部門を受賞。1977年には、米国政府から市民に与えられる最高の栄誉の1つ、大統領自由勲章をフォード大統領から贈られた
デュラント,アリエル
アリエル・デュラント(1898‐1981)。米国人歴史学者・哲学者。1935年から1975年にかけて刊行された11巻にわたる超大作“The Story of Civilization”(文明の物語)によって哲学・歴史の著述家として世界的な評価を得た。1968年、同シリーズの10巻がピューリッツァー賞の一般ノンフィクション部門を受賞。1977年には、米国政府から市民に与えられる最高の栄誉の1つ、大統領自由勲章をフォード大統領から贈られた
小巻/靖子
大阪外国語大学(現大阪大学外国語学部)英語科卒業。都市銀行調査部勤務。退職後、米国コネティカット州での生活を経て、翻訳の仕事に携わる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです) --このテキストは、tankobon_softcover版に関連付けられています。
ウィリアム・ジェームズ・デュラント(1885‐1981)。米国人歴史学者・哲学者。1935年から1975年にかけて刊行された11巻にわたる超大作“The Story of Civilization”(文明の物語)によって哲学・歴史の著述家として世界的な評価を得た。1968年、同シリーズの10巻がピューリッツァー賞の一般ノンフィクション部門を受賞。1977年には、米国政府から市民に与えられる最高の栄誉の1つ、大統領自由勲章をフォード大統領から贈られた
デュラント,アリエル
アリエル・デュラント(1898‐1981)。米国人歴史学者・哲学者。1935年から1975年にかけて刊行された11巻にわたる超大作“The Story of Civilization”(文明の物語)によって哲学・歴史の著述家として世界的な評価を得た。1968年、同シリーズの10巻がピューリッツァー賞の一般ノンフィクション部門を受賞。1977年には、米国政府から市民に与えられる最高の栄誉の1つ、大統領自由勲章をフォード大統領から贈られた
小巻/靖子
大阪外国語大学(現大阪大学外国語学部)英語科卒業。都市銀行調査部勤務。退職後、米国コネティカット州での生活を経て、翻訳の仕事に携わる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです) --このテキストは、tankobon_softcover版に関連付けられています。
著者について
ウィル・デュラント Will Durant
アリエル・デュラント Ariel Durant
ウィリアム・ジェームズ・デュラント(1885-1981)と、アリエル・デュラント(1898-1981)は米国人歴史学者・哲学者の夫妻。1935年から1975年にかけて刊行された11巻にわたる超大作 “The Story of Civilization"(文明の話)によって哲学・歴史の著述家として世界的な評価を得た。1968年、同シリーズの10巻がピューリッツァー賞の一般ノンフィクション部門を受賞。1977年には、米国政府から市民に与えられる最高の栄誉の1つ、大統領自由勲章をフォード大統領から贈られた。 --このテキストは、cd_rom版に関連付けられています。
アリエル・デュラント Ariel Durant
ウィリアム・ジェームズ・デュラント(1885-1981)と、アリエル・デュラント(1898-1981)は米国人歴史学者・哲学者の夫妻。1935年から1975年にかけて刊行された11巻にわたる超大作 “The Story of Civilization"(文明の話)によって哲学・歴史の著述家として世界的な評価を得た。1968年、同シリーズの10巻がピューリッツァー賞の一般ノンフィクション部門を受賞。1977年には、米国政府から市民に与えられる最高の栄誉の1つ、大統領自由勲章をフォード大統領から贈られた。 --このテキストは、cd_rom版に関連付けられています。
登録情報
- ASIN : B075JCTJ4X
- 出版社 : パンローリング株式会社 (2017/1/21)
- 発売日 : 2017/1/21
- 言語 : 日本語
- ファイルサイズ : 1928 KB
- Text-to-Speech(テキスト読み上げ機能) : 有効
- X-Ray : 有効にされていません
- Word Wise : 有効にされていません
- 本の長さ : 107ページ
- Amazon 売れ筋ランキング: - 45,586位Kindleストア (の売れ筋ランキングを見るKindleストア)
- - 2,510位投資・金融・会社経営 (Kindleストア)
- - 5,849位ビジネス・経済 (Kindleストア)
- カスタマーレビュー:
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カスタマーレビュー
