紙媒体でも電子媒体でも、ある1つのテーマについて執筆された「単行本」は、そのテーマに興味があるかないかで、「読みたい(買いたい)」か否かが決まるが、さまざまなテーマのコンテンツによって編まれた「雑誌」は、最低1つ、できれば2つ、「読みたい」と思う記事がないと、なかなか「買いたい」のスイッチが入らない。
いや、さまざまな無料の情報がネットに溢れる高度情報化社会では(理由はそれだけではないが)、どんなに読みたい記事があっても、「雑誌はすべて立ち読みで済ます」という人のほうが一般的なのかもしれない。情報をカネに変える、つまりコンテンツをマネタイズする方法は、一筋縄ではいかない。
さて、今回、月刊「群雛 (GunSu)」第4号=2014年05月号を、まずは「献本版」で拝読し、「もしかして献本版とオリジナル版は違うのかも?」と思い、そちらも購入(一緒でしたか?)。〈インディーズ作家を応援するマガジン〉というコンセプトで創刊された同誌のことは、ずっと気になっていたので、電子雑誌の「立ち読み」や「献本」は、非常にありがたいサービスだ。予想以上に面白かったし、それ以上に読者として〈応援〉したいという気持ちになり、創刊号も併せて購入してみた。
さて、第4号=2014年05月号でいちばん読みたいと思ったのは、まつもとあつしさんの「僕がセルフパブリッシングできてない理由」。というのも、電子書籍の最大のメリットは、メジャーであろうがマイナーであろうが、著者が簡単にパブリッシャー(出版者)になれる点だと思っていたからだ。特にメジャーな書き手の中には、通常の書籍は既存の出版社で、電子版はセルフパブリッシングで、という人が出てくるだろうと思っていた。
漫画家では、鈴木みそさん、うめさんなど、先駆的な取り組みをしている人が何人かいる。しかし、文筆家で電子版のセルフパブリッシングに熱心なのは、小説家の村上龍さんくらい。まつもとさんの記事の中でも触れられていた、著書「電子書籍の衝撃」でKDPを推奨していた佐々木俊尚さんでさえ、私の目からは、それほど積極的には見えない。
なぜ、まつもとさんをはじめ既存の文筆家は、自著を電子書籍でセルフパブリッシングすることに躊躇するのか?
まつもさんが「セルフパブリッシングできてない理由」は、結局のところ「カネにならないから」と要約してもいいだろう。まつもとさんは、もし自身が電子書籍のセルフパブリッシングをした場合の売上を、実売数750部×売価350円×印税70%=18万円と試算。たしかに、これでは出版社の力を借りて、普通に紙の本を出版したほうがカネになる。「セルフパブリッシングできてない理由」もよくわかる。
じゃあ「パブリッシングとは何か?」と今更ながら考えてみる。
いろいろな言い方ができると思うが、パブリッシング=「リスク」と「コスト」を背負うこと、と言い換えることもできるのではないか。通常の書籍の場合、読者から直接クレームを受けるのは著者ではなく出版社だ。編集・校正・デザインといった人件費、印刷製本費、用紙代、流通費、宣伝費、これらすべてのコストは出版社が負担する。そして「コスト」の「リスク」も負担する。
紙媒体であれ電子媒体であれ、セルフパブリッシングは通常の書店流通の紙媒体より、「リスク」と「コスト」もかからない。とはいえ、できるだけそれらの「リスク」と「コスト」を自分で背負う、つまり、優秀な編集者や校正者、デザイナーを雇い、時間とコストをかけて宣伝もすれば、「セルフパブリッシング」が「商業出版」になるのではないか……。ん? つまりは、それらを一手に引き受けマネタイズまで考えてくれる、優秀なエージェントを雇えばいいのではないか? 理想論かな? 絵空事かな?
同じことは、月刊「群雛 (GunSu)」にも言えるのではないかと思った。作家にコミットすることで作品のクオリティを高め、さらにマネタイズまでコーディネートするエージェントの役割も担った雑誌――。そうなれば、〈インディーズ作家を応援するマガジン〉から多くの才能が羽ばたいていくのではないかと思った。
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