樽、樽、樽・・・です。
奇妙な樽の軌跡を追いかけていくバーンリー警部。
樽はドーヴァー海峡を行き来し、捜索はロンドンから
パリやブリュッセルの町まで繰り広げられます。
現場を徹底的に調べ、こつこつと聞き込みを重ね、
アリバイの裏を取り、報告、検討、推測、また確認の
捜査・・・。
ドラマティックな展開や、衝撃の結末というような
派手さはないものの、読み進めるうちに自分が
捜査メンバーの仲間になって、一緒に行動している
ような気分になります。
特に、パリの美しい街を歩いたり、蒸気船に乗っての
セーヌ川の船旅、そこからの美しい風景、読みながら
朝の澄んだ空気まで感じられるようです。
登場人物も、古き良き時代を窺わせます。
一般人の人々の警察官への敬意ある態度、また
捜査側の人たちの物言いも、丁寧で誠実です。
ややハラハラさせられるシーンはありますが、
全般にゆったりと、安心して読み進められます。
海道龍一朗氏のあとがきにもありましたが、
読み終えた時の充実感は、まさに甘美なる樽で
熟成された至高のシングルモルトを味わったようです。
ゆったりとした、大人の時間に味わいたい、
端正な作品です。
Kindle 端末は必要ありません。無料 Kindle アプリのいずれかをダウンロードすると、スマートフォン、タブレットPCで Kindle 本をお読みいただけます。
無料アプリを入手するには、Eメールアドレスを入力してください。
