“本をつくる”というと、編集者が企画し、作家が原稿を書くといった作業を思い浮かべる人が多いのではないだろうか。編集経験者である私もそうである。しかし、本書は、谷川俊太郎氏の詩のために活字を作ることから企画がスタートし、さらに、その詩の印刷方法、紙の選択、製本方法など、本づくりとしてはあまり知られてない部分を辿り、最終的には詩集を作り上げている。
発端は「本づくり協会」の会報誌の2016年12月に行われた編集会議。会報誌は年に1回発行されていて、その企画として上がったのが「一篇の詩のために文字をつくる」こと。同会は2014年に、活版職人、製本職人、デザイナー、小規模出版社、本を愛する人たちが集まって、「本づくりの文化を継承すること」などを目的に立ち上げたとのこと。
書体設計士(簡単に書けば文字をデザインする人)の鳥海修氏、印刷を担当した嘉瑞工房の高岡昌生氏、製本工房の美篶堂、それぞれの仕事内容、仕事に対する姿勢や考え方・拘りなどが、インタビューを交えながら紹介されている。ただ、“拘り”といっても必ずしも頑なものばかりではない。例えば、今回だと鳥海氏は谷川氏に字体について3案示し、谷川氏の考えを尊重している。
書体設計に筆が使われていること、金属活字の活字母型をつくれる職人は日本にすでにいないことといった興味深い事実に触れるだけではなく、手製本を含む様々な工程が写真に収められているので分かりやすい。なお、今回の和文は、新たな金属活字が作れないので樹脂版を利用したとのこと。
それぞれの世界の奥深さが楽しい。
『私たちの文字』と名付けられたこの詩集は、2018年11月に見本が完成し、2019年2月の発売予定とのこと。
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