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日本近代技術の形成: 〈伝統〉と〈近代〉のダイナミクス (朝日選書 809) 単行本 – 2006/11/1

4.2 5つ星のうち4.2 8個の評価

 日本はなぜ、アジアやラテンアメリカなど他の工業後進国と異なり、近代技術によって列強に対抗できたのか。19世紀半ば、鎖国下日本の在来の手工業、経済は、西欧工業経済にどのように絡まり、産業の近代を達成したのか。幕末の土壌にから育った製織・製鉄・造船の明治期主要工業技術の詳細な「物語」を追い、やがて対米戦争の突入で、その開発の成果が灰燼に帰すまで、地球史的な視点で「日本近代技術」像を描く。

登録情報

  • 出版社 ‏ : ‎ 朝日新聞出版 (2006/11/1)
  • 発売日 ‏ : ‎ 2006/11/1
  • 言語 ‏ : ‎ 日本語
  • 単行本 ‏ : ‎ 510ページ
  • ISBN-10 ‏ : ‎ 402259909X
  • ISBN-13 ‏ : ‎ 978-4022599094
  • カスタマーレビュー:
    4.2 5つ星のうち4.2 8個の評価

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中岡 哲郎
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カスタマーレビュー

星5つ中4.2つ
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上位レビュー、対象国: 日本

2020年3月25日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
別レビューのib_pataさんが触れる通り、本書のあとがきにある著者の鮮烈な体験が印象的です。
メキシコで学生に講義した著者は、薩英戦争における薩藩の英海軍旗艦への一撃をあくまで偶然の結果に過ぎず、大切なのは彼我の国力の違いを薩藩が認識した事なのだと説明しようとしましたが、メキシコの若者の反応は全く予想外でした。
『学生に異常な興奮が起こった。なぜ貴方は、薩摩が勝利したといわないのかという発言があり、全員を巻き込む討論になった。私は、薩摩はこの一撃によってかろうじて敗北を免れたのだ。大切なことはこの戦争をとおして、薩摩が敵の実力を認識したことなのだと応じたが学生たちは引かなかった。最後に「貴方は植民地化された国に住んだことがないから、この勝利の大切さがわからないのだ」という一撃を浴びた。』

奇しくも、この衝撃は私たち全ての日本人が刮目すべき歴史的パラドクスだと感じました。
我々日本では、なぜ明治の急激な近代化を成功したのか、という成功体験による甘言はありふれていますが、なぜ多くの哀しき発展途上国が辿った社会停滞を避けられたのか、は殆ど触れられて来なかったのです。

本書は、そんな「成功ありき」の史書で無い、生々しいほどリアルな明治人の苦闘とその果てに掴んだ実証的な成功を描いています。
安っぽいドラマのような維新・明治論でなく、我らの先人達の努力、冷徹な現実、幸運をも必要とした日本の成功、を描ききった素晴らしい良著です。
このような愛すべき一つ一つの史談を紡ぎ出してくれた著者には感謝の他ありません。
6人のお客様がこれが役に立ったと考えています
レポート
2016年5月30日に日本でレビュー済み
内容は非常によく、近代化へのプロセスが分かりやすく書かれています。最後の方の蛇足(第一次大戦後から終戦後)がなければ4つ星をつけていました。

そうはいっても内容は読むべきものです。一度手に取ってみては?
2007年1月31日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
 反射炉の建設などサムライ工業による尊皇攘夷を目指した薩摩藩が、生麦事件の賠償を求めるイギリス側と薩英戦争に突入した時、《戦闘開始後45分、油断したイギリス戦艦が桜島付近に錨をおろし砲撃を開始したとき、桜島からの薩摩藩の砲弾がイギリス旗艦ユーリアラス号に命中し、ジョスリング艦長ほか八名が戦死》するというくだりをメキシコで講義した時、聞いていた現地の大学院生から思いがけない反応があったそうです。《学生に異常な興奮が起こった。なぜ貴方は、薩摩が勝利したといわないのかという発言があり、全員を巻き込む討論になった。私は、薩摩はこの一撃によってかろうじて敗北を免れたのだ。大切なことはこの戦争をとおして、薩摩が敵の実力を認識したことなのだと応じたが学生たちは引かなかった。最後に「貴方は植民地化された国に住んだことがないから、この勝利の大切さがわからないのだ」という一撃を浴びた》《日本がこの時期に植民地化を免れたことの大切さを、彼らほどの切実な思いで受け止めてきたかという反省のきっかけとなった。その影響は本書にも示されてる》(pp.482-483)というんですね。

 ぼくも薩英戦争のこのエピソードは知っていましたが、スイカ売り決死隊と同じぐらいの重さでしか受けとめていませんでした。でも、確かにメキシコの大学院生が興奮したように、この一撃はイギリスに日本の植民地化をあきらめさせただけでなく、欧米に対抗するためには国民国家をつくり、挙国一致の体制をつくらなければならないと構想した薩摩藩と協力して幕府を倒し、新政府を打ち立てるパワーを持っていたかもしれません。そして、失敗の連続にもめげずに近代技術を取り込んでいく明治の日本人の熱さに感動しました。
28人のお客様がこれが役に立ったと考えています
レポート
2007年3月30日に日本でレビュー済み
 「なぜ日本は西洋との接触の結果,低開発国とはならずに工業国へと発展を遂げたか」.ナショナリステイックな気分を誘発しかねないこの設問に技術史の立場から冷静に解答を与えようとするのが本書です.

 第1に,従来封建的と低評価を与えられてきた在来産業がむしろ牽引役を果たしたことに原因が求められます.19C半ばの西洋技術は素材など川上産業において機械化するのに適しており,消費者に直接届く産品を作り出す川下産業においてはまだまだ在来産業に活躍の場が与えられていました.第4章では西陣等の綿織物産地において部分的に西洋技術を取り入れ,デザイン面で多様な需要に応じられるようになる様が描かれます.

 第2に在来産業と西洋技術の移植産業が相互補完的であったことが挙げられます.第5章では,活性化した在来産業の綿糸ニーズに応えるべく紡績工場が設けられ,その際歴史的偶然から短く太いアジア綿に対応できる機械技術が英で開発,日本に即導入されたことが細糸を使った欧米製品と棲み分け可能なニッチ市場創出に貢献したことが語られます.

 第3にアジアとの間でアジアの伝統という歴史的偶然が水平的・互恵的貿易ネットワーク創生に寄与したことが指摘されます. 中南米・アフリカのように宗主国との垂直型市場とは異なり,短く太いというアジア綿の伝統的特徴とそれに呼応した厚手の綿製品がインド綿→日本での製品化→中国等での消費という市場形成に寄与したのです.

 著者は在来産業の持つ市場ニーズへの敏感さと西洋技術の開発力に依存していた自らの体質を忘却,不遜に陥ってしまったことに戦前日本の工業技術没落の因を求めます.先進技術の国内移転に必死な当時の人々の息づかいや肉声が聞こえるような描写も楽しめ,何より経済成長に与える技術の影響を考える際には欠かせない一品です.
14人のお客様がこれが役に立ったと考えています
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