物語の序盤、主人公の師匠となる久遠のスピーチには、心が動かされるものがあった。しかし、話が進むに連れ、だんだんとスピーチの内容も技巧が過ぎ、つまらなくなった。中盤に差し掛かる前の、友人の披露宴でした主人公の最初のスピーチに、心に響くものが全くなかったのは痛い。
中盤以降は唐突に選挙演説作りへと話が飛び、その後も強引にストーリーが展開される。選挙終盤の演説などは、子供を「犠牲」にして読者の涙を誘おうという、作者の意図があからさますぎて、あまりに御都合主義なストーリーに嫌気がさした。演説の内容も聴衆の心を打つようなものとはとても思えなかったし、後にその演説がYouTubeで大反響になって、伝説の演説と噂され…というくだりは、こちらが恥ずかしくなってくる。
久遠らによれば、主人公はスピーチライターの素質が非常にあるそうだが、結局どこにその素質が現れていたのか、全くわからない。性格も短絡的、一人で熱くなったり泣いたりしている面倒くさい女性だし、およそスピーチとか書けそうにないのだが、素質があるんだから問題ないということか。
あと、最後に主人公とライバルがくっつくという結末には本当に辟易。急に主人公がライバルに惚れてることに気がつくのだが、それまでに伏線らしきものはなし(主人公がガキみたいにライバルにいちいちムキになっていたが、あれが好意の裏返しということかしら)。ライバルも主人公のどこに惚れる要素があったのか、よくわからない。
総じてスピーチの内容はよくないし、登場人物もステレオタイプな人間ばかりで、セリフも上っ面なやり取りばかりで、深みがない。ストーリーも最後まで唐突で、序盤以外は特に読む価値はなし。
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