いわゆる学園カースト作品だが、その描き方が異様にシリアスで、単なる学園青春ドラマの範疇に納まっていない怪作だ。
安易な勧善懲悪ストーリーではなく、それぞれの生徒の立場や生き方を群像劇の如く捉えていて、さながら社会の縮図のようにシナリオが展開していくのだ。
運動部と文化部の対立と言ったベタな構図や自立心と依存心の葛藤、持つ者と持たざる者の隔たり、基本的人権に関わる本音と建前がリアルに繰り広げられるが、人の性分を上手く切り取っていて良い意味でオゾましい。
学校とは生徒にとっては逃れられない小世界であり、日本も会社も地域コミュニティも根は同じだろう。虐げられた人々の内面に溜まった怨念の深さに思い至らない社会は危険なマグマを抱えている。イデオロギーとして未だ日の浅い資本主義社会とは、資本を使う資産家には楽園で、資本に使われる労働者にとって蟻地獄なのだが、スポーツリーグの様な入れ替え戦のないカースト的な世界こそが怖い。
そんな言い知れぬ怖さを語る本作のテーマは、大人の鑑賞にも十分に耐えるものだ。しかも生徒を演じた役者達は今をときめく精鋭揃いなので見応えもある。
部活動予算の獲り合いは、まさに我が国における税金体系へのアンチテーゼであり、「若者こそ、本気でしっかり議論しようよ」と聴こえてくる様だ。
なかなかどうして硬派な社会派作品であり、学生から社会人になる若者世代にとっては、観る度に視点や感覚が異なる点が、本作が真に優れた作品の証明なのだろう。
責任ある大人としては、こういう映画を作れる世の中こそ守らねばならないと思える、現代の怪作のお手本だと思う。