初心者には、いささか濃すぎる内容だと思いますが、
ある程度の経験がある方の知識欲を満たすには、おすすめです。
公演プログラムを採録した形式になっています。
その点がよくある雅楽解説本とは違う味わいがあります。
しかしながら、個々の曲の解説が気合十分に書かれており、
普通は初心者を含む雑多な観客向けにある程度簡略化したり
割り引いた内容になりそうなものですが、そこは国立劇場、
その辺りの愛想がさらさら感じられない点が清々しく、
結果といて、良質な雅楽資料になっています。
編者の木戸敏朗氏の話(武勇伝?)を、年配の演奏者から色々聞かされて
著書を一度読んでみたいと思っていたので購入してみましたが、
国立劇場でこんな刺激的な演目をやっていたのかという感慨と、
随所に単なる伝統保存に終わらせないぞという気概がにじんでいて、
読んでいて楽しい内容でした。
序章にあたる「編者のことば」の言葉の結びが、挑戦的で愉快です。
まだ、民間の団体も公演も少なかった時代背景もあるでしょうが。
「(抜粋)伝統芸能の保存は宮内庁が行っていて、年二回程度の公演では
保存に役立っているとはおこがましい話である。(中略)
ただひとつ言えることは雅楽という古典芸能が劇場という生臭い場に
登場したことによって、劇場というものの本質と、雅楽というものの本質と、
両方の本質が確認されたということである。」
寄稿者は、楽部の高名な方々が連なってて、読んでいるとその方々の話を
そばで聞いているような雰囲気になってきます。
先日亡くなられた芝祐靖氏の盤渉参軍の復曲の経緯なども、読んでいて引き込まれます。
本職の演奏家が、どう古譜を読み解いていったのかの考え方や過程・発見など。
同時に、編者のような方が当時の現役演奏家に与えた刺激の
雅楽の活性化への寄与は、大きかったのではという気になりました。
そういった外部の旗振りがなければ、雅楽はもっと標本のようなものに
なっていたリスクもあったのではと。今でもそれは有りますし。
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