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ベスト1000レビュアー
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29人のお客様がこれが役に立ったと考えています
役に立った
2019年7月17日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
ようやく読み終わったのでレビューします。
自然は、人間みたいに口がきけるわけじゃありません。また人間のような『意識』や『知性』が
…もしかしたらあるのかもしれませんが、いずれにしても今のところ人間の自然への認識の限界は
『原因』と『結果』…それも極めて壮大かつ複雑なものの積み重ねだけでして、まだまだ分かって
いないことの方が多い現状では、それに対する意味付けや解釈は、個々人の勝手な想像の域を出ません。
(だからこそ敬意を払い真摯に向き合う必要がある。これはエコロジストを否定するものではない)
人口が増えすぎて食糧不足になったとき、自然はそのバランスを回復するために三つの策を用意している。
それは、飢饉、疫病、戦争である。(本文より抜粋)
「バランス回復のために飢饉と疫病と戦争を用意した」なんてことを、自然が自分から口にして、
人間に伝えてきたわけじゃありません。事実としての『原因』があってそうしたことが起こるので
あって、正直、勝手な解釈でそんなこと言われてもなぁって感じです。
あと『自由』と『平等』の対立関係で話を進めるのは、やはり無理があると思います。
人は一人一人違うから平等ではない、なんて書かれてましたが、『同じではない』ということと、
『等(ひと)しくない』というのでは、意味合いが違うのではないでしょうか。
あと『自由』と『無法』は違うということも、よく言われてますね。
『自由だから不平等』だとか『平等だから不自由』なんて単純な話なら、誰も苦労はしません。
「一方が栄えると一方が滅びる」ということですが、平等を推し進めることで自由への抑圧が強まり、
それが却って自由への欲求を強め、やがて平等が滅ぼされる…というようなことは細かく書いてある割に、
その逆の現象についての言及はほぼゼロです。
それに「国政(政治中枢)参加への不自由によって利益に与れない不平等」といった、
『不自由』と『不平等』が同時に成立する可能性に全く触れられていないのも、納得出来かねます。
序盤を読んだ印象としては、弱肉強食なんかを自分に都合のいい解釈で何か言ってるヒーローものの
ヴィランみたいで、連中はブチのめされることが前提の演出だからいいんですが、学者先生の論評として
見た場合これはどうなんだろうなと思い、多少厳し目の判定になりました。
これら序盤に書かれていること以外は、概ね納得しています。
元々は全10巻の超大作で、そこから抜粋してまとめたもの、ということらしいですが、
もしかしたら元の方には、上記のような物足りなさを解消するようなことが、もしかしたら書かれて
いるのかもしれませんが、確証はありません。読者に思考を促すのが目的なら、これはこれで成功なんでしょう。
自然は、人間みたいに口がきけるわけじゃありません。また人間のような『意識』や『知性』が
…もしかしたらあるのかもしれませんが、いずれにしても今のところ人間の自然への認識の限界は
『原因』と『結果』…それも極めて壮大かつ複雑なものの積み重ねだけでして、まだまだ分かって
いないことの方が多い現状では、それに対する意味付けや解釈は、個々人の勝手な想像の域を出ません。
(だからこそ敬意を払い真摯に向き合う必要がある。これはエコロジストを否定するものではない)
人口が増えすぎて食糧不足になったとき、自然はそのバランスを回復するために三つの策を用意している。
それは、飢饉、疫病、戦争である。(本文より抜粋)
「バランス回復のために飢饉と疫病と戦争を用意した」なんてことを、自然が自分から口にして、
人間に伝えてきたわけじゃありません。事実としての『原因』があってそうしたことが起こるので
あって、正直、勝手な解釈でそんなこと言われてもなぁって感じです。
あと『自由』と『平等』の対立関係で話を進めるのは、やはり無理があると思います。
人は一人一人違うから平等ではない、なんて書かれてましたが、『同じではない』ということと、
『等(ひと)しくない』というのでは、意味合いが違うのではないでしょうか。
あと『自由』と『無法』は違うということも、よく言われてますね。
『自由だから不平等』だとか『平等だから不自由』なんて単純な話なら、誰も苦労はしません。
「一方が栄えると一方が滅びる」ということですが、平等を推し進めることで自由への抑圧が強まり、
それが却って自由への欲求を強め、やがて平等が滅ぼされる…というようなことは細かく書いてある割に、
その逆の現象についての言及はほぼゼロです。
