タイトルと紹介文に惹かれて手に取りました。
山を舞台とした小説の中では、おだやかな調子で書かれており、心地よく読めました。ただ一小説としてみると、表現や筋に稚拙な部分が散見されたので、星三つとしました。
山の小説は、過酷な状況の中で、人間とは、生きるとは、を反省するような、劇的なものが多く、その大袈裟なテーマや描写によく引いてしまう(もはや笑ってしまう)のですが、この本はそういう側面は少なく、間違いなく本格的な山の小説ですが、終始トーンが穏やかで、自然と読めました。こういう小説がどんどん増えるといいなと思います。
本格的な山の小説、というのも重要な要素で、日常的に登山を楽しむ人間が満足できるないようでないと、やはり物足りなかったと思います。その点も、本作では山小屋経営の日常の描写が細かく、リアルで楽しめました。
舞台が奥秩父というのも良かったです。
他方で、小説としては、表現がワンパターンなところがあったり、子供のセリフが下手な子役のようなぎこちなさがあったり、あるあるテーマのなぞり返しであったりと、いま一歩これだ!と光るものは感じられませんでした。
と、残念なところはあるものの、登場人物も(やや戯画化が過ぎるところもあるが)魅了的だし、気軽にすんなり読めるので、山小屋やテントの中で読むには悪くない作品だったと思います。
Kindle 端末は必要ありません。無料 Kindle アプリのいずれかをダウンロードすると、スマートフォン、タブレットPCで Kindle 本をお読みいただけます。
無料アプリを入手するには、Eメールアドレスを入力してください。
