本書は、傾いた家を持ち上げて直したり、別の場所に引っ張って移動させる「曳き家」と呼ばれる特殊な職人さんが書いた、曳き家業界の実態の話である。
高知から浦安へ引っ越してきた岡本氏が目にしたのは、補助金目当てに全国から集まってきた魑魅魍魎のにわか業者の群れ。ずさんな工事で家を痛め、表面だけキレイに仕上げて金を巻き上げる業者、ヨソより◯◯万安い、を謳い文句にした業者たちはなぜ安くできるのか?
ジャッキを大量に使い、丁寧に家を痛めないように揚げる筆者との違いはどこにあるのか。憤りを感じながらも岡本氏は自分の仕事を淡々とこなしてゆく。その浦安での2年間の奮闘の記録が第1章。
インターミッションとして沈下修正にはどのような工法があるのかの紹介がされる。こんなにも多くの工法があるのかと驚いた。
第2章では、東北被災地の現場、熊本地震での現場で筆者が体験した地震による家屋被害の実態と、傷んだ家にどう対応するのか、古民家のような古い家屋の修正はどうすればいいのか等を、筆者の実体験を踏まえて個別に説明してゆく。いかに不誠実、あるいは技術を持たない業者が多いのか、業界の内側からならではの率直な意見が並ぶ。
第3章では、沈下修正にはいくら掛かるのか、どうしてその金額が必要なのかを、具体例を挙げながら解説してゆく。家全体を直さずに床だけを水平に貼り直してこんなもんだとする業者、そしてそれの何がいけないのか(本書を確認ください)を丁寧に説明してゆく。この手の書籍で、きちんと金額が提示されるのは珍しいのでないだろうか。
また筆者は、良い業者、悪い業者の見分け方、見積もりを安く上げる方法(例えば傾いている家の集まった地域であれば団体で発注する、等)も隠すことなく書く。自分の仕事に自信がなければできないと思う。
最後に付録として、岡本氏を浦安市に招聘した前浦安市長との対談が収録されている。液状化した当時の生々しい話は記録資料としても貴重だと思う。
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