前作」最後の医者は桜を見上げて君を想う」で閑職に追いやられた福原と、実質病院を追い出された桐子。
この優秀な医者二人が、死に直面した患者にどう向き合うかというテーマをさらに深堀りしていく形で本作は
進む。そして、この作品の物語の中心は、桐子と福原の少年時代にある。特に福原の母と父の物語が巧みな
ストーリー展開で語られていく。第二章は福原の母の凄惨なまでの病魔と闘う姿が描かれ、第三章では、冷酷な
父の過去が語られるという構成にしている。それぞれが死と直面する人間の側面から、夫婦とは、親子とは
というテーマに踏み込んだ作品になっている。第一章のみが、エイズにかかった若い男性の話で、読後その章の
意味がやや薄れた印象が残るのが残念。いい作品だけに、この第一章を省き、桐子と福原の過去に特化
した作品にした方が良かったようには思う。いずれにせよ、この作品でこの桐子・福原シリーズがぐっと重みが
増したように思う。次回作が楽しみである。
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