それに「国政(政治中枢)参加への不自由によって利益に与れない不平等」といった、
『不自由』と『不平等』が同時に成立する可能性に全く触れられていないのも、納得出来かねます。
序盤を読んだ印象としては、弱肉強食なんかを自分に都合のいい解釈で何か言ってるヒーローものの
ヴィランみたいで、連中はブチのめされることが前提の演出だからいいんですが、学者先生の論評として
見た場合これはどうなんだろうなと思い、多少厳し目の判定になりました。
これら序盤に書かれていること以外は、概ね納得しています。
元々は全10巻の超大作で、そこから抜粋してまとめたもの、ということらしいですが、
もしかしたら元の方には、上記のような物足りなさを解消するようなことが、もしかしたら書かれて
いるのかもしれませんが、確証はありません。読者に思考を促すのが目的なら、これはこれで成功なんでしょう。
ベスト1000レビュアー
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著者は夫婦で歴史学者・哲学者ということで、10巻にもわたる歴史書を記し、ピュリッツァー賞も受賞しているとのこと。本書はその筆者の大部にわたる代表作のエッセンスを、13のエッセイにまとめた歴史読み物。
本書で書かれているのは、歴史は繰り返す(正確には、類似の原因により類似の事象が生起する)とか、貧富の差が対立を生むとか、国家は自由を制限するとか、まさに『歴史の大局』の話。ある意味で新奇性があるわけでもなく、言い古されてきた言明も多いと感じました。
ふと私はロシアを思いました。何故、ロシアはプーチンを祭りあげるのか。何故国民はプーチン体制に反抗することが出来ないのか。プーチンや権力者が旧共産圏の国々がいわゆる西側につくことで抱く恐怖とは何なのか。
同時に思うのは米国と太平洋戦争に突入した第二次世界大戦時の日本です。何故誰も開戦を止めようとしなかったのか。国の指導者たち・エリート層はその時何をしていたのか。本当に避けられない戦争であったのか。
そうした疑問への回答の一部は、第9章「社会主義と歴史」、第10章「政治と歴史」、第11章「戦争と歴史」に示されているように思います。
・・・
さて、本書の最後部では、「人類は発展しているのか」という疑問を筆者は投げかけています。21世紀になっても一国が他国を武力で侵略するような事が起こるのですから、否と答えたくなります。でも筆者は技術の進歩、病気の撲滅や公衆衛生の発達などを大いに評価しています。
それゆえに、筆者が仄めかしていると感じるのは、文明は進歩するも人類の本性はそのまま、という事です。そしてその本性により歴史は生々流転・類似の事象を繰り返すとでも言いたげです。
であれば歴史を学ぶということは一体何なのか。人類の本性故に繰り返される悲劇。それに絶望しないこと?悲劇に耐えつつ、人類の本性を上回る文明の発達を期待すること(AIの進歩などまさにこの筋書きでは!?)?
疑問は絶えませんが、歴史の素晴らしいことはこうして我々を一時でも自省的にしてくれることだと思います。『人のふり見て我がふり直せ』といいますが、歴史とはまさに自らの鏡であり、他人の愚行の中に自らを見出すことだと思います。
本書はそんな歴史の良さと、人類の変わらぬ本性を思い起こさせてくれる作品でした。
本書で書かれているのは、歴史は繰り返す(正確には、類似の原因により類似の事象が生起する)とか、貧富の差が対立を生むとか、国家は自由を制限するとか、まさに『歴史の大局』の話。ある意味で新奇性があるわけでもなく、言い古されてきた言明も多いと感じました。
ふと私はロシアを思いました。何故、ロシアはプーチンを祭りあげるのか。何故国民はプーチン体制に反抗することが出来ないのか。プーチンや権力者が旧共産圏の国々がいわゆる西側につくことで抱く恐怖とは何なのか。
同時に思うのは米国と太平洋戦争に突入した第二次世界大戦時の日本です。何故誰も開戦を止めようとしなかったのか。国の指導者たち・エリート層はその時何をしていたのか。本当に避けられない戦争であったのか。
そうした疑問への回答の一部は、第9章「社会主義と歴史」、第10章「政治と歴史」、第11章「戦争と歴史」に示されているように思います。
・・・
さて、本書の最後部では、「人類は発展しているのか」という疑問を筆者は投げかけています。21世紀になっても一国が他国を武力で侵略するような事が起こるのですから、否と答えたくなります。でも筆者は技術の進歩、病気の撲滅や公衆衛生の発達などを大いに評価しています。
それゆえに、筆者が仄めかしていると感じるのは、文明は進歩するも人類の本性はそのまま、という事です。そしてその本性により歴史は生々流転・類似の事象を繰り返すとでも言いたげです。
であれば歴史を学ぶということは一体何なのか。人類の本性故に繰り返される悲劇。それに絶望しないこと?悲劇に耐えつつ、人類の本性を上回る文明の発達を期待すること(AIの進歩などまさにこの筋書きでは!?)?
