1949年生まれ、武術稽古研究会・松セイ館を設立し、古伝の術理と技法を研究している著者が、1995年に著した座談的読み物の文庫化。昔の達人伝説を嘘だとは思えなかった著者は、昨今の「武道」や人間の体捌きに疑問を感じ、とりわけ武道が精神論化して建前と現実の乖離を生んでいることを批判し、身体の使い方について試行錯誤を繰り返す。その過程で身体を捻らない動きの重要性に気づいた著者は、古伝『願立剣術物語』との出会いを通じて、身体各部をより細かく割り、その細かく割った各部分を一斉に速やかに動かすという方法を考案する。不安定を使いこなすとか、武術の達人はオートとマニュアルをうまく切り替えられるようになった人だとか、人間はたいてい予想に基づいて行動しており、したがってその予想が外れた場合には脆いものだとかいう著者の発想も、それと関連している。読みやすく、その他にも興味深い視点が多々ある。
ところで、本書には「温故知新の身体論」という副題が付いているが、本書を読むかぎり、著者は古伝から手がかりを得つつも、基本的に自分の試行錯誤に基づき考えており、古伝の正確な読みかどうかは分らないと自分でも言っている。つまり、単なる復古主義でも伝統重視でもない。そのことは、地道という言葉で単なるマンネリを美化するな、という言葉にも表現されている。また伝統的な職人技の紹介も、「その道を極めた個人」への賛美である。私たちが本書から学ぶべきことは、そうした「革新」の側面でなければならないだろう。
Kindle 端末は必要ありません。無料 Kindle アプリのいずれかをダウンロードすると、スマートフォン、タブレットPCで Kindle 本をお読みいただけます。
無料アプリを入手するには、Eメールアドレスを入力してください。

Kindle化リクエスト
このタイトルのKindle化をご希望の場合、こちらをクリックしてください。
Kindle をお持ちでない場合、こちらから購入いただけます。 Kindle 無料アプリのダウンロードはこちら。
このタイトルのKindle化をご希望の場合、こちらをクリックしてください。
Kindle をお持ちでない場合、こちらから購入いただけます。 Kindle 無料アプリのダウンロードはこちら。