1979年、台北。西門町と台北駅の間、幹線道路にそって壁のように立ち並ぶ「中華商場」。物売りが立つ商場の歩道橋には、子供たちに不思議なマジックを披露する「魔術師」がいた――。現代台湾文学を牽引し、国外での評価も高まりつつある、今もっとも旬な若手による連作短篇集。
現在の「ぼく」「わたし」がふとしたきっかけで旧友と出会い、「中華商場」で育った幼年期を思い出し、語り合ううち、「魔術師」をめぐる記憶が次第に甦る。歩道橋で靴を売っていた少年、親と喧嘩して商場から3か月姿を消した少年、石獅子に呪われ、火事となった家で唯一生き残った少女と鍵屋の息子の初恋……。人生と現実のはざまで、商場の子供たちは逃げ場所やよりどころを魔術師に求める。彼はその謎めいた「魔術」で、子供たちに不思議な出来事を体験させることになる。
日本の読者には「昭和」を思い出させるような台湾らしい生活感と懐かしさが全篇に漂う。語り手の静かな回想が呼び込む、リアルな日常と地続きで起こる幻想的な出来事。精緻な描写力と構成によって、子供時代のささやかなエピソードがノスタルジックな寓話に変わる瞬間を描く、9つのストーリー。
幼年時代の懐かしい匂い、よみがえる魔法の時間。1980年代初頭、台北。物売りが立つ歩道橋には、子供たちに不思議なマジックを披露する「魔術師」がいた―。台湾で今もっとも旬な若手による、ノスタルジックな連作短篇集。
著者について
1971年、台湾・桃園生まれ。小説家、エッセイスト。国立東華大学中国文学部准教授。2003年、2007年、2011年、2012年に『中国時報』年間「十大好書」選出、2004年雑誌『文訊』新世紀セレクション選出、2007年香港『亜洲週刊』年間十大小説選出、2008年、2012年台北国際ブックフェア賞(小説部門)など、受賞多数。最新長編小説『複眼人』(2011年)は英語版が刊行され、高い評価を得た。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
呉/明益
1971年、台湾・台北生まれ。小説家、エッセイスト。国立東華大学中国文学部教授。輔仁大学マスメディア学部卒業、国立中央大学中国文学部で博士号取得。短篇集『本日公休』(1997年)でデビュー。2003年、2007年、2011年、2012年、2014年に『中国時報』「開巻十大好書」選出、2004年雑誌『文訊』新世紀セレクション選出、2007年香港『亜洲週刊』年間十大小説選出、2008年、2012年台北国際ブックフェア賞(小説部門)など受賞多数
天野/健太郎
1971年愛知県三河生まれ。京都府立大学文学部国中文専攻卒業。2000年より国立台湾師範大学国語中心、国立北京語言大学人文学院へ留学。帰国後は中国語翻訳、会議通訳者。聞文堂LCC代表、台湾書籍を日本語で紹介するサイト「もっと台湾」主宰、俳人(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)