本書の後半は、「これマンガか?」と思うほど文字が多くなるが、それだけ原価計算がややこしい(=計算量が多く、いろいろな計算法がある)ということだと思う。簿記学習を始め半年足らずで、なんとか2級に合格できたのは本書のおかげと感謝している。
日商簿記は過去に比べて難しくなっているようで、工業簿記を得点源にしておかないと、合格はおぼつかない(電卓検定のような問2ができる人なら余裕で合格でしょうけどね)。2級の工業簿記は、解法をパターン化して記憶すれば解けるとはいえ、特に独学の場合、本書で予習して、それぞれの計算法の意義を頭に入れておくと、テキスト学習を進める上での疲労感を大幅に軽減できると思う。なお。本書は、補助部門費の階梯式配賦法や正常仕損費処理の非度外視法、修正パーシャルプランなど日商1級レベルも含むので、初読で全てを理解しようとせず、全体像をつかむ位の気持ちでサラサラと目を通せばよい。
本書では、趣味でケーキを作っていたお猿さんが、ケーキ屋を開店して徐々に繁盛していくストーリーに沿って、「原価をできるだけ正確に知り経営に役立てる」ため、いろいろな原価計算法があることを、順々に勉強できる。
まず、原価計算の最初歩(原価は材料費だけではない)から始まって、原価の形態的分類、直接費・間接費、正確な原価を知ることが経営判断に役立つこと、そして「間接費の正確な配賦」が原価計算のキモであることなどを説明。次章から具体例により原価計算を行う。
続いて、初期段階では「注文生産」でケーキを作っていた(個別原価計算)。原価計算の基本になる部分なので、ページ数は本章が一番多い。材料価格でも予定価格を使うことができること、製造間接費の配賦には原則として予定配賦率を使うこと、また、製造間接費を正確に配賦するため、部門別計算、補助部門の考え方が説明される。
口コミで評判が上がるにつれて、店舗を構えて「見込生産」するようになり、一定期間でまとめて原価計算することにする(単純総合原価計算)。しかし、一定期間でまとめたぶん材料費の配賦が大雑把になるので、製造工程を2つに分けて(イチゴケーキの台をつくる→イチゴを飾る)、前工程の総合原価を次工程の投入とすることで正確性をアップする(工程別総合原価計算)。
ところで、チーズタルトとチョコレートタルトなど複数の商品を扱っている場合には、製品別に直接費・間接費を分け、間接費を機械作業時間などの配賦基準で配賦する(組別総合原価計算)。とはいえ、工程別かつ組別総合原価計算となるとかなり計算量が多くなるので、製品の差異がシュークリームの大小のように単純な違いの場合には、簡便法(等級別総合原価計算)があることも紹介される。
ここまでは、実際に消費した金額をもとに原価を計算していたが、経営者としては、原価の変動の原因が、原材料の価格変動のせいか、作業の能率や工場の操業度の変動のせいなのか分析できると経営に役立つ。そこで本章では、「あるべき原価」を決めることにより、それと現実との差異を分析することができる原価計算法が登場する(標準原価計算)。
本書の最後では、財務会計とは異なる世界、管理会計のさわりとして損益分岐点などの分析(CVP分析)が紹介される。利益計画を立てる、目標利益を達成するために必要な売上高を求めるため、変動製造原価のみで製品原価を計算するという方法がある(直接原価計算)。
一般のテキストでも、各原価計算法の意義は説明されてはいるが、本書のように、一貫したストーリーに沿って各種計算法を説明していくアイデアは素晴らしいと思った。
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