巻末の「解説」(芳賀 徹)から読みました。
「山川菊栄の『武家の女性』を読まずには、以後、幕末の水戸藩は語れぬかのように思われてくる」(197頁)
その通りだと思いました。
先に、山川菊栄の『覚書 幕末の水戸藩』(昭和49年)を読み、アマゾンのブックレビューで語ってしまった
我が身としては、恥ずかしながら、後付けで『武家の女性』を読みました。
山川菊栄おばあさんの語り口は優しく分かりやすく、昔ばなしを聞くような感じでした。
解説者は、
「菊栄が『武家の女性』の最後に次のように書いた、『平凡な家庭の女たち』の運命は、第二次大戦中にふたたび水戸のみならず日本中の女たちの運命となっていった」(200頁)と書いています。
女性を語る「運命」の舞台を第二次大戦中の日本全体にまでひろげています。
「夫や息子たちの流した血は、その母や妻たる人々自身の流した血も同様だったのです」(185頁)という、
本書の最後の言葉も解説者は引用しています。
読者も、一か所追加して引用してみたいです。
水戸藩の天狗党の家族の運命も、諸生党の家族の運命も
「どちらの場合も男は死に絶えて女系によって再興された家が多く、母親の人柄や能力が、この苦難の時代を乗り切る上にどれほど大きい力を持ったかはいうまでもありません」(178頁)
時代を乗り切る女系の力!
幕末という激動の時代を静かに、力強く生き通して今日の土台を作ってくれた先輩の女性たちへの敬意と感謝が、
この本のなかでの山川菊栄の語り口を、明るく、希望を持っていて、前向きで肯定的な響きにしているのでは。
そのように感じました。
この本の「結びの言葉」にも、感じるところがありました。
「そういう住みにくい世の中、激しい時代を静かに、力強く生き通して、はるかに明るく、生きよい時代の土台を作っていった私たちの前代または前々代の親愛なるおばあさんたちに、深い敬意と感謝を表しながらこの筆をおくことにします」(185頁)
《備考》
山川菊栄は、時代の幸福観をこんなふうに考えていたようです。
「一体にわれわれが考えるほど当時の女たちが不幸だったとはいえません」(145頁)
「その中に生れ、その中に死に、それ以外の状態を知らなかった人々にとっては、必ずしも不幸とは限らなかったのであります」(145頁)
柔軟にポジティブに考えることのできた女性だったんですね。山川菊栄おばあさんは。
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武家の女性 (岩波文庫 青 162-1) 文庫 – 1983/4/16
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幕末の下級武士の家に生れ育った母千世の昔話をもとに、武士の家庭と女性の日常の暮らしを女性の眼で生き生きと描き出した庶民生活史。動乱に明け暮れる水戸藩で女性たちがどのような躾を受けて暮していたのかが、巧みな筆致で描かれる。女性解放運動の優れた思想家であった著者による滋味溢れる生活史・民俗史。(解説=芳賀 徹)
- 本の長さ201ページ
- 言語日本語
- 出版社岩波書店
- 発売日1983/4/16
- ISBN-104003316215
- ISBN-13978-4003316214
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登録情報
- 出版社 : 岩波書店 (1983/4/16)
- 発売日 : 1983/4/16
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 201ページ
- ISBN-10 : 4003316215
- ISBN-13 : 978-4003316214
- Amazon 売れ筋ランキング: - 129,841位本 (の売れ筋ランキングを見る本)
- - 979位岩波文庫
- - 13,134位ノンフィクション (本)
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幕末の水戸藩における、主に女性たちの様子を書きとめたものです。
実際に幕末を生きた著者の母親や知り合いから聞いた話、資料から得た話をまとめているので、いわゆる「また聞き」のわけですが、そんなことを感じさせないほど生々しい。
実際の生活を、ありありと感じさせてくれます。
今なら、さしずめ、、ICレコーダーに古老の話を録音して、原稿を起こすところでしょうが、もちろん著者の時代には、そんなものはありません。
聞いた話をまとめ、理路整然と文章化している、その能力には、ふるえがきます。
