私がこの本に出会ったのは、大学生の頃でした。
将来への漠然とした不安と、自分よりうまくいっているように見える周囲の友人への隠しきれないねたみ、そういう負の感情に、毎日なんとなく押しつぶされ、自己嫌悪に陥っていたように記憶しています。そんなとき、とある本屋さんに平積みされていたのがこのシリーズとの出会いでした。
平凡な女子高生である「陽子」は、ある日突然異世界に放り込まれ、それは過酷な逃走劇を強いられます。
なぜ自分がこんな場所に連れてこられたのか、なぜ命を狙われるのかも分からず、ただ生き延びるためだけの旅を続けていきます。
あらすじだけを見ると昨今流行の「なろう小説」系ですが、この十二国記の希有なところは、物語そのものの面白さ以上に、人がどうあるべきか、自分に誇れる自分とはなんなのか、そういったものを考えさせてくれる部分なのではないかと感じています。
主人公の陽子は、「ごく普通」の女子高生です。
それは、いい意味でも、わるい意味でも。
普通に善良で、普通に臆病で、普通に卑怯で、普通に弱い。
まるで、私(読者自身)のようだと思いました。
物語の主人公によくある強さとは無縁に見えます。
その陽子が、旅を通して自分自身について考え、成長していくさまは見事としか言いようがありません。
そして陽子とともに旅を続ける私(読者自身)もまた、彼女と同じように、自分らしさやどうすれば自分自身を好きでいられるか、ということを自然と考えるようになっていました。
生き方に迷うあの頃、この物語に出会えたことを感謝しています。
そして同じように、今、生き方に迷うたくさんの若い女性に読んで欲しいと思います。
ちなみに私が最初に買ったのはホワイトハート版でしたが、新刊が出たのを期に新潮文庫版も新たに揃えました。
ホワイトハート版と比較すると挿絵が違います。それから本文もところどころ表現を変えていますが、内容は変わりありません。全体的には新潮文庫版のほうが大人っぽい雰囲気になっています。
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