意外に思われるかもしれないが、横溝正史没後『八つ墓村』を販売してきた出版社は角川のみ。
だがその独占状態にかこつけてテキストを改悪した状態のまま現行文庫に至っている。
それに危機感を抱いたからかどうかは判らないが、07年に出版芸術社が出したベスト・オブ・横溝ともいうべき
この『横溝正史自選集』は本来あるべき正しいテキスト校訂がなされている。
では角川版は何が改竄されているのか? ごく一部だが記そう。
最初期の黒背(緑304)あたりはまだマシなのだが、96年豊川悦司主演映画「八つ墓村」公開時に出た単行本からテキスト改悪が明白になる。例えば、
本書57頁上段4行目「どん百姓扱いに」(○) → 角川「馬鹿に」(×)
本書131頁下段21行目「醜い兎口」(○) → 角川「兎口」(×)
本書281頁下段1行目「犬殺し棒」(○) → 角川「棍棒」(×)
更に、正しい各章の見出しは本書のとおり「発端」「尋ね人」「無気味な警告」・・・と続いてゆくのだが、
角川は編集部が勝手に章立てを捏造し「発端」「第一章 尋ね人」・・・としてしまっている。
他にも細かい改竄はあるのだが長くなるのでこれだけにしておく。
言葉狩りもそうだが、章立てを改竄する理由が全くわからない。そしてこの状態のままの現行角川文庫版は解説さえもない。
明らかにケアレスミスではなく恣意的な改悪。角川文庫は全く信頼性のないテキストなのだ。
だから『八つ墓村』を、いや横溝正史を初めて読む方は角川文庫を買ってはいけない。欠陥商品なのだから。
愛蔵本である本書には正史のポートレート頁や解説、ご遺族(亮一・宜子・瑠美お三方)による語り下ろし座談、
『八つ墓村』について正史が語るエッセイが附録資料として掲載されている。
1951年の単行本化以来削除されてしまっていた箇所が初めて復元されたのも重要。
「危機を孕んで」〜「狐の穴にて」あたり(例えば本書251頁付近)を過去の本と比べてみるとよい。
映画・ドラマしか知らない方も是非本書を読んでほしい。
いつも映像では削除されてしまうが原作はヒロインの一人として里村典子が活躍し、
主人公・田治見辰弥と森美也子は鍾乳洞の中で乳繰りあったりなどしない。
上記のテキスト比較に関し、創元推理倶楽部秋田分科会及び掛谷治一郎氏の誠実な研究結果を参考にさせて頂いた。
深く御礼を申し上げたい。
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