へたな時代考証の教科書よりも、江戸時代の勉強になりました。
1文、引用しておきます。
>三界に家なしといわれた女にとって、着物だけが唯一の財産で、これには夫も自由に手がつけられなかったのも、本来は夫の金でなく、自分の働きで作り出したものだったからでしょう。(52ページ)
実際に幕末を生きた著者の母親や知り合いから聞いた話、資料から得た話をまとめているので、いわゆる「また聞き」のわけですが、そんなことを感じさせないほど生々しい。
実際の生活を、ありありと感じさせてくれます。
今なら、さしずめ、、ICレコーダーに古老の話を録音して、原稿を起こすところでしょうが、もちろん著者の時代には、そんなものはありません。
聞いた話をまとめ、理路整然と文章化している、その能力には、ふるえがきます。
へたな時代考証の教科書よりも、江戸時代の勉強になりました。
1文、引用しておきます。
>三界に家なしといわれた女にとって、着物だけが唯一の財産で、これには夫も自由に手がつけられなかったのも、本来は夫の金でなく、自分の働きで作り出したものだったからでしょう。(52ページ)
2017年11月21日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
”親愛なるおばあさん"が、かつて聞いた母の子供時代の話を、そのまま話し聞かせてくれるよう。
色々考えさせられることもあるけれど、むつかしい事はひとまず忘れ、心地良い昔語りの雰囲気に癒されよう(柳田国男の薦めで執筆された由)。
なにしろ幕末・維新期の水戸で武家に属した人のこと、「子年のお騒ぎ」など後半は癒されっぱなしとはゆかないが、子供時代の生活や身近な大人の思い出が中心で物珍しい。
下級武士の生活は想像以上に質素で素朴であり、書名から抱くイメージとのズレに戸惑うかもしれない。
なお、著者は女性社会主義者として有名らしいが、政治的な思想等とは無縁の内容なだけに特に意識する場面は全くなかった。
色々考えさせられることもあるけれど、むつかしい事はひとまず忘れ、心地良い昔語りの雰囲気に癒されよう(柳田国男の薦めで執筆された由)。
なにしろ幕末・維新期の水戸で武家に属した人のこと、「子年のお騒ぎ」など後半は癒されっぱなしとはゆかないが、子供時代の生活や身近な大人の思い出が中心で物珍しい。
下級武士の生活は想像以上に質素で素朴であり、書名から抱くイメージとのズレに戸惑うかもしれない。
なお、著者は女性社会主義者として有名らしいが、政治的な思想等とは無縁の内容なだけに特に意識する場面は全くなかった。
2011年2月13日に日本でレビュー済み
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幕末の水戸藩の下級武士で生まれ育った著者の母千世の、武士の女性としての生きざまを書き下した名著。
お塾の朝夕、お縫い子、身だしなみ、遊びごとなど本当に当時の日常生活を描いた非常に素朴な本ですが、当時の日本人の本当に勤勉でまじめだった姿が浮かび上がってきます。特に、当時は儒学の影響が強かったため、男性は論語を素読するなど手習いに相当力が入っていたようです。 また、女性は女性で、「家庭は教室でもあり、職場でもあり、保育所でもあり、養老院でもあり、いっさいを意味していた」という背景から女性の立ち位置と、家庭のごたごたを起こさない、家庭を収める女性の凛とした女性像が浮かび上がります。
男女の役割はそれぞれこうあるべきだということでは当然ないですし、むしろ時代は私たちに新しく変化することを求められていますが、「変わるものと変わらないもの」を見極め、それこそ江戸時代から、そして50年後、100年後も変わらない日本人の良さこそ、今最も見直すべきなのかも知れないとこの一冊を読んで感じました。
お塾の朝夕、お縫い子、身だしなみ、遊びごとなど本当に当時の日常生活を描いた非常に素朴な本ですが、当時の日本人の本当に勤勉でまじめだった姿が浮かび上がってきます。特に、当時は儒学の影響が強かったため、男性は論語を素読するなど手習いに相当力が入っていたようです。 また、女性は女性で、「家庭は教室でもあり、職場でもあり、保育所でもあり、養老院でもあり、いっさいを意味していた」という背景から女性の立ち位置と、家庭のごたごたを起こさない、家庭を収める女性の凛とした女性像が浮かび上がります。
男女の役割はそれぞれこうあるべきだということでは当然ないですし、むしろ時代は私たちに新しく変化することを求められていますが、「変わるものと変わらないもの」を見極め、それこそ江戸時代から、そして50年後、100年後も変わらない日本人の良さこそ、今最も見直すべきなのかも知れないとこの一冊を読んで感じました。