著者の本職は落語家であるが、むしろ映画評論家のほうが天職とはいえないだろうか。いいものはいい、悪いものは悪いと率直に評し、心にもないヨイショで製作者にごまを擦るような真似は一切しないからだ。しかも実際に観たうえで云っているのだから説得力がある。試しに本書で評価の高かった「毎日が夏休み」「カンゾー先生」を観てみると本当に面白かったし、逆に評価の低かった「ヒーローインタビュー」「東京日和」などは本当につまらなかった。ちなみに本文中で、地方競馬の能力試験競走に相当する制度を映画界にも導入するよう提案していたが、その審査には是非とも著者に立ち会ってもらいたいものだ。
そして全体的な傾向としては、評価の高い作品は1970年代以前のものが多く、評価の低い作品は平成以降(本書が執筆された時点まで)に集中していることがわかる。しかし、前者はほとんどが、ただ古いというだけで埋もれていきDVD化も見送られる(社長・駅前各シリーズのようなメジャーどころでさえ、DVDで甦ったのはごく最近のこと)のに対し、後者の多くは新しいというだけでDVDにもなり、広く紹介されているのはどういうことか。そのようにしてコンテンツの価値にかかわらず、その時々の流行だけで時代とともに娯楽を使い捨てていくために、現代日本の社会は母国の文化を粗末にしてしまうのだ。
それにしても、日本映画も本文にて扱われる91〜98年は、文字通り「冬の時代」に他ならなったことを、改めて痛感せざるを得ない。
Kindle 端末は必要ありません。無料 Kindle アプリのいずれかをダウンロードすると、スマートフォン、タブレットPCで Kindle 本をお読みいただけます。
無料アプリを入手するには、Eメールアドレスを入力してください。

Kindle化リクエスト
このタイトルのKindle化をご希望の場合、こちらをクリックしてください。
Kindle をお持ちでない場合、こちらから購入いただけます。 Kindle 無料アプリのダウンロードはこちら。
このタイトルのKindle化をご希望の場合、こちらをクリックしてください。
Kindle をお持ちでない場合、こちらから購入いただけます。 Kindle 無料アプリのダウンロードはこちら。