1961年に雑誌「ミセス」が創刊された時、金井氏は中学生で、家では「暮しの手帳」は購読していたが、よその家に行くと「ミセス」のページをめくって、“料理の作り方の記事を読んだり、結婚生活という言葉の含意の意味しているものに気づいたり、カラーのモードのページのきれいな服のドレスや帽子や手袋やアクセサリーを眺め”ていたようだ。その頃に思いを馳せながら、あらためて「ミセス」のバックナンバーをめくる、というのがこの本で、レトロなグラビアページを眺め、読者も同じ感慨に耽る。まさに絵のある「噂の娘」。
“キャビア、アワビ、ロースト・ビーフ(と、ロースト・ターキー)といった物が並び、しつらえはクラシックな銀器とクリスタルのグラス類で「ミセス」的スノビズムが窺える”「円卓の晩餐」や「英国風食卓」といったグラビアは確かに子供の頃の憧れのページだったし、ビクトリア風ピンクッションのグラビアに添えられるエッセー(「小公女」のセーラに下働きのベッキーが“赤いフランネルに黒い頭のまち針で”ハッピー・バスデーと刺した手づくりのピンクッションをプレゼントするエピソードについて)にうっとりする。ジャージーのワンピースに手袋という「ジュニアそれいゆ」から抜け出て来たようなグラビアにも溜息が出るし、ミニスカートのグラビアには、今すぐにでも履いてみたいデザインのスカートが載っているけれど、ここには辛口の60年代ミニスカート論が展開されている。
ジャンパー姿で、スポーツ・カーに乗り、レイバンのサングラスにくわえ煙草、ドライビング・グローブを嵌めた三橋達也、ガウン風のワンピースを着て居間の窓辺の古風なソファーにすわる東山千栄子、買物カゴを提げて八百屋で林檎を選んでいる森茉莉……といったグラビアについてのエッセイは言うまでもなく金井節全開で何度でも読み返したくなる。
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