疑問は絶えませんが、歴史の素晴らしいことはこうして我々を一時でも自省的にしてくれることだと思います。『人のふり見て我がふり直せ』といいますが、歴史とはまさに自らの鏡であり、他人の愚行の中に自らを見出すことだと思います。
本書はそんな歴史の良さと、人類の変わらぬ本性を思い起こさせてくれる作品でした。
2021年1月26日に日本でレビュー済み
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よーするに
人は生まれも育ちも偶然に左右され、一人一人の能力差が生まれる
世の中は経済で動き、能力差により格差が広がる
人々の間に不平不満が募る
高等教育によって品位は保てるが、貧者愚者の方が多産だ
次第に数の力で圧倒し、上も下も皆が愚かになり争いが起こる
ひと騒動の後、公平な社会が築かれても時代が下るにつれて格差が広がりまた闘争
それの繰り返し
いかに科学が発展しても気休めにしかならず
むしろ被害が甚大になることも
「人はパンツをはいたサル」でしかない
著者は大衆を批判し、現代の文化を嫌い、古代や中世の文化を超えられたか?と問う
いわゆるエリート主義である
世界について悲観的ではあるが、昔よりはマシ、なぜなら過去の偉大な知識の蓄積があり、望めば誰でも学べるからだ
エッセイという事で面白くサクッと読めるが、同時にさほど学べることは無い
一読を勧められる内容ではあるが、二度三度も読まない本かな、と
人は生まれも育ちも偶然に左右され、一人一人の能力差が生まれる
世の中は経済で動き、能力差により格差が広がる
人々の間に不平不満が募る
高等教育によって品位は保てるが、貧者愚者の方が多産だ
次第に数の力で圧倒し、上も下も皆が愚かになり争いが起こる
ひと騒動の後、公平な社会が築かれても時代が下るにつれて格差が広がりまた闘争
それの繰り返し
いかに科学が発展しても気休めにしかならず
むしろ被害が甚大になることも
「人はパンツをはいたサル」でしかない
著者は大衆を批判し、現代の文化を嫌い、古代や中世の文化を超えられたか?と問う
いわゆるエリート主義である
世界について悲観的ではあるが、昔よりはマシ、なぜなら過去の偉大な知識の蓄積があり、望めば誰でも学べるからだ
エッセイという事で面白くサクッと読めるが、同時にさほど学べることは無い
一読を勧められる内容ではあるが、二度三度も読まない本かな、と
2020年12月5日に日本でレビュー済み
本書は13章からなるエッセイを通して、人類の過去の体験を概観し、今を生きるヒントを得ることが出来る歴史書とされています。
他のレビュワーさん同様、レイ・ダリオを通じて本書にたどり着きました。
何故、彼はこの本を中国共産党の大岐山に贈呈したのか?
『9章 社会主義と歴史』での社会主義と資本主義との角逐や、『10章 政治と歴史』における民主性と独裁制の相克についての記述が、二人の間に強い共感と共有をもたらせたのではないかと推察しました。
また、『人を管理できるものは物しか管理できない人を管理する。お金を管理できるひとはすべてを管理する。』という指摘は、歴史に名だたる銀行化のみならず、まさに、レイ・ダリオ自身のことも示しているように感じました。
最後の章で、歴史を概観し、果たして人間は進歩してきたのか?と自問する記述があります。
著者は「進歩とは、豊かな遺産を築いて、守り、伝え、使うこと」と定義。
その上で、「人をはぐくむ母であり、私たちの永遠の命である遺産」を歴史を通じて守り続けている限り、私たちは間違いなく進歩しているとの主張に大いに感銘を受けました。
読みやすい本ですが、本書に登場する国家、人々、芸術作品、出来事など、ひとつひとつを吟味することでより深く「遺産の創造とその記録たる歴史」の魅力に触れらえる名著です。
他のレビュワーさん同様、レイ・ダリオを通じて本書にたどり着きました。
何故、彼はこの本を中国共産党の大岐山に贈呈したのか?
『9章 社会主義と歴史』での社会主義と資本主義との角逐や、『10章 政治と歴史』における民主性と独裁制の相克についての記述が、二人の間に強い共感と共有をもたらせたのではないかと推察しました。
また、『人を管理できるものは物しか管理できない人を管理する。お金を管理できるひとはすべてを管理する。』という指摘は、歴史に名だたる銀行化のみならず、まさに、レイ・ダリオ自身のことも示しているように感じました。
最後の章で、歴史を概観し、果たして人間は進歩してきたのか?と自問する記述があります。
著者は「進歩とは、豊かな遺産を築いて、守り、伝え、使うこと」と定義。
その上で、「人をはぐくむ母であり、私たちの永遠の命である遺産」を歴史を通じて守り続けている限り、私たちは間違いなく進歩しているとの主張に大いに感銘を受けました。
読みやすい本ですが、本書に登場する国家、人々、芸術作品、出来事など、ひとつひとつを吟味することでより深く「遺産の創造とその記録たる歴史」の魅力に触れらえる名著です。