これは参った。ピーター・ゼルキンの実力を思い知らされた。
高橋アキの演奏でも,十分かと思っていたが、どうしてどうして。これは、本当に説得力が強く、全ての曲が本当に名曲として聴こえる。ピアノの音がギュッと詰まっていて、中味があり、空虚にピアノが鳴り響くことがない。ここが最大の違いだ。つまりは、精神的なもの(冷たさでなく暖かさ、そして音楽への愛・・)や、西欧音楽からの継続性の強さを感じさせるので、前衛的現代曲でありながら、もう以前から存在する曲のように響く。これだから、日本人ピアニストは・・・ということになりかねない。その意味では、今後、内田光子らの録音に期待したくなる。
もしあなたがクラシックファンで、武満のピアノ音楽を聴いてみようと思ったなら、突き放した冷徹さを微塵も感じさせないこの正統的アプローチの演奏が、何よりオススメだ。録音もよく、しかも8曲中4曲は武満自身の監修で録音されたというお墨付きの演奏だ。
徹さんは彼の音はすごく透明感がある,知的な演奏だって言ってましたね。
自分の曲にはピーターの音質が合うんだと言っていました。ー武満浅香ー
最も耳馴染み易い、武満の代表作”リタニ”(2つのレントの改訂版)の第二曲の遅いテンポは、まさに空前絶後。曲のイメージを変える演奏であり、これ以上遅い演奏が現れない限り、もう他の演奏は聴く気がしない程だ。これは,永遠に歴史に残る演奏であり、名曲として弾き続けられるであろう。